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2021/06/02(水) 15:50

「希」に見る設計依頼 1か月で来場100組超 大和ハウス 富裕層向け「MARE」

投稿者:  牧田司

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「Wood Residence MARE-希-(マレ)」

 大和ハウス工業が4月29日から発売を開始した富裕層向け戸建て商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」が大ヒット-住宅展示場「DaiwaHouse 駒沢展示場2」に設けた約3億円のモデルハウス来場者は、コロナ禍にもかかわらず1か月間で100組超に達し、設計依頼も通常100件に1、2件の割合なのに対してすでに約15件に上っている。同社は新商品発表会の際、富裕層向けの販売目標を年間100棟(MAREは50棟)と発表したが、目標を大幅に超えそうだ。

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1階リビング(ホームページから)

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主寝室

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キッチン

◇       ◆     ◇

 発売から1か月経過した5月31日、駒沢ハウジングギャラリーに建設されたモデルハウス「MARE」を見学した。同社の史上最高級であるのはもちろん、業界最高級の商品であると睨んだ実物はいったいどのようなものか、しかとこの目で確認するのが目的だった。

 商品概要などについては、添付した記事を参照していただきたい。木造とRC造の混構造とすることで設計の自由度を高め、自然素材をふんだんに採用し、自由自在に造ることができるのが特徴だ。

 見学には、先の発表会に三つ揃いのスーツ姿で商品説明を行った同社住宅事業本部事業統括部ZIZAIデザインオフィス室長・櫻井恵三氏から直接〝稀に見る〟特徴などを聞いた。

 櫻井氏は開口一番、「私は56歳ですが、これまで他社のも含め40棟超のモデルハウスを造ってきました。とんがったものを造ろうと好き勝手にやってきました。地域・消費者ニーズを取り込み、感動を呼び起こすのは当然のこと。感動は無尽蔵です。そして今回重視したのは『再現可能性』です。建築はどうあるべきかという本質に迫ろう、一番やりたかったことを全て盛り込みました」と語った。

 そして、約1時間の見学を終えたとき、「一般的にモデルハウス来場者から設計依頼を受けるのは100人に1人か2人ですが、今回はすでに15件くらい。1割を優に超えています。気に入ってくれた方ともそうでない方とも会話が生まれているのが何よりも嬉しい」と話した。

 この言葉にすべてが言い尽くされている。「再現可能性(再現性)」は難しい概念だが、永遠のテーマだ。戸建てモデルハウス、マンションモデルルームに全て当てはまることだ。それにしてもモデルハウス開設から1か月間に通常の10倍を超える15件の設計依頼を受けたとは…。

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インナーガーデン

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水遣りのタイミングを計る印

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櫻井氏

◇       ◆     ◇

 モデルハウスの玄関内に入った途端、ほとんど瞬時にそのレベルの高さを実感した。もっとも感動したのは、得も言われぬ黒い壁だった。それは「黒」=BLAKではない。櫻井氏によると「青」が混じっている「墨」とのことだった。

 その墨色の壁は、「MARE」のホームページにも紹介されている。主寝室は実際に見た「墨」に近いが、室内の空気感は表現できていない。いかに精巧なカメラでもってしても人間の五感を伝えられない。

 表現力の乏しい記者も、光の当たる具合や見る角度、周囲の建具家具などによって微妙に表情を変える光と影、陰影を表現できない。

 「黒」といえば、隈研吾氏が総合監修を担当した三井不動産レジデンシャル「パークコート神楽坂」ではキッチン天板や他の面材、壁も「黒」が多用されていたが、隈氏は普通の黒ではない「玄(くろ)」をテーマにしたと聞いた。建築家のバイブルとされる谷崎潤一郎「陰影礼賛」は参考になるかどうか。

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外と内の連続壁(サッシ部分で水を切るのが難しいとか)

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片持ち階段(下部の壁厚は上部より30cm厚い)

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2階のトップライトからインナーガーデンに光を取り込んでいる。右側の格子壁の背後の壁には影が映し出される

◇      ◆     ◇

 最近見学した富裕層向けモデルハウスでは、「ハウジングステージ新宿」にある旭化成ホームズ「RAUMFREX(ラウムフレックス)」に驚嘆した。2階のLDKは白が基調で広さは50~60帖あった。

 今回の「MARE」の1階のLDKも同じくらいの広さか。基調カラーは、旭化成と対照的な「墨」で、2×6mのインナーガーデンの緑と、カシノキの突板にガラスコーティングを施した2×6mのキッチンカウンターに圧倒された。

 インナーガーデンに2本植えられているベンジャミンの高いほうの樹高は2階まで届く約5.5m。

 同じようなインナーガーデンでは、三菱地所ホームの「浜田山ホームギャラリー」を見学している。自動潅水システムを導入して水遣りの負担を軽減していたが、大和ハウスの「MARE」は深さ60cmの鉢植えに、ウッドチップを表面に敷き詰めたもので、初期投資費用を抑えられ、水遣りのタイミングをチェックできる目印が付いているので、維持管理も楽とのことだった。

 カシノキのキッチンカウンターも凄い。これだけの広さがあったら、自分が調理してお客さんや友人をもてなすのもいいし、料理人を呼んで歓談するのもいい。キッチンの概念を変えるのは間違いない。

 見学目的の一つでもあった「ボグオーク」も見た。説明を受けなければ普通のオーク材と変わらないが、3000年も昔の北欧の湖底に眠っていたものが偶然に掘り出されて建築材に用いられるというのがいいではないか。

 櫻井氏によると、「出土したら買い取るからといくつかの材木問屋に声を掛けていました。値段? 1㎡15万円です。普通の木材と比較すると10倍くらい。高額の部類に入る青森ヒバは1㎡2.5万円です。見学される男性の方には高い評価を頂いていますが、女性の方は難色を示される」とのことだった。これ以上書かないが、男と女のものの考え方の違いを示唆しているようでとても面白い。

 見えないところに、素人はよくわからない技が注ぎ込まれているのも見聞した。「片持ち階段」もその一つだ。「片持ち階段」は片方で支えるからどうしても揺れが生じてしまうのが難点だそうだ。それを解消するため、見た目には判別できないが、壁の厚さを約30cm変え、厚いところに鉄骨を埋め込んで支えているとのことだった。階段ステップは20段。

 サッシを挟んで外壁と内壁に同じ石張りを採用して連続性を持たせるのも技術的には難しいそうだが、これは説明を聞いてもよくわからなかった。
 建具・家具類はB&B製品がたくさん用いられているそうだが、逆に、どこにでもある素材を巧みに取り込んでいる仕上げについても聞いた。主寝室の袖壁には高価そうな「石」が張られていたが、櫻井氏は「これは普通の石」。キッチンカウンターには古伊万里かと思われる食器が置かれていたが、「これは骨董屋で買ったもの。そんなに高くない」とのことだった。

 なるほど。櫻井氏の10万円の三つ揃いのスーツがとてつもなく高価に思えたのも同じことか。〝本物〟は何をしてもそう映るということだ。小生などは何を書いても言っても着ても、馬鹿にされるだけだ。しかし、嘘は言わない。類まれな「MARE」を見学されることを勧めたい。

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