中央住宅、高砂建設、アキュラホームの3社は4月16日、次世代自動車・スマートエネルギー特区スマートホーム・コミュニティ先導的モデル街区の戸建分譲プロジェクト「浦和美園E-フォレスト」の1~3街区すべてが完成したのに伴う街開きイベント・見学会を開催した。3社の代表者をはじめ清水勇人さいたま市長、自治会代表、埼玉高速鉄道・荻野洋社長なども参加し、7年間にわたる事業の完成を祝った。参加者は300人くらいに上った模様だ。
「浦和美園E-フォレスト」は、2012年に地域活性化特区として総理大臣認定を受けスタート。2016年、市のコンペで3社の共同提案が採択された。第1期「つなぐ庭の街区」33区画は同年10月、第2期「コネクテッド サイト」45区画は2019年4月、第3期「GARDEN-site」51区画は2021年5月にそれぞれ販売開始された。合計129区画の事業者別内訳は中央住宅が91区画、高砂建設が24区画、アキュラホームが14区画。土地面積は150㎡以上で、建物面積は100㎡前後、価格は5,000万円台半ばが中心だった。分散型エネルギーシステムの構築にはLooopが事業参画している。
環境負荷の軽減・エネルギーセキュリティの確保の取り組みでは、民地を活用した電線・通信線の地下化、HEAT20グレードを満たす高断熱・高気密の仕様、再生可能エネルギー(太陽光発電設備)を採用し、地域コミュニティの醸成では、相互に地役権を設定した敷地拠出型コモンスペースの創出、コミュニティ支援活動、雨水の再利用、果樹・家庭菜園による「フード&グリーン」の構築などを行っている。
今回の第3期では、敷地のシェア・エネルギーシェア・チャージエリアを整備し、街区内の電力を実質再生可能エネルギー100%、街区内再エネ自家消費率60%超達成などが評価され、環境省の2021年「脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業」に採択されている。
イベントは午前10時、11歳のストリートピアノ奏者・そうちゃんの演奏を合図にスタート。主催者の中央住宅・品川典久社長は「2016年の分譲開始から7年。先導的プロジェクトが完成した。地球温暖化防止は待ったなし。これからの街づくりのスタンダードになる」と挨拶。高砂建設・風間健社長は「官民が一体となった最先端の街が完成した。今の時代にピッタリ。今後も同様の取り組みを行っていきたい」と述べた。アキュラホーム・宮沢俊哉社長は「販売当初は認知度がいま一つだったが、3期目は大人気で、ほとんど即日完売」と語った。
来賓として出席した清水市長は「さいたま市は人口転入が日本一で、浦和美園はその中でももっとも人口が増えている。今後も豊かに暮らせるスマートな街づくりを全力で取り組んでいく」と挨拶。Looop・中村創一郎社長は「画期的なシステムが完成した。このような取り組みを日本全国に広げたい」と語った。
浦和美園E-フォレスト・上島啓司自治会副会長は「3年前に引っ越してきた。子どもも含め大変快適に過ごしている」と話した。地元選出の内閣総理大臣補佐官・村井英樹議員は「この地区では10年間に小学校が2つ、中学校が1つ誕生した。全国一元気な街」と称えた。埼玉高速鉄道・荻野洋社長は「鉄道の岩槻までの延伸も決まった。東京メトロ南北線の品川駅までの乗り入れ計画もあり、埼玉高速のイメージは変わる」と語った。
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万年筆のインクが切れたため、前段の登壇した8氏のコメントはよくメモできなかった。申し訳ないというほかないが、端折るわけにもいかず登壇順に全て紹介した。趣旨は間違っていないはずだ。
そんな各氏のコメントを100人超の子どもを含めた約300名の参加者がどう受け止めたかはわからないが、セレモニー後に行われた見学会での、入居してから1か月くらいの2人の居住者の声が街づくりの全てを物語っている。
都内から引っ越してきたという30代の小嶋さんは「コロナ禍で自宅で仕事ができるようになり、住環境のいいところを探していた。街は開放感があって子どもを伸び伸び育てることができる。引っ越ししてきてよかった」と語った。
埼玉県人の20代の篠﨑さんは「この街のことはよく知らなかった。電柱もないので夜帰ったとき大丈夫かと不安も感じたが、そんなことはなかった(「灯りのいえなみ協定」により夜間はLED照明でライトアップされる)。街は明るくてきれい。周囲の方から挨拶もされるので、これからのコミュニティづくりが楽しみ」と話した。
記者は二人にエアコンについて質問した。小嶋さんは「エアコンは1台。21~22度に設定しているが、浴室も14度以下に下がることはない」と話し、篠﨑さんも「エアコンは1階と2階にあるが、1階しか使っていない」と語った。
街づくりについては、これまで3~4度取材しているので、その記事を参照していただきたい。これほど素晴らしい戸建て開発地は他にないと断言できる。結果として「日本一の街」が実現したと評価したい。
ひとつだけ付け加えるとすれば、宮沢社長が「分譲当初は認知度が低く、販売にも苦労した」と話したことについて。これは、浦和美園駅は「イオンモール浦和美園」へ徒歩6分、「埼玉スタジアム」まで徒歩15分と中途半端な位置にあり、駅前の商業施設などの整備が進んでいないことに起因すると思う。そして「次世代自動車・スマートエネルギー特区スマートホーム・コミュニティ先導的モデル街区」などといかにもお役所的な長ったらしいプロジェクト名称にも問題がある。プロジェクト発表会の記事も添付した。
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