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2014/01/29(水) 21:46

三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」

投稿者:  牧田司

 

⑭日本橋室町再生計画(空撮画像).jpg
「日本橋室町東地区」

 三井不動産は1月29日、中央区日本橋室町で複数の地権者とともに進めている5 街区にわたる大規模複合開発「日本橋室町東地区開発計画」の第2弾となる「室町古河三井ビルディング」と「室町ちばぎん三井ビルディング」を2014 年2 月1 日に竣工すると発表した。同日、菰田正信社長が記者会見し、約15分にわたって「日本橋再生」のコンセプトである「残しながら、甦らせながら、創っていく。」意気込みを語った。

 会見後、報道陣に公開された賃貸住宅「パークアクシスプレミア日本橋室町」、「室町ちばぎん三井ビルディング」とも設備仕様は〝億ション〟クラスだ。

 「室町古河三井ビルディング」は地下4階、地上22階建て延床面積約62,000㎡。地下1 ~6 階がシネコン含む商業施設「COREDO 室町2」、7~17階が事務所、18~21階が賃貸住宅。統括設計は日本設計。デザインアーキテクトは團紀彦建築設計事務所。施工は清水建設。共同建替え事業者は同社のほか古河機械金属、にんべん、日物、細井化学工業。事務所はアステラス製薬の入居が決まっている。

 「室町ちばぎん三井ビルディング」は地下4階、地上17階建て延床面積約29,000㎡。地下1~4 階が「COREDO 室町3」、8~16階が事務所。統括設計、デザインアーキテクトは「室町古河」と同じで、施工は清水建設・錢高組。共同建替え事業者は同社のほか千葉銀行、わかもと製薬、総武、三越伊勢丹、木屋ビルディング。ほぼ満室稼動が決まっている。

 会見に臨んだ菰田社長は、「グローバルな都市間競争を勝ち抜くには、街固有の歴史、文化、伝統を活かし、環境と共生した持続可能な街づくりが必要で、『残しながら、甦らせながら、創っていく。』というコンセプトを盛り込んだ。第2ステージを構成する4つのキーワードは『産業創造』『界隈創生』『地域共生』『水都再生』だ」などと語った。首都高速についても触れ、「高速を見直す機運は高まっている。日本橋川の清流を取り戻す取り組みは不可欠。2020年のオリンピックまでには(地下化などの)方向性を示してほしい」と述べた。 

④室町古河三井ビルディング外観.jpg  ⑨室町ちばぎん三井ビルディング外観.jpg
「室町古河三井ビルディング」(左)と「室町ちばぎん三井ビルディング」

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記者団の質問に答える菰田社長

◇       ◆     ◇

 会見場に集まった記者は百数十名で関係者を含めると二百数十名。会場はほぼ満席となった。

 規模的には海外メディアも多数駆けつけた「ミッドタウン」などには及ばないが、菰田社長自らプレゼンテーションを行い、「技」「心意気」「粋」「歴史」「文化」「江戸」「日本橋」「水」「風」「清流」などの単語が次から次へ飛び出したように、三菱地所が推進する「大・丸・有」や「六本木」とはまた違った街づくりが進められているのがよく分かった。

 二つのビルを一言で表するなら「和のエスプリを心憎いまで盛り込んだ、分譲マンションに例えれば億ション仕様」ということだ。

 双方のビルには100尺(31m)ラインが施されている。これは「大・丸・有」や同社のこれまでの「日本橋再生」ビルと同じだが、西洋建築に見られる回廊「ロッジア」、細かい細工が施された「淡路瓦」、「金色ルーバー装飾」などは見事というほかない。道行く人々は「上を向いて歩こう」になるはずだ。

 共用部分の「和」の演出もケタ違いだ。「室町ちばぎん」のエントランス・地下のホールには億ションにはよく見られる布クロスの「布団張り」が施されていた。桜の花びらをモチーフにした江戸千代紙のグラフィックで演出した光壁や突板のデザイン壁もあった。エレベータには「小津和紙」を張りこんだガラス壁が採用されていた。男子用のトイレも和風で、江戸小紋の型染めに使用されていた伊勢型紙のデザインがサインに採用されていた。

 非常時には3,000人が収容できるという「江戸桜地下歩道」は地権者が費用負担した公道となる(管理は中央区と国交省)。

 全54室の賃貸「パークアクシスプレミア日本橋室町」がまたいい。見学する前、仕様は賃貸仕様とそれほど変わらなくて、分譲にすれば坪単価は500万円かせいぜい600万円ぐらいと読んでいたが、見学するごとに評価が高まり、最後は坪750万円につりあがった。間違いなく億ション仕様だ。

 天井高は最大3m、家具付きモデルもある。ナラ材の突板を用いたナグリ仕上げの空間提案もあった。賃料は「ミッドタウン」と同じくらいの単価の40万~160万円(54~140㎡)。

⑩室町ちばぎん三井ビルディング外観(低層部金色ルーバー装飾).jpg  ⑪室町ちばぎん三井ビルオフィスロビー.jpg
「金色ルーバー装飾」(左)とオフィスエントランスホール

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100尺ライン部分の外観

◇       ◆     ◇

 菰田社長も強調したが、記者は「日本橋の再生」には日本橋川の再生が欠かせないし、それなくして総仕上げにはならないと思う。わが国だけでなく世界の都市は河口・湾口に立地し、発展してきた。ハドソン川(ニューヨーク)、テムズ川(ロンドン)、セーヌ川(パリ)の水質がどうなのか分からないが、菰田氏も「高速に蓋をされた川が死んでいる」と話した日本橋川を見るにつけ悲しくなる。

 ビルはみんな川に背を向けている。先日見学した、鴨川のほとりの「ザ・リッツ・カールトン京都」の客室の半分以上が川に向いていたのと対照的だ。鴨川の川岸から20mは軒高が12m、それ以外は15mの高さ規制があった。

 関係者の努力で日本橋川の再生は進んでおり、鯉や鮒が生息できるように改善されたとはいうが、川べりまで下りていきたくなるようにしないといけない。生きている間に、川で遊ぶ子どもや魚を釣る人の姿を見たいものだ。

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「パークアクシスプレミア日本橋室町」中庭

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モデルルーム(ナグリ仕上げの空間も提案されている)

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「室町ちばぎん三井ビルディング」エレベータホール(左)と共用部分

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「江戸桜地下歩道」

これでいいのか 川に背を向ける日本橋の街(2008/5/19)
 

 

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