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2024/03/30(土) 15:32

長期優良、ZEHに★3つの「みどり」 住友不・長谷工の建て替え「多摩川」900戸

投稿者:  牧田司

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「シティテラス多摩川」

 住友不動産・長谷工コーポレーションが分譲中の建て替え「シティテラス多摩川」を見学した。全体で約49ha、賃貸・分譲合わせ約3,900戸の住宅団地「多摩川住宅」の再生を図るプロジェクトの先陣を切るもの。長期優良、ZEH、CASBEE、緑環境などで高い評価を受けているのが特徴で、同社が現在分譲している都内マンションの〝最安値〟の物件でもある。分譲は始まったばかりだが、まずまずのスタートを切った。

 物件は、京王線調布駅からバス13分、バス停から徒歩4~6分(小田急線狛江駅からバス9分、徒歩4~5分)、調布市染地三丁目の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約37,638㎡、12階建て10棟全900戸(非分譲住戸244戸含む)。専有面積は30.68~87.01㎡。先着順で販売中の住戸(17戸)の専有面積は55.57~82.62㎡、価格は4,200万円~7,200万円。坪単価は250万円。完成予定はⅠ工区:2024年12月上旬、Ⅱ工区:2025年10月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。

 主な基本性能・設備仕様は、長期優良住宅認定、ZEH-M Oriented認定、直床、リビング天井高2500ミリ(4階までは2550ミリ)、御影石キッチン天板、ミストサウナ、Low-Eガラス(廊下側)など。共用施設はオープンラウンジ、キッズルーム、ゲストルームなど。

 これまでの反響数は1,200~1,300件、モデルルーム来場者は約300件。1月から販売開始しており、これまで約100戸を成約。同社販売担当者は、調布、狛江駅からのバス便だが、住環境、居住環境がいいこと、リモートワークが定着し、都心へのアクセスもよいことからファミリー、プレファミリーのほか近隣の高齢者などからも幅広い支持を受けていると話した。坪単価は同社が現在分譲中の都内物件では〝最安値〟だという。

 「多摩川住宅」は、東京都調布市と狛江市にまたがる約48.9ha(調布市約32.9ha・狛江市約16.0ha)のエリアに、東京都住宅供給公社によって賃貸住宅(1,826戸)と分譲住宅(2,048戸)の3,878戸のほか商業施設、幼稚園、小・中学校などの生活利便施設が整備された1968年竣工の大規模住宅団地。当時、モデル団地として話題になった。

 建物の老朽化が進んだことから2007年に「多摩川住宅まちづくり協議会」が結成され、2017年、調布市・狛江市は地区の地区計画を決定。全体を生活拠点地区、住宅福祉複合地区、住宅再生地区(A地区・B地区)、住宅再生促進地区、住宅公益複合地区、公共公益地区に分け、12の地区計画が定められている。建て替えは「住宅再生地区」計画に沿って行われるもので、両社は事業協力者として2015年11月に選定された。

 隣接地の狛江市側では、積水ハウス、小田急不動産、長谷工コーポレーションの3社が参加組合員として事業参画している「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替事業」1,217戸(分譲戸数未定)が進行しており、2024年度内に着工される予定。このほか12ある計画のうち、調布市内に位置する約820戸の「イ」号棟、約1,400戸の東京都供給公社の賃貸住宅「ロ」・「ハ」号棟は現段階で具体的な建て替え案は決まっていない。

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多摩川住宅(建て替え工事前)

◇        ◆     ◇

 記者は、結婚したときに調布に住み、それ以降今日までずっと京王線沿線に住んでいる京王線ファンで、同社には貸し借りなど一銭もないが、取材をセットしてもらった女性広報担当者の名前を聞くと年甲斐もなく胸がキュンとなり、彼女が眉をしかめるような記事は書けない。マンション購入検討者の方は、このことを念頭に置いて、以下の記事は多少割り引いて読んでいただきたい。

