「紙の建築」で知られる世界的建築家・坂茂氏が設計した芝浦工業大学豊洲キャンパス新棟のカフェ&レストラン&カフェを見学した。まさに「紙わざ」、壁から天井、家具、椅子に至るまで紙管がふんだんに用いられ、その美しさに見とれた。
レストランの「銀座シシリア豊洲店」は、再生紙の紙管(丸と四角)を主体材料として天井、間仕切り壁、家具などが作られており、坂氏がこれまで開発してきた紙の建築(紙管による建築の主体構造)の一環。カフェの「SIT Global Caffe empowered by Segafredo」は、このプロジェクトのために新しく開発した、白ブナ材をL字型断面に成型した合板が天井、間仕切り壁、家具などに採用されていた。
双方とも一般利用も可能で、レストランは平日・土曜日11:00~21:00(休業日は休祝日、夏季休業日、年末年始)、カフェは平日8:00~20:00、土日祝日9:00~20:00(休業日は夏季休業日、年末年始)。
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開業したのは先月9月21日。早く見たかったのだが、他の取材が結構入っており、この日(10月18日)になってしまった。最初に利用したのはカフェ。紙管は使用されていないが、新開発のL字型成形合板が壁や天井にルーバー状に張り巡らされていたのに目を見張った。飲食メニューも学生さんも利用することからかリーズナブルなものだと思った。
次に見学したレストランは、まさに「紙わざ」。坂先生の真骨頂である紙管が壁から天井、間仕切り、家具、椅子まで随所に使用されていた。紙が用いられていないのは床(実際は床にも紙のチップが用いられているとのことだった)くらいだった。
圧巻は、親子連れの小さな子どもが「ハチの巣みたい」と形容した天井だ。いわゆる「ハニカム構造」と呼ばれるもので、軽くて強度を損なわず、資材を有効に利用できる利点があり、そして何よりも環境に優しいというメリットがある。坂先生はこれを自宅や仮設住宅に採用して話題となった(小生は山形県鶴岡市の「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」を見たいのだが、お金がない)。
しばし観察した。正六角形の枠内に大きいものから小さいものまで4種類の紙管がはめ込まれ結合され、全体が波打つように天井に張り付けられていた。
紙管の数を数えた。大きい順に7個、19個、37個、61個だった。みんな素数だ。この数値は何を意味するか分からないのだが、より小さい紙管を収めるとどうなるか計算した。次は91個でその次は127個、そして169個⇒217個となった。つまり紙管は1⇒1+6×1=7⇒7+6×2=19⇒19+6×3=37⇒37+6×4=61⇒61+6×5=91⇒91+6×6=127⇒127+6×7=169+6×8=217…前の紙管の数に6の倍数を加えた数ずつ増える…だがしかし、91は1と7と91で割れるから素数ではない。ここで行きどまり。フィボナッチ数でも素数でもない、この数列は何だ。ハチの巣も雪の結晶も六角形であるのと同じ、美しいのは「6」がヒントだ。
もう一つ、これは銀座シシリアのマネージャーが話したことなのだが、波打つ紙管やアール状の間仕切り壁による反響音はことのほか大きく、オペラなどコンサートをやれば素晴らしい音が出るのではないかということだ。坂茂建築事務所に聞いたら、音響効果は特段計算していないとのことだった。
レストラン&カフェは東京メトロ豊洲駅から徒歩10分くらい。少し距離はあるが、大学までの歩道には美しいセンダンの街路樹も植わっている。散歩がてら利用されることを勧めたい。日本財団が整備し、坂先生が担当した渋谷区のシースルーのトイレ記事も添付する。
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