旭化成不動産レジデンスは5月18日、調布富士見町住宅の建て替えマンション「アトラス調布」のマスコミ向け竣工見学会を実施した。
物件は、調布駅から徒歩14分。調布市富士見町に位置する地下1階、地上6階建(南棟=ひかりの棟)と8階建(北棟=杜の棟)2棟総戸数331戸(非分譲104戸含む)。専有面積は61.02~80.13㎡、価格は4,183万~5,541万円。駐車場は地下に136台収容。平成27年5月竣工。設計・監修はNEXT ARCHITECT&ASSOCIATES。施工は東急建設。約8割が販売済み。
マンションの建替え等の円滑化に関する法律による建替えでは初めてと思われる「公道の付け替え」を実施。公道が2棟のマンションを分断しないよう、その両側に並木や植え込みを配し、アルゼンチン斑岩を使用することでマンション敷地内に公道が走る違和感を緩和。共用施設にはガーデンカフェ、キッズルームがある。
建物は居住性を高めるため雁行配棟とし、基壇部の見切り水平ライン、住戸ブロック切り替えのコーニス、トップの庇形状、ロートアルミの手すりなどに工夫を凝らすことで全体として重厚感のある形状にまとめている。(岡田寛子)
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上記の記事は岡田記者が書いたものに若干手を加えたものだ。このマンションについては別掲の記事も参照していただきたい。記者は私用で見学会は欠席したが、前日にじっくり時間をかけて見学・取材した。どうしても自分の目で完成後の物件を見ておきたかったからだ。
その理由は、2年前のモデルルーム見学会の時に記事にした「模型を見たとき鳥肌が立つような感覚を覚えた。(ネクスト社の)山中氏は『道から始めた』『車には遠慮してもらう』と語ったように、道と建物との一体感・調和にこだわった企画意図」がその通り実現されているのかどうかを確認するためでもあった。
その企画意図はほとんど瞬時に理解した。雁行配棟のよさについてはいまさら言うまでもないことだが、ランドプランは想像以上の出来栄えだった。
たまたま関係者らの見学会が行われており、物件担当の同社開発営業本部第一営業部長・阿佐部肇氏や、設計・監理を担当したネクスト社のスタッフから説明を受けたのだが、幅員5mの車道には、「アルゼンチン斑岩」が敷き詰められていた。これには驚いた。アルゼンチン斑岩は丸の内仲通りや横浜元町などの街にも用いられているそうで、この石張りの道路を見ただけで、街づくりに込められた強い意志を感じた。よくぞ行政の道路関係者などを説き伏せたものだと感嘆もした。
車道にはピンコロ、イメージバンプを多用して車のスピードを抑制する効果を高める工夫をするとともに、その一方で、車道と舗道・敷地の境をなくしている。実際の市道は車道の両端それぞれ1.25m延長したまでで都合8m幅なのだが、ところどころに鋲を打ち込む以外に境界線はまったくない。総延長は200m近くあった。
付け替えた公道を景観の一部に取り込み一体として開発した画期的なマンションになるはずだ。
植栽計画もいい。敷地・舗道にはシンボルツリーの百日紅のほか、サクラ、ヤマボウシ、エゴノキ、シラカシなどの高木もたくさん植えられているのだが、これらは組合員を含む関係者が千葉や埼玉の植木屋さんめぐりをして選定したのだという。サルスベリの樹齢は数十年もするもので、「瘤(こぶ)」がないことでも自然のまま育てられてきたことがよく分かる。
舗道空間と緑地帯のランドスケープデザインを際立たせているのが建物の基壇部の見切り水平ラインだ。この横筋を1本通すことによって散漫になりがちな風景をきりりと締めている。見事というほかなかった。
抜け・奥行き感を意識したエントランス部分の空間演出もなかなかいい。
見学会では、NEXT ARCHITECT&ASSOCIATESの山中猛社長が「景観や街並みを大切にしたかったから、デザインはマンションっぽくしたくなかった。雁行型にしたり、ラインを変えたり工夫をした。道路に関して言えば、道路屋になれるくらい研究した」と語ったそうだ。「道路屋」という職業があるのかどうかしらないが、街をつくるのに「道」から考えた、あの宮脇檀の哲学に通じるものがある。車優先から人優先の道づくりがこれからも増えることを期待したい。
昨日見た古河市の道路の街路樹プラタナスは苦痛で身体が歪み悲鳴をあげていた。
「アトラス調布」 道からつくり、道を中庭化したマンション(2013/7/25)