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2014/01/29(水) 16:21

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授

投稿者:  牧田司

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「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」で挨拶する阿部市長

第3回多摩ニュータウン再生検討会議

 「何もしなければ50年後の多摩ニュータウンの人口は半減する」-1月28日行われた「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」で職務代理者の西浦定継委員(明星大学教授)がこんなショッキングな報告を行った。

 「多摩ニュータウンはどこに向かうのか? 」と題するレポートの中で報告したもので、現在の多摩ニュータウン地区に住む人口約10万人(2010年)は、都心志向による夜間人口の減少と、リニアで発展する相模原などへの従業・夜間人口の流失という「ダブルストロー効果」により50年後(2060年)の人口は5万人に減少すると話した。

 西浦教授は、「私が勝手に推測したものではなく、様々なデータをもとに客観的にはじき出した数字。そうならないためにもこれまで築いてきた多摩ニュータウンの歴史50年とこれからの50年をセットして100年の街づくりを進めなければならない」と述べた。

 具体的に人口減少に歯止めをかけるには、団地建て替えなどの活性策とリニア整備効果・鉄道整備効果・道路ネットワーク整備効果などの広域インフラ整備により現在の10万人を維持できると話した。団地建て替えでは減少を最大2万人食い止めることができるとし、広域インフラ整備効果で最大3万人確保できるとした。

 また、検討会議が実施した分譲マンション居住者を対象にした「住環境アンケート」(回答1,206票)について、生活環境、建て替えや修繕、住み替えなどのクロス集計手法を用い、台所・トイレ・浴室など水回りが住宅全体への満足度を左右することを報告した。

 冒頭に挨拶した阿部裕行市長は、「この取り組みは全国が注目している。多摩ニュータウンが成功しなければどこも成功しない。適切な再生策を打ち出していただきたい」と語った。

 多摩市は2月12日14時~17時、多摩ニュータウンの再生シナリオを共有し、取り組みをアピールするシンポジウムを「パルテノン多摩小ホール」で行う。

◇       ◆     ◇

 多摩ニュータウンの人口が50年後に半減するというのは多摩ニュータウン居住者だけでなく、都市郊外の大規模ニュータウンに住む居住者や行政にとっても衝撃的な話だろう。西浦教授の話には同感だ。むしろ団地の建て替えは絶望的と思っているので、建て替えによって2万人の居住人口を確保できるかどうかは疑問に思っている。

 保留床を確保して、入居者の負担できる範囲内で建て替えができるのは極めて限られたものに限られると思っているからだ。仮に建築費を坪100万円(実際は85万円ぐらいでできるかもしれない)とすると、既存の20坪のマンションを建てるには2,000万円かかる。既存と同じものをもう1戸建てて余った住戸を4,000万円(坪単価200万円)で売ることができれば入居者の負担はゼロになる。地価の高いと都心部などはこれが可能だ。しかし、坪単価200万円で売れるところは多摩ニュータウンでは駅近しかない。

 多摩市の建築規制も大きな壁だ。市は団地を建て替えた場合、容積率は150%に抑制する方針を打ち出した。これは保留床の確保を難しくする。既存建物の倍の戸数が建てられるところはそうないはずだ。

 「Brillia多摩ニュータウン」が売れたのは、管理組合が粘り強く交渉し「一団地」指定を取っ払い、容積率を確保し、なおかつリーズナブルな価格設定ができたからだ。

 広域インフラ整備も同様だ。都市間競争に打ち勝つ戦略は多摩市だけが取り組んでいることではない。多摩市を取り巻く町田市、相模原市、稲城市、日野市、立川市、八王子市などは強豪ぞろいだ。多摩市が勝てる保証などない。「私は市民じゃありません」という西浦教授は他市のいろいろな委員になっており、「みなさん、多摩市はニュータウン再生に懸命に取り組んでいる。うかうかすると負けますよ」くらいは話しているはずだ。つまり、競争を促す、激化させる役割を担っている。(この点でいえば、検討会議の委員長を務める上野淳・首都大学東京副学長は多摩市民で、「私はここに骨を埋める覚悟」とおっしゃっているので多摩市の味方だろうが、どこで寝返るかわかったもんじゃない)

 都市間競争は団地間競争にもなる。記者は都市間競争にも団地間競争にも勝たなければならないと考えているが、それでは疲弊するばかりだ。競争を回避するというよりはそれを乗り越える、競争に巻き込まれない、いわば止揚する戦略が必要だと思う。ヒントは、言い古された言葉かもしれないが、「コミュニティ」「絆」だ。この「価値」をどう評価し、さらに進化させるかだ。

 西浦教授が採用したクロス集計は大賛成だ。アンケート調査すべてに言えるが、回答者の年代、収入、居住環境によって回答は異なるはずで。「誰が何を考えているか」を具体的に集計しないと意味がない。さらに言えば、アンケートに答えない人(今回の調査の回収率は約30%)はどのように考えているのかを探る方法も編み出してほしい。

◇       ◆     ◇

 上野委員長は会合の中で、「検討会議は来年度以降も継続する。円卓会議のメンバーには市民やNPOを加えたい」と、市民を巻き込んだ再生の取り組みをする意向を示した。

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「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」検討委員

 

 

 

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