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2023/12/16(土) 13:16

住宅事業の深化&進化さらに追求 共働き・富裕層向け強化 野村不動産

投稿者:  牧田司

 野村不動産は12月6日、同社取締役兼専務執行役員住宅事業本部長・中村治彦氏と同社取締役兼専務執行役員住宅事業副本部長・吉村哲己氏が出席して報道関係者向け住宅事業スモールミーティングを開催した。 記者は取材案内を失念しており参加できなかった。後日、同社広報から資料を送っていただいたので、以下にその内容を紹介する。前日の12月5日には三井不動産レジデンシャルがメディア向け「住まい探しのシン常識」説明会を行っており、その記事と併せて読んでいただきたい。

 野村不動産の2022年度の住宅供給戸数は4,240戸で、今後も安定的に4,000~5,000戸の供給を維持する。プラウド会員は26万人(三井不動産レジデンシャルは33万人、三菱地所レジデンスは対象を広げており約60万人)。

 分譲マンション市場動向では、1億円以上の住戸は年々増加し、2023年は1~9月で3,000戸超の供給で、23区供給戸数全体の約4割が1億円以上、1億~2.5億円住戸では80㎡未満が7割、2.5億円以上住戸では100㎡超が6割と、商品構成は高額帯から大きく変わるとしている。

 スモールミーティングでは、アッパーミドル・富裕層向けの市場動向、意識調査に焦点を当てた模様で、興味深い調査結果も公表されている。

 一つは、全国居住者(首都圏49.1%、中部地方11.4%、近畿地方18.7%、その他20.8%)の純金融資産額2億円以上または、単独年収3,000万円以上/世帯年収4,000万円以上を対象としたアンケート調査だ(回答数796件)。 

 これによると、200㎡超の希望者は2割、予算10億円以上も一定数存在しており、予算10億円以上顧客においてもっとも重要視するポイントの1位は「広さ」、サービスではコンシェルジュ、個別宅配を求める声が多く、設備ではスパ/温泉、パーティスペース、サウナ/水風呂を希望している。

 車は首都圏では平均1.5台所有しており、「セキュリティ」「室内平置き駐車場」「複数台駐車」へのこだわりが強く、EV充電可能な駐車区画などのニーズも強いとしている。

 もう一つのアンケート調査は、首都圏の同社のモデルルーム来場・問合者を対象にしたもので、世帯年収は1,000万円以上が約63%、約60%が共働き世帯(回答数2,074件)。

 調査結果では、「約8割の方が住宅購入マインドは高い」「価格と広さ、利便性のバランスから都心6 区を除く23区エリアを希望する動きが見られる」「80~100㎡の広めを希望」「駅近ニーズも強いが、価格バランスで広さの重要度が上がってきている」「コロナの影響で突出した収納スペースや 水回りの設備機器(食洗機・浴室乾燥 機等)・大容量のWi-Fi設備などのニーズ は家時間の減少に伴い、落ち着いた」「月々の支払いは『2万円超のゆとりがある』 層が半数」「環境配慮型住宅購入希望層は8割超で『「ZEH』『太陽光発電・蓄電池』の評価が高い」結果が得られた。

 同社は、これらの動向・結果から今後は住宅事業の深化と進化を追求し、多様化する顧客ニーズに沿った住宅をサステナビリティ(環境配慮)への対応も強化しながら展開し、顧客利便性を重視した販売手法として総合ギャラリー設置やオンライン対応(DX化)も推進するとしている。

 具体的には、共働き世帯に向けた商品展開•富裕層顧客に向けた商品展開として「大規模太陽光発電システムの導入」「プラウド全物件でEV充電設備3割設置」「木造・木質を用いた住宅の推進」をあげ、ランドリークローク、各階・各戸宅配BOXの採用、おそうじ浴槽・床ワイパー洗浄機能付きユニットバスの採用、共用部のワークスペースの採用を進めるとしている。一括受電サービス(enecoQ)の活用も推進する。

◇        ◆     ◇

 同業他社もそうだろうが、同社は価格が2億円以上の高額マンション需要層の取り込みを指向しているのは間違いない。これまでの高額物件市場は、三井不動産レジデンシャルが圧倒的にリードしており、同社や三菱地所レジデンス、住友不動産、東京建物、東急不動産などが大きく引き離された2位争いという図式ではないかと思う。

