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2024/03/28(木) 20:18

「水庭」と「ヴィラ」見事な人と自然の共生演出 タカラレーベン「那須 無垢の音」

投稿者:  牧田司

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「那須 無垢の音」(「水庭」)

 タカラレーベンは3月27日、「那須 無垢の音」のオープニングセレモニー&メディア向け内覧会を開催した。従前の「アートビオトープ那須」をリニューアルしたもので、同社代表取締役・島田和一氏が開発の経緯、ブランドコンセプト、今後の展開などについて語り、ホテル事業の責任者である同社取締役兼執行役員・岩本大志氏が施設の特徴について説明し、施設の〝売り〟の一つである「水庭(みずにわ)」について、設計を担当した建築家・石上純也氏か設計手法などについて語った。ホテルは4月1日にオープンする。

 島田氏は「MIRARTHグループ初となる自社ホテルブランド『HOTEL THE LEBEN』を立ち上げ、2022年に第一弾を大阪・心斎橋でオープンした。今では〝予約が取れないホテル〟として好評をいただいている。2026年12月にはかごしま空港ホテルを開業する。『那須 無垢の音』は、地産の美食と優雅な寛ぎを愉しめる『オーベルジュ』として開業する。ホテル事業は2030年までに2,000室にする目標を掲げている」などと語った。

 岩本氏はホテルの特徴について、「石上純也先生が手掛けた『水庭』、フレンチレストラン、『スイートヴィラ』から構成されており、7月には『B&B(ベッド&ブレークファスト)」も開業する。那須の天然水を地下水脈よりくみ上げ客室に提供し、客室の半露天風呂(一部桧風呂)、那須の旬の食材を楽しんでいただける』と説明した。

 石上氏は、「約50年前は水田だった土地の歴史と、この場所にある自然の素材を生かせないかと、自然と人とが共存するアート『水庭』を構想した。現在の宿泊施設エリアにあった約三百数十本の樹林を采配しなおし、160の池の水は小川から水をひき、昔の水田を表現した。夏には池の水、陸の草、光と影が交わる環境が作られ、秋には色づいた葉が池の中にたまる景色、冬には雪の白、影の黒のモノトーン景色に変化する。それぞれの景色を愉しんでいただきたい」と述べた。

 施設は、JR那須塩原駅から車で30分、栃木県那須郡那須町高久乙道上に位置する敷地面積約35,418㎡、客室数はスイートヴィラ15室(1室82㎡)、カジュアルツイン20室(1室20㎡)、その他施設はレストラン、ワインバー、ショップ、カフェテラスなど。スイートヴィラの宿泊料金は年間平均112,000円~(2名様1室、1泊2日2食付き)。2024年7月にはカジュアルに愉しめるツインタイプの「B&B」をオープンする予定。運営は那須横沢ホテルマネジメント(タカラレーベン100%子会社)。

 従前施設は1986年、栄光ゼミナールの文化事業「二期倶楽部」として創業。その後、様々な経緯を経て2007年、MIRARTHと共同事業を開始し、同年、二期倶楽部としては営業終了。2018年に 「水庭」完成。2020年、建築家・坂茂氏設計のスイートヴィラとレストランμ(ミュー)が完成。

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「那須 無垢の音」

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オープニングセレモニー(左から千葉拓海総料理長、石上氏、島田氏、岩本氏、永山総支配人)

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島田氏(左)と石上氏

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ヴィラ客室

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ヴィラ客室

◇      ◆     ◇

 この日は他社の取材を優先することに決めていたのだが、前日(26日)夜、「那須 無垢の音」を取材させていただくことに変更した。キャンセル・取材申し込みを受けていただいた両社に感謝申し上げる。

 「那須」を取材することを決めたのは、同社のホテル事業がどのようなものかこの目で確かめたかったのと、島田社長が何を話すか、石上氏が設計した「水庭」とはどんなものか、とても興味があったからだ。

 結果は大正解。同社が目指すホテル事業はワクワクするほど魅力的で、石上氏の「水庭」は人工ではあるが那須の自然木を見事に調和させている。さらにまた、ヴィラ、レストランμ(ミュー)の設計を建築家の坂茂氏が手掛けたことを初めて知らされたが、全てが本物でそのレベルの高さを確認することができた。

 まず、島田氏の挨拶。リリースでは触れられていないが、島田氏は真っ先にこのリゾートに出会ったのは10年昔であることを明らかにした。10年前と言えば、島田氏が社長に就任した年だ。その数年前から同社のマンションが劇的に変わったのを記者は確認している。一言でいえば〝非日常の演出〟だ。その舵取りを行ったのが島田氏だ。

 今回、島田氏直々に「水庭」を案内してもらった。島田氏は「現在ある『水庭』の場所は砂利敷の駐車場だった。こんなになるとは夢にも思わなかった」とも語ったが、ひょっとしたら、今日の姿を夢想していたのではないか。10年構想と考えれば腑に落ちる。

 〝非日常の演出〟と書いたが、記者はマンションの究極はホテルだと思っている。自腹を切って名だたるラグジュアリーホテルに宿泊したのも、究極のマンションとはどのようなものかイメージするためだった。これ以上は書かないが、皆さん、どこでもいいから同社のマンションを見学していただきたい。「福岡天神」と「上尾」の記事を添付した。

 「水庭」とはどんなものか。上段の石上氏のコメント通りだが、驚いたのはその設計手法だ。記者は造園のことはわからないが、樹木の移植はとても難しく、下手をすると多くは枯死するという。枯死させないためには事前の根回し・根巻がとても大事だと聞いている。

 ところが、石上氏は根回し・根巻を行わず、自然らしさを演出するために普通の造園では考えられないミリ単位で設計し、日本に3台しかない機械を使って1日1~2本ずつ、2年間(冬場は作業できない)かけて三百数十本の高木(クヌギが中心)を移植したという。そうすることで、生物多様性の宝庫でもある地中のいきものたちへのダメージも軽減できるのだという。移植から6年経過しているが、枯死の事例は十数本にとどまっているという。そしてまた驚いたのは、倒木を防ぐため地中1~2mに支柱を埋め込み、池の水は川から引いたもので、水そのものはただで、循環させているという。写真を見ていただきたい。見事の一語に尽きる。

 ヴィラも素晴らしい。何が素晴らしいかと言えば、全てが本物であることだ。樹林-テラス-室内のプランニングが素敵で、2階建てではなくスキップフロアを巧みに利用した平屋建てなのもいい。さすがプリッツカー賞の坂氏だ。(山形の「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」も見たいと思っているのだが…お金がない。今年、同賞を日本人として9人目の山本理顕氏が受賞したのもとても嬉しい)

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水庭

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水庭

◇        ◆     ◇

 島田社長は、2030年までホテル事業を2,000室にすると語った。那須塩原も競争は激化するはずで、「楽観はしていない」ようだが、「水庭」と「坂茂のヴィラ」の素晴らしさを伝えきれれば、「大阪」のように〝予約の取れないリゾート〟に生まれ変わるかもしれない。

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