ポラスグループ中央住宅は12月3日、近代建築家・木下益治郎が手がけた昭和初期の農園別荘(旧邸宅)の意匠デザインなどを引き継ぎ、敷地内にあった樹齢約100年(記者の推定)のイロハモミジを住戸の商品企画に取り込んだ「マインドスクェア ヘリテージ光が丘 つむぎのまち」(全9戸)の販売が好調と発表。同日、報道陣に現場を公開した。
物件は、都営大江戸線光が丘駅から徒歩19分、練馬区旭町1丁目に位置する全9戸。土地面積は100.00~128.32㎡、建物面積89.25~103.27㎡、価格5,990万~7,590万円、平均6,723万円。建物は木造2×6工法2階建て。建物は竣工済み。
主な基本性能・設備仕様は、2×6工法、リビング天井高2.7m、スキップDEN(ワークスペース)、ウイルス除去効果がある「可視光線型光触媒」床、珪藻土塗壁、シダーパネル「木もれ美」壁、つむぎケーシング、スピーカー付きダウンライトなど。
9月19日に広告を10月10日に販売をそれぞれ開始。これまで148件の反響を集め9戸のうち8戸を成約。購入者の平均年齢は41歳、世帯年収は1,000万円前後。
旧邸宅は、三菱財閥創業者・岩崎弥太郎の姻族である各務鎌吉が昭和8年に建設した敷地面積約1,000㎡、延べ床面積423㎡。アメリカン・アール・デコ様式の設計を得意としていた近代建築家・木下益次郎が設計を担当した。
同社は昨年末建物ごと用地を取得。屋敷に刻まれた歴史と記憶を後世につなげる商品企画にするため解体を3週間延期し様々な調査を行うとともに、旧所有者の親族縁者や郷土史家研究者などを招き、神職による棟下式(むねおろしき:建物への、感謝とお別れの儀式)を実施した。
商品企画には、邸宅にあった樹齢約100年のイロハモミジをそのまま残し、旧邸宅の石畳などの古材も配置した小庭園「槭樹(もみじ)の間」「道しるべの小径」(60.17㎡)として整備。「槭樹(もみじ)の間」「道しるべの小径」に面する5戸の敷地の一部に地役権を設定し、共同で管理するように定めている。3年間はポラスが剪定費を負担する。
さらに、旧邸宅の格式、佇まいを記憶として残すため、特徴的だったいぶし瓦の屋根をモダンな和瓦で表現し、縦格子、丸窓、造作門柱などを採用。天然銘木のフローリング床には、室内照明が当たるだけでカビやウイルス、VOCなどを水や炭酸ガスに分解・除去する「可視光線型光触媒」を、玄関ホールに抗アレルゲン壁紙「アレルブロック」を、玄関手すりには抗ウイルス機能ビオタスクをそれぞれ採用している。
見学会に臨んだ同社マインドスクェア事業部取締役事業部長・金児正治氏は「一般的な分譲事業は回転率を高めスピードを重視するが、今回の既存建物は使われている材料、仕上げ、デザインなど普通ではなかったので、解体を3週間延ばし、歴史をたどりそれを残していく企画にした。同時に安心・安全を担保するためストレスフリーの床、壁材などを採用することでプラスアルファの価値を実現した。販売も好調なので、今後は当社の最上位モデルとしてこの〝ヘリテージ〟をマンション、複合開発に採用していく。用地取得でも優位に立てる」などと差別化に自信を見せた。
販売担当の同部東京西営業所所長・金井秀徳氏は、「周辺相場の5,000万円の半ばから後半よりかなり高い価格設定でも他社にない2.7mのリビング天井高、2×6工法、設備仕様レベルが評価された。ムービーパンフを採用することで接客時間の短縮もできた」と話し、プロジェクトリーダーの山口太郎氏は、建物調査で見つかった「棟札」や手斧(ちょうな)仕上げの面材を示しながらコンセプトなどについて熱く語った。
同社はまた、今期4~11月までの分譲戸建ての契約棟数は前年同期比126%と好調に推移していることを明らかにした。2019年に分譲した戸建ての残戸数は10戸程度とのことだ。
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コロナ禍での同社の分譲マンション・戸建てメディア向け見学会は今回で4回目だ。他のハウスメーカー・デベロッパーはほとんど行っていないので、同社が独走している。
小生は、ハウスメーカー・デベロッパーは記者を育てる役割を担っており、記者は現場(商品)を観ないと成長できないと思っているので、同社の決断を支持する。
今回も見どころの多い見学会だった。正味は1時間半だったが、記者は取材の帰り、光が丘公園を歩き、あれやこれや見て回ったので都合3時間くらい掛けた。
光が丘の戸建てと言えば、金児氏がこの日「うちが(入札に)負けた土地」と明かしたコスモスイニシアが4年前に分譲し、人気になった光が丘公園に近接する「グランフォーラム光が丘公園」(16戸)を真っ先に思い出す。
今回の物件は、光が丘公園に近接していたコスモスイニシアの物件と立地条件は若干異なるが、設備仕様レベルなどを考慮すれば価格は割安感があると思う。
モミジの既存樹を商品企画に取り込んだのもヒットした要因の一つだろう。モミジは「あと100年は持つ」とのモミジ専門の川口市安行の植木屋さんのお墨付きを得ているという、樹高にして7~8メートルくらいの巨木だ。
マンションや大規模戸建て開発では、既存樹をそのまま残し、あるいは移植しシンボルツリーとする事例が少なくないが、10戸くらいの規模で約60㎡の植樹帯を設け、企画に反映させたものは三井不動産レジデンシャルの〝ファインコート〟にいくつかあるくらいではないか。
その三井不動産は〝経年優化〟を積水ハウスは〝経年美化〟をそれぞれ掲げている。山万は〝千年優都〟だ。そしてまたポラスの〝ヘリテージ(遺産)〟が誕生した。半端でない取り組みが消費者に響くのだろう。
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