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2014/02/13(木) 11:41

多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか

投稿者:  牧田司

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「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」(パルテノン多摩小ホールで)

多摩ニュータウン再生シンポジウムに300名

 多摩市は2月12日、「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」を開いた。平日の午後にもかかわらず定員の250人を上回る約300人が集まり、関心の高さをうかがわせた。

 多摩ニュータウン再生検討会議委員長・上野淳氏(首都大学東京理事)が基調講演「多摩ニュータウンの魅力と今後の展望」を行い、同検討会議委員・西浦定継氏(明星大学教授)が「多摩ニュータウン再生検討会議の検討状況」を報告。諏訪2丁目住宅マンション建替組合理事長・加藤輝雄氏が建て替えの経緯と成功に導いた要因などについて語り、上野氏がコーディネーターを務めたトークセッション「まちの夢を語ろう」には南佳孝・リビタ社長、阿部裕行・多摩市長も参加した。

 シンポジウムの冒頭で挨拶した阿部市長は、「昨年7月、入居開始から43年が経過した多摩ニュータウンの今後の方向性や具体的な取組みを行う多摩ニュータウン再生検討会議を設置した。本日が緑豊かで夢のあるまちづくりを進めるキックオフの日にしたい」と語った。

 ◇       ◆     ◇

 最初に基調講演を行った上野氏は、「多摩ニュータウンは、豊富な緑と歩車分離のネットワーク、さらには大学の集積など高いポテンシャルを持っている。これをどう生かすか、これからの街づくりの大きなヒントになる。建物の老朽化、入居者の高齢化などは全国共通の課題。住宅と街のバリアを解決し、すでに行われている自立的な先進モデルを広げていくことだ」などと語った。

 西浦氏は、「このまま何もしないと50年後には多摩ニュータウンに人口は5万人に半減する。これまでの街づくりの50年を踏まえ、これからの人口減少に対応したスリム化に向けた50年をセットにした100年の街づくりのロードマップを検討会議で完成させる」と話した。

 加藤氏は、建て替えの検討が始まってからバブル崩壊、「一団地」の指定解除に10年以上もかかったこと、リーマン・ショックによる打撃などの困難を乗り切って全戸即日完売に導いたのは、「住民が主役」の理念を貫き、専門家や地域との連携を図り、情報の開示を徹底させたことなどが要因と話した。

 日野市のURの賃貸「りえんと多摩平」でシェアハウスを運営しているリビタのコンサルティング部コミュニケーションマネージャー・日野孝彦氏は、住民を主役に行政、大学、地域がサポートしていく必要性を強調。若者を呼び込む仕掛けがヒントになるとした。

 京王電鉄総合企画本部沿線価値創造部長・都村智史氏は、2012年に部を立ち上げてからこれまでの「生活支援サービス」活動について報告。鉄道事業は2008年の利用者63,700万人をピークに2013年は62,000万人に減少しており、「生産人口の減少に対応するには、街の魅力を双方向メディアで発信したり、子育て支援のマンションや保育事業、さらには移動販売などを行ったりして、われわれが街に入っていくアウトリーチ型サービスを展開していく」と語った。

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トークセッション

 トークセッションでパネラーの太田誠一氏(東京都都市整備局多摩ニュータウン事業担当部)は、ポテンシャルが高い多摩ニュータウンのブランドを高めていくと語った。

 寺門文夫氏(UR都市機構東日本賃貸住宅本部エリアマネージャー)は、計画的な街づくりの魅力を若年層向けにアピールする取り組みや高齢者の住み替え支援も行っていく必要があると語った。

 加藤氏は、「親あるいは子世帯が入居するにあたって家族会議が復活した。アンケートを重ねるごとに広い専有面積を希望する人が増え、団地内同居や同じエリアに近居するケースも多い」などと、建て替えにより同居・近居が増加していることを報告した。

 南氏は、「多摩ニュータウンを知らない若者が多い。できることからやってみる『場づくり』『場育て』が大事。多摩ニュータウンには人材も揃っている。歯車を回す条件、仕組みを整えれば未来は非常に明るい」とエールを送った。

 阿部市長は、「大学はたくさんあるが、学生の居住は少ない。家賃が高いことと単身向けの住宅がないからだ。URは空き家家賃を抑え、スケルトン賃貸などを行い『アートな街』として情報発信してほしい」などと注文した。

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左から上野氏、西浦氏、太田氏、寺門氏 

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左から加藤氏、都村氏、南氏、阿部氏

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 これまでの多摩ニュータウン再生検討会議と今回のシンポで課題は出尽くし方向性も見えた。

 上野氏をはじめ出席者が異口同音に語った「豊富な緑」「歩車分離」の価値をどうアピールするかが大きなポイントになる。住宅内と街のバリア解消も喫緊の課題だ。建て替えだけでなくリノベーション、シェアハウス、スケルトンなどの選択肢もあることが明らかになった。「多摩ニュータウン」を知らない若者世代に情報を発信する必要性も強調された。

 シンポジウムに参加した市内の豊ヶ丘に住む60歳代の女性が「これまで見えなかったものが見えてきた」と感想を語ったように、収穫の多いシンポジウムになったはずだ。上野氏は「もうオールドタウンなどと呼ばせないようにしよう」と締めくくった。

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)

 

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