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2025/03/09(日) 09:48

自立と低自立の二重円構造くっきり 高齢者の住まいと暮らし ケアリングデザイン調査

投稿者:  牧田司

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小野氏(左)と阿久津氏

一般社団法人ケアリングデザイン(代表理事:小野由記子氏)は37日、2024年「100年人生 自立をかなえる住まいと暮らし」をテーマにした調査報告発表会&トークセッションを開催。小野氏がショッキングな調査結果を報告したほか、国内外のエイジングテックの第一人者である千葉大学医学部附属病院特任准教授・阿久津靖子氏がデンマークなどの先進的な取り組みを紹介し、小野氏と阿久津氏のトークセッションも行われた。

調査は、75歳以上の高齢者1,000人を対象に、外出習慣や生活動作など身体的機能6項目と、意思決定などの人生マインド8項目の回答を点数化し自立度を設定。調査の結果、自立度の高い「自立シニア」は39.0%の390人、「中自立シニア」は38.9%の389人、自立度の低い「低自立シニア」は22.1%の221人となった。

自立して暮らすことが難しくなった場合、すまいをどうするかの問いに対しては、自立シニアも低自立シニアも自宅に住み続けたいと回答した人は約70%に達した。

自立シニアは外出機会が多く、周囲とのコミュニケーションが活発で、有職者も2割。食事の準備、掃除や洗濯、お金の管理を自分で行い、外出に積極的であることを明らかにした。一方、低自立シニアは健康上の課題を抱えている人が4割程度に達し、外出頻度は33.0%(自立シニアは68.7%)と低い数値にとどまっていることが分かった。

自立シニアの考えや行動については、①自分の意見や行動に責任を持っている②人から指図されず自分で判断して行動する③自分の考えに自信を持っている④趣味や楽しみ、好きでやっていることがある⑤状況や他人の意見に流されないほう⑥何か夢中になれることがある⑦これからの人生に目的を持っている⑧何か人のためになることをしたい-と答えた人は89割に上った。他方で、非自立シニアは①②⑤以外は5割を割っている。⑦は19.0%、⑧は26.2%の結果になった。

自立シニアの住まいに関する考えでは、50%以上の人がポジティブな考えを持っている反面、低自立シニアは20%未満の回答となった。

住まいで大切だと思う点のトップ10を自立シニアと低自立シニアとで比較したところ、日当たり、風通しや湿度、くつろげる場所、機密性・断熱性、浴室・洗面所の室温。生活上十分な広さ、収納、安全な階段などすべての項目で自立シニアはほぼ6割の人が高い関心を示した一方で、低自立シニアは23割台にとどまり、ドーナツ状の二重円を描いた。

ありたい暮らしの実現度では、自立シニアは様々な項目で高い実現度に達している一方で、低自立シニアは低い数値にとどまり、「自宅に人を招く」は31.0%(自立シニアは75.1%)と大きな隔たりがみられる。

住まいの満足度と自立度は比例しており、幸福度については自立シニアは「高い」が28.7%(低自立は5.4%)、「ふつう」が56.4%(同43.9%)、「低い」が14.9%(同50.7%)と大きな差が出ている。

調査結果について小野氏は「心身共に健康な自立シニアは思い通りに生き生きと暮らしを楽しんでいることが分かった。100年人生を自立して幸福に過ごすために、暮らしを下支えする住まいのあり方について今後も調査していきたい」と語った。

調査は、公益財団法人日本財団の2024年度助成プログラムを受けて実施したもの。

小野氏に続いて登壇した阿久津氏は、国内外の高齢者政策を紹介し、わが国はデンマークなどの先進国と比べかなり遅れていると指摘。今後必要なのは、高齢者が自立して暮らす、テクノロジーと一緒に暮らすことが必要と強調した。エイジング・イン・プレイス(Aging in Place)があるかどうか、テクノロジーを活用するかどうかで経済格差、健康格差が広がると語った。具体的には、高齢者の「孤独」「移乗・移動」をサポートするかが重要であると指摘した。

一方で、高齢者の金融資産は増加し、スマートシティ、スマートホームが普及し、住宅メーカーの取り組みも加速し、最近の人は抵抗なくスマホ・アプリ、AIなどを自由に扱えるようになったプラス面での現状にも触れ、マンションの管理会社が日常的にサービスを提供する絶好のチャンスであり、今後は図書館やスーパー、薬局などで相談ができる仕組みを構築したいと語った。

阿久津氏は今後3年間、千葉大大学院で研究し、具体的な取り組みなどを提案するのだそうだ。

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会場(KARIMOKU RESEARCH CENTER)

        ◆     ◇

もうすぐ76歳になる記者は、調査結果が自立シニアと低自立シニアのドーナツ状の二重円構造を明らかにしたことにショックを受けた。住宅価格が上昇し、あらゆる面で分譲より劣る賃貸住宅の賃料も安くない現実を改めて突きつけられた。6割以上の高齢者が自立できない何らかの問題を抱えているということだ。〝お前は自立できているか〟と問われれば自信はない。

 社会全体が高齢者の居住環境の改善に取り組まないといけないことを痛感させられたセミナーだった。

小野由記子氏もハイブリッドキッチン提案 西武池袋本店「くらしのデザイン展2022(2022/3/21

 

 

 

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