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2020/09/04(金) 23:20

三菱地所ホーム 木造の常識を覆す新構法「FMT」 富裕層・非住宅用途に照準

投稿者:  牧田司

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「ROBRA(ロブラ)」モデルハウス(駒沢公園ハウジングギャラリーで)

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 三菱地所ホームは9月3日、「世界初!木造住宅の常識を覆す柱や梁に捉われない自由な建築を可能にする新構法&ブランド発表会・内覧会」を行った。世界初の技術特許を取得した木造と鉄骨を組み合わせたハイブリッド「Flat Mass Timber構法(フラットマスティンバー構法)」(以下、新構法)を開発し、設計の自由度を高めたのが特徴で、新商品ブランド「ROBRA(ロブラ)」として9月5日から1棟単価5,000万円以上の富裕層や非住宅向けに販売開始する。

 発表会に臨んだ同社代表取締役社長・加藤博文氏は「2015年4月に社長に就任した時から、建築上の制約も多い2×4工法には物足りなさを感じ、他社に先駆ける商品開発にチャレンジしたいと考えてきた。コロナ禍で4月に予定していた発表会は中止せざるを得なかった。今回は満を持しての発表会。新構法は木造住宅の概念を180度変えた。森林問題にも対応できる。住宅のみならず非住宅への展開も可能になる」とアピールした。

 新構法と新ブランドについて説明した同社執行役員・月田徹氏は、「構想に5年以上、商品化に3年の歳月をかけた。空間の概念も、暮らしの概念も、デザインの概念も変えた。『木造を、アートにする。』のがコンセプト」と、商品に込めた思いを語った。

 新構法は、厚さ150ミリのヒノキ材の集成材厚板パネルにH型鋼と接合金物を組み合わせることで接合部の脆性破壊の問題を解決。耐震等級3を維持しながら構造壁量は通常の2×4工法の1/6から1/7に抑えることを実現。構造壁を外壁に使用する必要もなく、各階層をずらしたり曲線にしたり、木を現しにすることも可能にした。跳ね出しのスラブは最大3.1m、二方向でも最大2.8m×2.3m確保できるようにしたのが特徴。

 ラテン語で木を意味する「ARBOR」を逆さにした新商品ブランド「ROBRA(ロブラ)」のモデルハウスは、駒沢公園ハウジングギャラリーに建設。建物面積約104㎡、3階建て延べ床面積約272㎡(82坪)。新構法の特徴を表現するため、各フロアを自由な方向にスライドさせ、木や石を外観にちりばめることで自然素材の経年変化が楽しめるようにしている。室内空間のデザイン・設えは、全館空調「エアロテック」を標準装備し、高級材などをふんだんに用いてはいるが華美な装飾を避けている。

 坪単価は約150万円~。同レベルのRC造と比較し2割くらいのコストダウンが図れているという。

 壁の重さは450㎏/立方m。4トン車が通れる幅員4m以上の道路でないと構造壁の運搬が難しく、通常の2×4工法と比べ工期は1カ月くらい長くかかるのが難点のようだ。

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構造模型

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「ROBRA(ロブラ)」模型

◇       ◆     ◇

 冒頭の写真を見ていただきたい。3層の建物はそれぞれ積み木細工のように捻じれている。しかも1階も2階も3階も正面部分には構造壁は使用されていない。鉄やコンクリなら技術的に可能かもしれないが、「木造一部鉄骨造」の建物ではまず考えられない。読者の皆さんも、このような「木造一部鉄骨造」は見たことなどないはずだ。

 いまだにどうしてこのような建物の建設が可能になったのかよく分からないが、訳が分からなかったのは小生だけでなかった。他の一般紙の記者も「分かりやすく説明してほしい」と質問した。月田氏は建基法の規制について語ったが、建築技術に関する基本的知識がない記者が新構法を理解するのは至難の業だ。

 実は、小生は似たような経験を最近している。8月19日に見学した大和ハウス工業「Dタワー西新宿」の外殻チューブ構造がそれだ。1辺9本のコンクリート柱を4辺の外壁に取り込み、その間隔を等間隔ではなく、最小1.8mから最大6mまでアトランダムに配置されていた。

 設計を担当した日本設計建築設計群主管・淺見泰則氏から「通常の鉄骨鉄筋造のビルは構造計算上不具合が生じるが、外殻チューブ構造を採用したことで偏心が可能になった」と説明を受けたのだが、何のことかさっぱり理解できなかった。

 今回の新構法もおそらく技術的には近いものがあるはずだ。

◇       ◆     ◇

 モデルハウスについては、同社商品開発部商品開発グループ課長・原祥子氏から微に入り細を穿つ説明を受けた。原氏は同社の最高ブランド「オーダーグラン」の設計を担当しており、これまで何度もお会いしている。話はとても分かりやすく、面白い。今回も「設備仕様レベルは『新宿』と同じで、約1,000万円かけた」-この一言でレベルの高さがわかった。

 ダイニングテーブルの大理石は文様が左右対称になるよう1枚の石を2つに割って張り合わせた〝ブック張〟を採用しており、ダイニングセットの価格は500万円、来客時に隠したい書籍を隠すことができる書棚は250万円、ケミカル製品に見えるインド産のバンブー(竹)でできたリビングの敷物は34万円、玄関ホールのベンチは北海道産の樹齢98年のナラの無垢材で67万円…。

 原氏はナラ材のベンチを「ご注文いただければお家にお届けします」などと記者をからかい、「辛口にしないで」と何度も念を押した。原さん、わたしは「辛口」しか飲まない。

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500万円のダイニングセット

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34万円の竹が素材のカーペット

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見せたくない書籍が隠せる250万円の書棚

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67万円のナラ材のベンチ

◇       ◆     ◇

 発表会では、ジャーナリストの津田大介氏をゲストに迎え、これからの住生活をテーマに月田氏とのトークショーも行われた。

 津田氏は、「声をかけていただいたときは、何でぼくなのか驚いた」「ライフスタイルが多様化し、新型コロナは職住融合を加速させるきっかけとなった」などと語った。

 月田氏は「職住融合は新型コロナがあったからではなく、オーダーグランのテーマの一つ」「これまでの2×4の技術では、メーカーと競合すればするほど結果的にみんな同じようになってしまう。今回の新構法には夢とロマンを込めた」などと応じた。

 (記者は、時に過激な発言もされる津田氏がなにを話すかも今回の取材の楽しみの一つにしていたのだが、なんだか肩透かしを食らったような気がした。〝表現の不自由と住宅の自由〟をテーマにしていれば、新構法のよさに比してあまりにも貧弱な小生の表現力のその落差の大きさが伝わったのではないか)

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左から月田氏、加藤氏、津田氏

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