RBA OFFICIAL
 
2013/12/15(日) 14:56

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のサービス料を考える

投稿者:  牧田司

 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の「サービス」とは何か、その「お・も・て・な・し」を金額に換算したらいくらかについて考えてみた。

 そもそも、高齢者福祉行政については「特別擁護老人ホーム」「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」にも共通するように「特別」「有料」「サービス付き」などといった文言が枕詞として使用されているのかよく分からない。これは基本的には行政が高齢者の福祉や居住について「公的責任」を負い、行政の権限で「特別」に措置したり「有料」で住宅を供給したり、あるいは「サービス」を提供したりという権能を持つという意味が込められているように感じるのだが、この点はさて置くとする。

 サ高住の入居費用は「家賃」「共益費」「サービス費」の3つで構成されている。家賃は、一般的な賃貸住宅と同じようにいわゆる相場が基本となり、広さや設備仕様などによって異なってくる。高齢者住宅財団(財団)の調査研究によると、全国の全住戸(65,647 戸)の平均家賃額は64,178 円となっている。

 共益費は、主に賃貸住宅の食堂、ラウンジ、浴室など共用部分の維持・管理に充てられる費用で、財団によれば全国平均では18,470 円となっている。

 さて問題の「サービス」。サ高住について定めた「高齢者の居住の安定確保に関する法律」によれば、サ高住は、①状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービス)②生活相談サービス(入居者が日常生活を支障なく営むことができるようにするために入居者からの相談に応じ必要な助言を行うサービス)③その他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供する-ことが必須要件となっている。

 財団によれば、状況把握・生活相談費用の全国平均額は19,479 円(0円を除く)で、「兼務が多く有資格も様々であるうえに、単体で収益をみるのではなく家賃や介護保険事業などを組み合わせて収益のバランスをとる場合があり、その費用の根拠は利用者からみると分かりにくいとの指摘がある」「費用が『0円』という物件も地方に行くに従い多くなる傾向がみられた」とある。

◇     ◆   ◇

 記者が注目したのは財団が指摘している「費用の根拠は利用者からみると分かりにくい」という一点だ。ホテル・旅館、飲食店などで「サービス料」として一律に10%徴収するのもよく分からないし、サービスが必須のサ高住でサービス料がゼロ円というのも解せない。

 サ高住における基礎的なサービスとは、状況把握・生活相談のほか、緊急時対応、アクティビティ、健康管理、フロントサービス、服薬管理、シャトル便・送迎、入浴、介護、洗濯・掃除、付き添い、配膳など多岐にわたっており、オプションとして食事、掃除・洗濯、付き添い、健康管理、買い物の代行、介護サービス保険外の自費支援サービスなどとしているところが多い。付き添いや健康管理などは基礎的サービスに含めたりオプションにしたりと事業主によりまちまちである実態も分かる。

 つまり、サービスとは何かを明快に示しているものはないということが分かる。

 しかし、それでいいのだろうか。例えが適当かどうか分からないが、「サービス」「ホスピタリティ」「おもてなし」の単語に記者はリッツ・カールトンに反応する。2007年3月30日に「東京ミッドタウン」に開業した「ザ・リッツ・カールトン東京」で究極の「おもてなし」を体験したからだ。

 宿泊体験記には次のように書いた。「翌日昼ごろにも、感動的なもてなしを受けた。タバコを吸いたくなったので、ロビーで『タバコを吸う場所は外しかありませんか』と聞いたところ、『バーなら結構ですので、よろしかったらどうぞ』とスタッフが応えた。内心、真っ昼間から1杯2000円以上もするワインを飲まなきゃならないのかと思ったが、飲み物はオーダーしなくてもいいと言われた。こんなサービスをするホテル・旅館は日本中のどこを捜してもないだろうと思った(中略)ロビーからは生演奏のクラシック音楽が流れてきた」

 これが本物のおもてなしだ。富裕層なら間違いなくバーラウンジでビールなりワインなり飲んだはずだ。ホテルマンはプロだ。記者が富裕層でないのは一見して分かる。お金持ちにも貧乏人にも平等に対応してくれたスタッフに感動したのだ。タバコ1本吸うのに記者は数千円(もっとかも)の価値を見いだした。

 ホテルでは、リッツと対抗するマンダリン東京でも驚くべき対応を経験している。リッツが開業する約1カ月前だった。そのときの記事にはこう書いた。「宴もたけなわのころ、記者はワインを注文しようとカウンターに近寄った。そのとき、グラスが倒れ、ワインが記者のスーツにかかった。スタッフがすっ飛んできて『大丈夫ですか、失礼しました』とタオルでぬぐってくれた。むっとした記者は『大丈夫じゃない』と応えた。しかし、怒りは数秒で収まった。

 (中略)瞬時に考えたのは『マンダリンはこういうときどういう対応をするのだろうか』だった。ホスピタリティではリッツ・カールトンがライバルという同社の対応を体験するには絶好の機会だと思ったのだ。

 (中略)バンケットオペレーションズマネージャー氏がすぐ駆けつけてきて、丁重にお詫びを言ってくれた。ここまではどこのホテルでもやることだろう。次の言葉には、記者も驚いた。『「別室で着替えていただいても結構なのですが、着替えをお持ちでないでしょうから、ご自宅までうかがいます。クリーニングさせていただきます』とマネージャー氏が言ったのだ」

 この2つの世界的なホテルは、ホスピタリティはどうあるべきかを教えてくれる。サ高住だって基本的には同じだ。入居者が感動するようなザ―ビスを提供すれば、トラブルなど発生しないはずだし、室の高さは瞬く間に広がるはずだ。そうなれば高額のサービス料金も可能になる。

 質の高いサービスを提供するには大きな課題もあるように思う。サ高住を含めた医療・介護従事者の待遇改善だ。リッツ・カールトンは宿泊客を「淑女・紳士」と呼ぶ一方で、スタッフも「淑女・紳士」として処遇するようクレドで謳っている。医療・介護に従事するスタッフもまたそのように遇されないと高いホスピタリティは実現しないのではないか。現場のスタッフが「これは基礎のサービス」「これはオプション」などと説明することは大事だが、本来はそのような区別なしに入居者のために働くのがサービスではないか。

 サ高住の退去理由の4分の1は「入居者の死亡」だという。終の棲家で最高の「お・も・て・な・し」を受けられるようなサ高住を願うばかりだ。〝地獄の沙汰も金次第〟にならないよう国も支援すべきだ。

比類なきホスピタリティの高さリッツ・カールトン 記者も初体験(2007/4/2)

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン