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2023/06/09(金) 13:36

世界3代デザイン賞の一つ「iF デザインアワード」受賞 ポラス「我孫子」/志賀直哉

投稿者:  牧田司

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ifロゴ入り「リーズン我孫子 綴(つづり)のまち」

 ポラスグループの中央住宅は6月8日、世界3大デザイン賞の一つ「iF デザインアワード2023」(iF)の建築分野(住宅建築カテゴリー)で受賞した分譲戸建て「リーズン我孫子 綴(つづり)のまち」(全4棟)の街並みをメディアに公開した。iFを受賞するのはポラスグループもわが国の戸建て分譲も初の受賞。高いデザイン性(商品企画)が評価された。

 「iF デザインアワード(iF DESIGN AWARD)」は、1953年にドイツ・ハノーファーで誕生した世界で最も歴史の長いデザインアワードで、IDEA賞(アメリカ)、レッドドット・デザイン賞(ドイツ)と並び「世界3大デザイン賞」と呼ばれている。世界60か国から1万点を超える応募があり、iFロゴは優れたデザインの証として世界で広く認知されている。

 今年は1万件超の応募があり、約3,500件、うち建築分野では59件が受賞(わが国は27件)。住宅分野では、同社グループのほか永山祐子+永山祐子建築設計が受賞。昨年は隈研吾氏が受賞している。

 「リーズン我孫子 綴(つづり)のまち」は、JR我孫子駅から徒歩13分、千葉県我孫子市緑二丁目に位置する総開発面積約671㎡の全4戸。敷地面積140.31~196.90㎡、建物面積96.26~106.81㎡、価格は4,480万~4,980万円。販売開始は2021年7月で、同年10月に完売。竣工は2022年1月。地役権は、幅員6.1mの公道に面している1号棟は1.2㎡、敷地延長部分の2号棟は40.69㎡、3号棟は54.47㎡、4号棟は50.98㎡の合計147.34㎡。

 受賞した同社戸建分譲設計本部設計一部営業企画設計課参事・山下隆史氏、設計監理課主任・安川晃生氏、営業企画設計課係長・山﨑正吾氏はプレス・リリースで「我孫子市手賀沼周辺は、かつて『北の鎌倉』とも呼ばれる風光明媚な土地で、志賀直哉や武者小路実篤など数多くの文人が別荘を構えていました。この土地を取得した時、私たちが考えたのは、豊かな景観と文化性に富んだ土地の記憶を蘇らせ、この場所ならではの地域文化との関係に配慮した分譲地ができないかということです。区割りは、開発道路を囲んだ従来の区割りではなく、地役権を設定したうえで路地状部分の敷地を中央に集め、幅6mのコモン(庭小路)を創出しました。庭小路は、単なる車道ではなく住まい手の憩いの場所となる緑道空間であり、それを楽しむための縁側テラス・庭も設計し、それらが連なることで統一された我孫子の景観と一体となり、新しい風景を創り出しました」と語っている。

 山下氏は「以前から応募したいと思っていました。自信作ではありましたが、初の応募で受賞するとは思っていませんでした。Ifは差別性、デザイン性、影響力、アイデア、機能性の5角形のチャートで評価が数値化され、受賞・落選の理由が分かりやすくなっています。わが国のグッドデザイン賞のようなブラックボックスではないのがいい」と語った。

ロゴ入り写真③軽.jpg
ifロゴ入り「リーズン我孫子 綴(つづり)のまち」

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敷地境界を示す境界杭

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山下氏(左)と山崎氏

◇        ◆     ◇

 地役権を設定した分譲戸建てを同社グループはかなり供給している。先月見学した「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」は素晴らしく、記者は「わが国の○○賞を総なめにする」と書いたほどだ。

 建築基準法第43条「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない」規定に適合させるためのコモンは珍しいことではないが、今回の「我孫子」のようにわずか4戸の規模で、公道に面していない3戸を接道させるため幅2m×3戸=6m×奥行き24.5m=約147㎡の公開空地が確保されているのに驚いた。地型など敷地条件に問題のある土地でも宅地化を可能にし、付加価値を創出できることを証明したといえる。

 山下氏が語ったわが国の「賞はブラックボックス」は改めないといけないと思う。ウッドデザイン協会は、今年度から落選作品についてもその理由を知らせ、プレゼンなどについてアドバイスするという。また、キッズデザイン協議会は昨年からifと連携することを決定している。

◇        ◆     ◇

 現地の裏山、徒歩で2分くらいのところに、「小説の神様」と称された文豪・志賀直哉が大正4~13年(1915~1924)に住み、「城の崎にて」「小僧の神様」「暗夜行路」などを著した居宅跡地があるというので見学した。

 道路幅員4mくらい、どこにでもある住宅街の一角にそれはあった。敷地面積は約3,700㎡(当時は約5,000㎡)、今は公園として公開されている。

 入口にはクスノキ、イチョウの巨木があり、敷地全体は樹齢100年超の樹木で覆われていた。道路から1~2m上がったところに母屋があったことを示す案内があり、端っこに書斎・茶室として使われた「離れ」が移築されていた。

 自らが設計し、地元の宮大工が建てたのだそうだ。大きさは6畳間のほかにトイレなどもあるので4坪くらいか。屋根や壁は杉皮葺き・貼り、柱はサルスベリ、垂木は虫食いの杉材、床柱はアオギリ(河東碧梧桐はこれから俳号をとったのか)、天井は舟形の網代組…志賀直哉は相当の風流人だったようだ。

 母屋の正面に名前の知らない年寄りのように幹が曲がった大木があった。丁度、地元の「長寿大学」の講師で我孫子市史研究センター副会長・荒井茂男氏が大勢の受講者を相手に説明されていたので聞いた。樹木は「エノキ」だそうで、志賀直哉はよく登ったのだそうだ。(登ったから腰が曲がったのではないだろう)。

 グリコのように2度おいしい取材ができた。

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志賀直哉が書斎・茶室として利用した「離れ」

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6畳間(床柱はアオギリ)

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虫食いの杉の垂木とこだわりのサルスベリの柱(と呼ぶのか、単なる意匠か)

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杉皮貼の壁

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志賀直哉が登ったエノキの巨木

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志賀直哉居宅跡地を観察する「長寿大学」の皆さん

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