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2023/08/28(月) 15:11

住宅性能評価の分譲戸建てシェア74% 飯田GHは「ZEH化50%」に舵切りを

投稿者:  牧田司

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飯田グループホールディングス ホームページから

 「飯田グループホールディングスTCFDレポート2023」(発行日:2023年7月11日)を読んで驚くとともに、考え込んでしまった。同レポートには「2023年3月時点の基準において、当社グループで供給する約80%の住宅は、ZEH(ゼッチ)水準である『断熱等性能等級5』かつ『一次エネルギー消費量等級6』を取得しています。この性能の住宅は一般的な住宅と比べて約20%の削減効果があります」とあるではないか。

 同社はこれまで、住宅性能評価の表示項目10分野33項目(必須4分野10項目)のうち「戸建住宅の4分野で最高等級取得」を最大の〝売り〟にしてきた。4分野とは①構造の安定②劣化の軽減③維持管理・更新への配慮④空気環境だ。

 これらで最高等級を取得しているのは結構なことではあるが、同制度の評価機関で構成される住宅性能評価・表示協会の令和3年度のデータによると、同業他社もほとんど建設住宅性能等級の4分野で最高等級を取得している。同社だけが突出しているわけではない。

 また、同レポートには「2025年の『ZEH水準比率100%』等の検討を始めております」とあるが、これは文脈からすると、住宅性能評価で「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」取得率を100%に引き上げるということのようで、ZEHの必須要件である再生可能エネルギーを含めてネットゼロにすることではないと読める。

 ここで、同社が「国が認定した第三者機関が、客観的で公平な品質評価をおこなっているため安心」「住宅性能評価は分譲戸建の36%しか取得しておらず、取得物件のうち当社のシェアは74%」とホームページに記す住宅性能表示制度について振り返ってみる。

 同制度は、平成12年(2000年)4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づくものだ。同法第一条(目的)には「住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」とあり、住宅性能表示制度は(イ)住宅の性能(構造耐力、省エネルギー性、遮音性等)に関する表示の適正化を図るための共通ルール(表示の方法、評価の方法の基準)を設け、消費者による住宅の性能の相互比較を可能にする(ロ)住宅の性能に関する評価を客観的に行う第三者機関を整備し、評価結果の信頼性を確保する(ハ)住宅性能評価書に表示された住宅の性能は、表示された性能を実現する」(住宅性能評価・表示協会ホームページ)ものだ。

 施行当時、建基法に違反しない分譲戸建てはむしろ少数派で、消費者の信頼は根底から揺らいでいた。三井不動産レジデンシャルなどは自社物件に絶対的な自信があったためか、分譲戸建て「ファインコート」の住宅性能評価書の取得を行わなかった(今でもそうか)。

 そして、施行の5年後には姉歯事件が起き、9年後には現在の飯田グループの構成会社である一建設の1,365戸、アーネストワンの465戸の戸建てで壁量不足・耐震強度不足が発覚して問題になった。当時、飯田グループの創業者で一建設社長だった故・飯田一男氏に取材したことがあるが、いつも強気の姿勢を崩さなかった飯田氏もさすがこれにはこたえたか、居直りに近い姿勢を見せ、破産も覚悟していたのを思い出す。その後、グループ6社が統合しホールディングス体制に移行したのは2013年だ。

 同社グループが住宅性能評価書の取得に積極化したのはそれからだと記憶している。同社グループか住宅性能評価制度の普及に大きな役割を果たしているのは理解できる。

 だが、しかし、記者は住宅性能評価制度以上に重要なのは、建物のエネルギー性能を星の数で評価するBELS(ベルス)、住宅の居住面積や建物の維持・管理、可変性、まちなみ、周辺環境への配慮も要件となっている長期優良住宅、CASBEEだと思っている。住宅性能評価制度を含めこれらの認証制度を一元的に管理・運用する機関を設けるべきだ。

 同社にも一言。同社は年間分譲戸建て着工戸数の3割近くを占める4万戸を供給する自他ともに認めるわが国の分譲戸建てトップランナーだ。最近の同社グループの分譲戸建てを見ていないので何とも言えないが、敷地規模は30坪、建物は28~30坪、土地代込みの平均価格は約3,000万円で、敷地はほとんどコンクリートで固められ、樹木などは1本も植えられていないのではないか。

 国土交通省と環境共創イニシアチブ(SII)のデータによると、令和3年の建売住宅のZEHビルダー/プランナー登録はわずか39件しかなく、注文住宅と建売住宅を合わせても710件(全体で5,044件)で、建売住宅ZEH化率はハウスメーカーは50.7%に達しているのに、全体では2.6%に過ぎない。

 このような現状であるからこそ、同社の目指すべきなのは「ZEH水準100%」ではなく、「ZEH化50%」に舵を切ることではないか。太陽光発電や緑被率向上などでコストがアップし、売上・利益率がダウンしても、それを数倍も上回る社会的評価を得られるはずだ。

 

 

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