 京王線沿線に住んで40年以上が経過する。見学すべき沿線のマンションはほとんど観ている。数にして数十物件をくだらない。従前の「多摩川住宅」も何度か訪れている。団地が完成してから56年。建物の老朽化、間取りの陳腐化は避けられないが、樹木は年を経るごとに成長し続けている。ケヤキを中心とする保存樹木は調布市、狛江市双方で数十本はあるはずだ。多摩川もすぐそばだ。緑環境・住環境は申し分ない。地区計画の目標でも「豊かに育った街路樹等を活かして,景観性及び機能性を備えた快適な歩行者空間ネットワークの形成を図る」と明記されている。

 この緑環境についてもう少し触れる。2005年(平成17年)10月、住宅用途の床面積が2,000㎡以上の建築物(分譲又は賃貸マンション)を対象とした東京都マンション環境性能評価制度がスタートした。「建物の断熱性」「設備の省エネ性」「再エネ設備・電気」「維持管理・劣化対策」「みどり」の5つの環境性能をそれぞれ★1~3個(満点は★15個)で広告に表示を義務付けているものだ。これまで認定を受けた分譲マンションは845件、このうち「みどり」で★3つを獲得しているものは186件だ。都内では年間1,000物件くらい供給されているはずで、認定を受けている物件比率は4.2%、「みどり」★3つの比率は0.9%だ。調布・狛江市内に限定すると、「みどり」★3つは8件しかなく、うち「多摩川」が7件を占めている。(認定物件は棟数でカウントされているので、物件比率にするともっと低くなる)

 ちなみに、先の5項目すべて★3つ(15点満点)のマンションは9物件しかない。そのうち一物件は同社が事業参画した「武蔵小山パルム駅前地区第一種市街地再開発事業」だ。

 同社を含めたマンションデベロッパーは、高さが日本一だとか規模が最大だとか駅距離が近いとかなどを最大の売りにして宣伝するが、この「みどり」の価値についてもしっかり伝えるべきだと思う。欧米では、街路樹などが果たしている役割・価値を金額に換算する樹木による生態系サービス評価ツール「i-Tree」が普及していると聞く。わが国も導入すべきだ。

 このように考えると、今回の物件の現段階での坪単価250万円は妥当どころか割安感がある。ディスポーザーは付いておらず食洗機はオプション、浴室タオル掛けは1か所などにはやや驚いたが、このレベルが当たり前になりつつあるということだ。このところ供給が目立つ東武野田線(東武アーバンパークライン)でも駅に近い物件の坪単価は250万円になっている(同社の女性広報担当はこの東武野田線を知らなかった)。バス利用を含めて新宿まで30分圏内の「調布」と、都心まで1時間はかかる野田線がどうして等価なのか。

 積水ハウスなどがいつ分譲するか分からないが、記者は坪300万円超もありうるとみている。10月に完成販売される小田急不動産の調布駅近マンションは坪450万円くらいになるのではないか。「多摩川」は半値に近い。多摩川住宅はバス便だが、通勤時は1時間に7~8本運行されている。渋滞も少ないはずだ。

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建築現場

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爛漫の春 咲き乱れるハナニラ

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「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替事業」(これから解体工事が始まる)

◇        ◆     ◇

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記者の昼食(隠れているのは2個入りカツサンド)

 現地取材を終えたのが午後3時過ぎ。何か食べようと思ったが、飲食店はなし。マンションの建築現場に近い「CO-OP」では店内で買ったものを食べられると聞いたので利用した。酒もたばこも不可だったので、スタッフの了解を得てノンアルコールの白ワインを水代わりに飲んだ。

 すると、別の女性スタッフから声をかけられた。「お客さん、上の者に確認しましたら、嗜好品(酒肴品と聞こえたが)のノンアルコールも酒扱いでして…もう飲まれているので今回は結構ですが、お子さんもいますし…次回以降はよろしくお願いします」と言われた。つまり、ノンアルコールはダメだと。

 スーパーで食事をしたのは初めてだった。ノンアルコールも酒扱いとはこれまた初めて。嗜好品の定義はよく分からないが、品名を確認した。「21%ぶどう果汁入り飲料」とあった。隣の小さい子どもとお母さんらしき女性が飲んでいたジュースと変わらないのではないか。子どもに見せたくないのは、雑草を紙コップに活け、ビニールに包まれたトマトを食べる風変わりな枯れ木のような小生を指すのか。

 トマトが好きなので、調布市産のトマトも買って食べた。アメーラほどではないが、美味しかった。

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