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2023/07/27(木) 13:20

〝生活を紡ぐ(life knit)〟積水ハウスの新提案モデルハウス「HUE(ヒュー)」

投稿者:  牧田司

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「HUE(ヒュー)」

 積水ハウスの新デザイン提案システム「life knit design」を体現したモデルハウス「HUE(ヒュー)」を見学取材した。同社が6月20日に発表したプレス・リリースの「life knit design」の〝生活を紡ぐ(life knit)〟ネーミングはとてもいいと思ったが、どのような提案であるかわからず、見学をお願いし、実現した。約1時間、間取り、建具・家具、仕上げ、カラーリングなどを見て回り、疑問は氷解した。月並みな言葉だが〝シンプル・イズ・ベスト〟だ。

 モデルハウスは、テキスタイルデザインを中心に衣服、家具や器、店舗や宿など多岐にわたる空間ディレクション活動を行っているデザイナー・皆川明氏が代表を務める「minäperhonen(ミナ ペルホネン)」とコラボし、「駒沢シャーウッド展示場HUE」に建設したものだ。建物は木造軸組工法2階建て延床面積190.25㎡(1F:103.25㎡2F:87.00㎡)。

 コラボが実現した経緯について、積水ハウスR&D本部デザイン設計部デザイン企画グループ グループリーダー足立奈穂氏は、「当社の100年住宅は、安心・安全のハードの部分では実現しているが、世代を超えて幸せに住んでいただける空間を提案できないかと、当社と同じように『せめて100年続くブランド』を掲げる皆川さんと意気投合して実現しました」と語った。

 「駒沢住宅展示場」と言えば、名だたるハウスメーカーが妍を競う、豪華絢爛の建物ばかり。2020年には三菱地所ホームの「ROBRA(ロブラ)」、2021年には大和ハウス工業「Wood Residence MARE-希-(マレ)」の富裕層向けモデルハウスを見学している。今回も、同様の建物だろうと考えていた。念頭には同社の「新大久保」のモデルハウスがあった。

 ところが、見当は大外れ。マホガニー、チーク、紫檀、黒檀などの高級材は使用されておらず、仕上げ材はごく一般的な住宅に採用されているものだった。モデルハウスにありがちな、個性的といえば個性的だが、押しつけがましい、これ見よがしの家具・調度品もなく、実にシンプル。何の衒いもないものだった。何だか肩透かしを食ったような気分にもなった。

 とはいえ、シンプルだからこそ〝皆川ワールド〟を垣間見たような気持がした。わが国の伝統的な染めの技法である草木染めがその一つだ。ソファ、クッション、床、カーテンなどいたるところに施されていた。クッションはプリントではなく、織りによるもの。ソファは使い込むと裏地が浮き上がるよう仕上げられていた。

 カーペットには、大小の枯葉のような文様が描かれていた。中庭や高窓から差し込む木漏れ日とともに、自然が織りなす不思議な空間を演出しようという狙いのようだ。(わが家のカーペットのコーヒーやらジュースやらその他もろもろの人生の汚点のようなシミかと思ったが)

 同じような仕掛けは、1階南側のスリット窓にも施されていた。ロールスクリーンカーテンの文様が壁や床に写り込んでいた。クッションに用いられている丸い文様は洗面室やトイレの壁などにも採用されていた。

 そこはかとない安らぎを覚えたのは1階のLDKだった。コの字形に配置したLiving(9.8帖)-Cozy Corner-Kitchen(8.3帖)は中庭の光と風、緑を取り込めるようにしていた。クチーナのシステムキッチンを採用したKitchenは独立型で、南側と北側に窓付き。その隣のDining(12.2帖)は最大2700~最小2500ミリの勾配天井を採用。天井は無垢のピーラー材(ベイマツの良材)。

 全てが没個性的かといえばそうではない。皆川氏の個性がよく表現されているのが、中二階の「トレジャールーム」と名付けられている9.8帖の空間だ。天井高は約4000ミリ、壁の四囲は木製リブパネルで張りめぐらされており、天井は「パンチカード天井」。これは、ミナペルホネンがカーペットを製作する際に、織機にパンチする位置を指示するシートを加工したもので、素材は紙だ。

 もう一つ、素晴らしいと思ったのは、遊び心もふんだんに盛り込まれている2階の提案だった。8m×6mの無柱空間を家具・収納のみでFamily hall(6.7帖+4.9帖)、kid's room (4.9帖)、Master bedroom(12.9帖)家族構成やライフスタイル・サイクルによって間取りを自由に選べ、変更できるものだ。ここに「life knit design」の真髄が注ぎ込まれていると思った。使用されている家具・収納の木もシンプルなもので、どのような置物や絵画などにもすんなりと馴染むはずだ。

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キッチン(同社ホームページから)

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1階リビング

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1階リビング(左)と中二階の「トレジャールーム」(カーペットはシミではありません)

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Dining(手前)とKitchen

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洗面

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トレジャールーム

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トレジャールーム

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Family hallとkid's room

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Family hall

 ◇      ◆     ◇

 同社のプレス・リリースには「美しい空間やインテリアは、空間自体が整ったシンプルな構成と素材で成り立っていることを突きとめました」とあり、従来のインテリア提案の課題として「テイストが増えるたびに部材や素材が増えるが、膨大な選択肢がありながらもテイストが違う部材ラインナップのため、組み合わせ方が難しい」とある。

 今回の見学を通じて、「建築美」とは何かを改めて考えさせられた。〝シンプル・イズ・ベスト〟-いつの時代も変わらないということか。記者もそう生きたい。

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