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2023/11/26(日) 22:19

寡占か群雄割拠か 分譲戸建て市場 大和ハウス 7,000戸体制へ拡大の波紋

投稿者:  牧田司

 どこに割って入るのか分からないのだが、大和ハウス工業取締役常務執行役員住宅事業本部長・永瀬俊哉氏は先日、2027年度までに木造を中心に分譲戸建て事業を7,000戸に拡大するとぶち上げた。市場規模を約14万戸とするとその5%だ。成長産業ならいざ知らず、加速度的に進む人口減少、爆発的に増える空き家などの社会的背景を考えると至難の業で、しかも、この業界は〝建売御三家〟が市場の4割近くを占めているが、見方によっては大手中小が入り乱れ、群雄割拠の市場と見えなくもない。同社が投じた一石は大きな波紋を巻き起こす可能性がある。同業他社は戦々恐々なのか、あるいは高みの見物を決め込むのか興味津々。分譲戸建て市場を概観した。

 まずは、コロナ禍の〝追い風〟が止み、アゲインストに変わっても2022年3月期は41,534戸を計上したガリバー企業の飯田グループホールディングス。先に発表した2024年3月期第二四半期決算によると、販売棟数は18,700戸(同3.3%減)、1棟単価は3,017万円(同1.1%増)だ(参考までに紹介すると、積水ハウスの2022年12月期の分譲住宅の建物のみの1棟単価は3,247万円、坪92.6万円)だ。

 同社は1棟単価の土地原価・建物原価・粗利益の構成比をグラフで公表しており、そのグラブ幅から推測して土地原価は約50%の1,509万円、建物原価は約36%の1,086万円、残りの14%が粗利益だ。また、敷地面積は平均100㎡、建物面積は平均95㎡くらいのはずで、建物原価は約38万円だ。

 この建物原価38万円はどのような意味を持つか。2023年4月の住宅着工統計によると、木造分譲住宅の着工戸数は11,877戸(前年同月比4.5%減)で、1坪当たり工事予定額は52.8万円(前年同月比ゼロ)だ。

 飯田グループの建物は全国平均より14.8万円/坪も安い。しかも、同社発表の全国市場占有率27.5%からすると、同社を除いた坪単価は58.1万円となる。つまり坪単価にして20万円、1棟につき約585万円も安い。同社の最大の強みだ。

 なぜそこまで安くできるか。地域業者との連携によって用地取得費を抑え、徹底したシステマティックな商品企画にあるはずだ。外構・植栽コストを極端に抑えているのが特徴だ。(それをよしとする消費者がいるということ)

 飯田グループの凄いのは、そこまで原価を抑えながら、かつ2025年の「ZEH水準比率100%」(飯田グループホールディングスTCFDレポート2023)を実現する目途を付けたことだ。同社は今後、この「ZEH水準100%」を最大の〝売り〟にして攻勢をかけるはずだ。

 記者は専門的なことはよく分からないので深入りしないが、極論すれば、建物面積を小さくし、出隅・入隅をなくし、窓面も少なくした総2階の経済設計の戸建てが究極の「ZEH水準100%」ということだ。

 飯田グループには戸数こそ圧倒的な差を付けられている業界第2位のオープンハウスグループはどうか。2023年9月期決算は売上高11,484億円(前期比120.6%)、営業利益1,423億円(同119.2%)、純利益920億円(同118.2%)と、中期経営計画で掲げていた「行こうぜ1兆!2023」を大幅に上回って達成した。昨年11月には三栄建築設計を完全子会社化し、今期も大幅増収を見込む。

 戸建事業については、売上高5,903億円(同114.3%)、営業利益631億円(同100.3%)、営業利益率10.7%(同1.5ポイント減)と厳しい市場環境を反映したが、建売住宅の販売棟数はオープンハウス・ディベロップメントが4,929棟(1棟単価:4,320万円)、ホーク・ワンが2,403棟(同:4,710万円)で、合計7,332棟を計上した。

 飯田グループより単価はかなり高いが、これは全国展開している飯田グループに対して、同社は地価水準の高い首都圏、名古屋圏、関西圏、福岡県に事業エリアを絞り込んでいる結果だ。建物原価は飯田とそれほど変わらないはずだ。

 〝建売御三家〟のもう一社のケイアイスター不動産はどうか。2024年3月期第二四半期決算は、売上高1, 254億円(前年同期比21.3%増)、営業利益464億円(同55.2%減)と大幅増収、大幅減収となった。減収要因は市場変化、競争激化による在庫整理によるものだ。

 分譲住宅事業の売上高1,214億円(同22.9%増)を販売棟数3,410棟(同18.9%増)で割った1棟単価は3,562万円。飯田グループより約500万円高く、オープンハウスより約800万円低いが、これは事業エリアの違いを反映したものだ。創業の地である埼玉県の着工戸数に占める割合は8.0%だが、隣接の群馬、栃木、茨城は10%を超え、九州の福岡、佐賀、熊本も10%を超えている。M&Aにより営業拠点を増やし、地域有力工務店とパートナー契約を結んでいるのが続伸の要因だ。パートナー企業は4,952事業者に上っている。

 この先の展開で注視したいのは、同社をここまで成長させた最大の功労者である、ポラス出身の取締役常務執行役員・瀧口裕一氏が2023年9月30日付で退任したことだ。その影響はあるのかないのか。

 このほか、分譲戸建ての計上戸数を公表しているところはポラスグループ2,792戸、積水化学工業(セキスイハイム)3,150戸、積水ハウス2,219戸、大和ハウス工業1,571戸、タマホーム1,247戸、フジ住宅623戸、三井不動産420戸、住友林業380戸、野村不動産353戸、アグレ都市デザイン319戸、ナイス246戸(注文含む)などのほか、数値は公表していないがパナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームなどを傘下に持つプライム ライフ テクノロジーズ、一条工務店、各電鉄(系)会社、兼六ホーム、細田工務店、新昭和、創建…など年間数百戸の規模でコンスタントに販売している会社はたくさんあるはずだ。

 考えてみれば、数百社あったマンションデベロッパーはリーマン・ショック後には数十社に激減した。一方で、建売住宅事業者のデータはないが、総務省のデータなどから類推すると数十社どころか百単位ではないか。大和ハウスが底引き網漁で捕捉するのは可能のようにも思えてくる。

住宅性能評価の分譲戸建てシェア74% 飯田GHは「ZEH化50%」に舵切り(2023/8/28)

ポラスグループ2023年3月期決算 増収減益/営業力の低下=取材力の退行を考える(2023/7/3)
 

 

 

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