バブル期はコスモスイニシア(当時リクルートコスモス)と億ション市場で覇権を争っていた大京は現在、リブランディングを進めており、これらの一角に食い込むのかどうか。戸数は少ないが、森ビルは「麻布台ヒルズ」などで桁違いの富裕層をターゲットにしている。ハウスメーカーでは積水ハウスが各社に迫っている。

 野村不動産は野村證券との連携をもっと強化すれば、この分野で優位に立つ可能性は高いと思うがどうだろう。

 高額市場は、いわゆる億ションは年間4,000戸くらいだろうが、バブル期もリゾートマンションを含めてこれくらい供給されたはずだ。10億円以上の〝ネオ億ション〟も飛ぶように売れた。「うめきた2期」の「グラングリーン大阪THE NORTH RESIDENCE(ザ ノースレジデンス)」では最上階の専用ガレージ付き住戸(305㎡=坪単価2,750億円)は関西圏史上最高価格の25億円になったではないか。大阪が坪単価2,750億円なら、東京ならその2倍5,500万円だ。記者の予想通りだ。

 港区の記事も添付する。2023年5月段階の同区の課税標準額が1億円超の納税者は前年度比11.4%増の1,392人(全納税者の0.9%)となり、過去最多を更新した。7年前の957人から45.5%増だ。課税標準額1,000万円超の納税者も7年前より40.2%増の27,680人(全納税者の18.6%)だ。

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 スモールミーティングで公表されたデータについて一言。分譲マンション市場動向では、2023年は約30,000戸の供給予測(前年並み)、2023年1-9月の平均価格は8,618万円で前年比+40%(都心6区、平均価格2億円超の大規模物件「三田ガーデンヒルズ・WORLD TOWER RESIDECE」の供給により大幅上昇)、影響要因となった2物件を除くと、首都圏の平均価格は7,038万円で前年比+12%と報告された。

 専有面積は、「都心6区は拡大、その他の23区は縮小、都下・神奈川・千葉は近年続いていた面積縮小傾向が落ち着き、横ばいまたは拡大傾向」としている。以下に、資料から2018年比の数値を示す。

都心6区  2018年61.8㎡⇒2023年74.6㎡
その他    2018年63.3㎡⇒2023年61.0㎡
都下     2018年70.0㎡⇒2023年67.3㎡
神奈川県  2018年71.0㎡⇒2023年67.3㎡
埼玉県   2018年69.5㎡⇒2023年65.0㎡
千葉県   2018年73.6㎡⇒2023年70.4㎡

 この数値から何が読み取れるか。都心6区は前出の「三田ガーデンヒルズ」「WORLD TOWER RESIDECE」のほか「HARUMI FLAG」などアッパーミドル・富裕層向け特殊物件が数値を引き上げている。これらを除けば都心6区の専有面積の縮小が続いているはずだ。

 この専有面積と平均価格の推移を比較すれば、いかに価格(単価)が上昇し、面積圧縮が続いているかがわかる。本来は、これに基本性能・設備仕様レベルの推移を見ないといけない。例えばリビング天井高。どこもそのような数値を公表していないが、記者は2018年当時、リビング天井高は2500ミリ以上が大半を占めていたと思う。それどころか2600~2700ミリにして天井高の高さを〝売り〟にしていた物件が少なからずあったはずだ。価格上昇、面積圧縮、性能退行の傾向は継続している。

 面白いのは、メジャー7(三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス・住友不動産・東急不動産・東京建物・大京・野村不動産)と全体の初月契約率を比較している資料だ。都心6区の全体の契約率は93.8%であるのに対しメジャー7は95.3%で、埼玉県は全体が57.0%であるのに対しメジャー7は58.0%とメジャー7が上回っているが、その他23区、都下、神奈川、千葉は全て全体契約率がメジャー7の契約率を上回っている。神奈川県は全体が70.4%であるのに対しメジャー7は61.8%で8.6ポイントの差がある。

 その理由は資料には示されていないが、圧倒的シェアを占め、ブランド力が高いはずのメジャー7がその他のデベロッパーより契約率が低いのはなぜか。価格(単価)、その他の物件特性を比較すれば面白い結果が出るはずだ。記者は以前、それをやったことがある。メジャー7に対抗できるヒントがここにある。

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