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2024/04/22(月) 23:45

「木は熟した」 街並みを木造化するビルダー組織化へ AQ Group新社屋は坪145万円

投稿者:  牧田司

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AQ Group新社屋

 AQ Groupは4月22日、わが国初の8階建て純木造の新社屋が完成したのに伴う完成発表会を行った。新社屋は埼玉県さいたま市西区に完成した8階建て延べ床面積約6,076㎡で、市場に流通している木造プレカット材を使用し、わが国の伝統的な組子・格子ザインを構造壁に取り込み、特殊金物を用いず、一般の工務店でも施工できる「普及型純木造ビル」としているのが特徴。発表会はメディア向けを含め三部構成で230人超が詰めかけた。同社・宮沢俊哉社長は「いよいよ木は熟した。5月にはフォレストビルダーを立ち上げ、全国の街並みの木造化を復活させる」と語った。

 宮沢社長は、木造ビルを開発するきっかけとなった木造耐力壁研究の第一人者であるホルツストラ・稲山正弘氏(前東京大学大学院教授)との付き合いは20年に及ぶと紹介し、その後の2014年の埼玉北支店、2017年のつくば支店、2018年の港北展示場、2022年の川崎展示場などにつながったことなどを話し、「先生から『やってみないとわからない』と言われながら何度も失敗、実証実験を繰り返し、モジュール化やグリッド化を図り、『普及型純木造ビル』として今回の新社屋が完成した。今後は5階建て以下の非木造の16兆円市場に参入するため、5月には全国のビルダーに呼びかけ、フォレストビルダー組織を立ち上げる」などと語った。具体的案件としてさいたま市、赤羽、東陽町、墨田区などで計画を進めていることも明らかにした。

 続いて登壇したゲストのアルセッド建築研究所・三井所清典氏(第10代日本建築士会連合会会長)は、「新社屋の施工期間が17か月というのもすごいが、その前の9か月の間に宮沢さんと稲山さんがタッグを組んで技術開発などを行ったのが驚異的だ。それをやってのけたのは天才肌のお二人の熱い思いだ。国産材の利用率は36.6%と聞いているが、目標とすべき50%は実現できる」などと絶賛した。

 新社屋ビルは、JR大宮駅からバス約15分、さいたま市西区三橋5丁目に位置する敷地面積約9,000㎡(約2,700坪)、延床面積約6,076㎡。基本・実施設計は野沢正光建築工房。構造設計はホルツストラ。施工は田中工務店、伊佐建設。着工は2022年9月。今年4月に完成。

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宮沢氏(左)三井所氏

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 木造ファンの記者は、これまで木造マンション・ビル、木質化空間はかなり見学取材している。みんな素晴らしい。いくつか記事を添付する。

 今回の同社の新社屋の何が素晴らしいかといえば、宮沢氏や稲山氏、三井所氏が強調したように、特殊技術を用いずに普通の工務店の技術で木造現しを実現できることを証明したことだ。たくさん写真に収め、同社提供の写真も紹介するので見ていただきたい。

 見学会で一つ気になったことがある。外観デザインについてだ。全体としてモノトーンとして統一されており、ビルの特徴である組子格子デザインがガラス越しに透けて見える。曇天のこの日は風景にすっかりなじんでいた。

 しかし、記者は水平ラインか縦マリオンなどにアクセントとして目を引くデザインを施してもよかったのではと思う。記者は黒と白の喪服(特に女性)が最高に美しいと思うのだが、これはわが国の文化をよく表しており、うなじや裾からのぞく白でも黒でもない褐色の肌を際立たせるからだ。

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「これは埼玉県産材のヒノキ(左)。この組子格子耐力壁はカラマツで、光と風を取り込める(中)。住宅用の耐力壁の14倍の強度を持つが、特殊な金物など使わずビスで止めている。わが国の伝統的な木組みの技によって実現した(右)」などと語る稲山氏

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 この種の見学会ではよくあるアンケート用紙が見学時に配布された。設問は、「今回の『新社屋』(はどれ)くらいの価値があるか 坪単価で答えていただきたい」という1項目のみだった。

 これには驚いた。マンション坪単価だったら自信がある。最近では三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスの「三田ガーデンヒルズ」の坪単価を分譲開始の1年半前に1,300万円と予想しズバリ的中させたし、2018年分譲の三井不動産「MID TOWER GRAND」の430万円(実際は434万円)、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」の坪単価800万円も的中させている。外すのは2割くらいか。

 しかし、賃貸オフィスは全くわからない。白紙にすることも考えたが、宮沢社長は「アンケートに回答していただいた後に、実際はいくらだったかお知らせしますので、ご協力ください」と呼び掛けたので、回答することにした。

 多くのメディア・関係者が坪単価200万円前後と答えるだろうと宮沢社長は考えているはずなので、「坪単価200万円」と書こうと思ったのだが、木造の価値-CO2の大幅削減とかストレスがたまらない労働環境、一般に流通している資材をそのまま活用し、普通の工務店が施工できる価値などを総合的に判断すると「金額では測れない価値がある」と回答した。

※この日、発表会後に配布されたニュース・リリースには施工単価も記されているのだが、解禁日は4月23日午前11時となっているので、明日以降に価格を発表する(記者は的中したのか大外れなのか)。⇒ニュース・リリースには「純木造8階建て新社屋の炭素貯蔵量は1,444t-CO2で、一般木造住宅に換算すると95棟分。CO2排出量削減に至っては鉄筋コンクリート造と比較すると43%削減。普及に向けて大きな課題としてあげられた建築費が、このプロトタイプの純木造8階建てAQ Group本社ビルは坪145万円で、大手ゼネコンによる先導的な木造ビルに比べると1/2。鉄骨鉄筋コンクリート造の約3/4と大幅に建築費を抑えられることを実証した」とある。

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 われわれメディアもそうだが宮沢社長、これからは坪単価を図るモノサシを変えようではありませんか。これまでのモノサシは鉄やコンクリが基本にあり、木造を鉄やコンクリの土俵に上がらせ、〝火に弱い〟〝地震に弱い〟などの〝弱点〟に対して木造派は〝価格が安い〟ことを強調してきた。

 これはもう時代遅れだ。それぞれが他にない特徴を持っている。先に書いたように単なるコストだけでは測れない価値を価格に換算する手法を編み出さないといけない。

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