ポラスグループは6月30日、2023年3月期の決算を発表。売上高310,322百万円(前期比10.8%増)、営業利益31,345百万円(同4.8%減)、経常利益31,984百万円(同4.3%減)、純利益8,357百万円(同2.8%減)の増収減益となった。売上高は7期連続過去最高を更新した。主力の中央住宅の売上高は95,521百万円(同0.5%増)、営業利益は9,170百万円(同9.2%減)、ポラテックの売上高は116,447百万円(同15.6%増)、営業利益は6,567百万円(同22.9%減)。
セグメント別では、戸建分譲住宅の売上戸数は過去2番目の2,792戸(同0.7%増)となったほか、分譲マンションは362戸(同27.6%減)、注文住宅は685戸(同7.5%増)、プレカット事業の外販売上棟数39,096棟となり過去最高を更新。不動産売買仲介事業の売上高3,517百万円(同5.0%増)、リフォーム事業の売上高10,502百万円(同12.0%増)、賃貸事業の手数料収入453百万円(同7.3%増)とも過去最高を更新した。
2024年3月期決算は売上高310,000百万円(前期比0.1%減)、経常利益27,000百万円(同15.6%減)、純利益7,000百万円(同16.2%減)を見込む。売上棟・戸数は戸建て分譲住宅が3,430戸(同22.9%増)、マンションが410戸(同13.3%増)、注文住宅が824戸(同20.3%増)、賃貸・集合住宅が179戸(同58.4%増)、合計戸数4,843戸(同225.%増)の計画。
決算発表会でグループ代表取締役・中内晃次郎氏は「先が読めない時代が続くが、エリア価値の向上を目指し、お客さまから満足していただける地域に根差した魅力的な街づくりと安全・安心・環境に配慮した暮らし方の提案を行っていく」と述べた。
また、中央住宅代表取締役社長・品川典久氏は「好調だったコロナ禍の市場から一変しており、営業力も低下している。今期の目標数字は楽ではないが達成する」と語った。
今後の市場について問われた中内代表は「これまでの好不調の波からすると、今回は2年半の好調の波があった。向こう1年くらいは不調の波が来るのではないか」と語り、品川社長は「インフレが進んでいるが、所得は伸びていない。粗利を下げて対応しているのが現状だ。見通しは何とも言えない」と話した。
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上場企業の2023年3月期決算からして、前述のような業績になるのはある程度予測していた。戸建て分譲市場は活況を呈した1~2年前と様変わりしており、完全に勢いは止まった。注文住宅も着工減が続いており、もっと落ち込むかと予想していた。同社は健闘しているのではないか。不動産売買仲介、リフォーム、賃貸事業が伸びているのは市場の反映か。
品川社長が語った「営業力の低下」について考えた。中内代表は「当社社員は技術系が多い。そこまでやるかと声が上がるほどこだわりを持って商品をつくっている」と話したように、商品企画力は優れている。例えば2700ミリの天井高、15段の階段ステップ、ソフトクローズ機能付き引き戸・開き戸、挽板仕上げの床などだ。同社商圏の他社物件と比較して、価格が500~1,000万円高くても売れており、顧客の紹介による契約が増えているということがそれを証明している。
にもかかわらず「営業力の低下」と品川社長が語ったのは、その商品企画意図が営業担当⇒消費者にきちんと伝えられていないという率直な思いの表明なのだろう。
記者も同感だ。コロナ禍でも予想外に売れたことから、各社はオンライン・バーチャルに切り替え、リアルでの紹介は激減している。それをよしとする消費者にも責任の一端があるし、さらにいえば、モノを観ないで、市場動向を伝えるメディアの取材力の退行にも問題がある。
メディアの取材力の退行を象徴する質問が決算発表会でもあった。ある記者が「(飯田グループなどのことか)大量生産・販売を志向しているところがあるが、御社はどうか」と質問した。中内氏は「当社は都市・街づくりを大切にしている。大量生産・販売をやるつもりはない。デザイン、品質を大事にしていく」と応えたのは当然だが、同社の物件を一つでも見ていたらこんな質問は絶対出ないはずだ。