不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)は1月8日、恒例の合同新年賀詞交歓会を開いた。アベノミクス効果で経済が上げ潮にあることから参加者からは威勢のいい声ばかりで、消費税率のアップを懸念する声はほとんど聞かれなかった。
冒頭挨拶に立った不動産協会理事長・木村惠司氏(三菱地所会長)は、「アベノミクス効果は雇用や株価、経済に波及し順調に推移している。消費税率が8%に上昇することは多少の懸念材料ではあるが、デフレを脱却し成長軌道を描く成長戦略を築かなければならない。マンション市況は好調だし、オフィスの空室率も下げ基調に向かう。建築費の上昇問題はあるが、ことに当たっては時に大胆に時に慎重に対応し、国民生活の向上と経済成長に貢献しよう」と呼びかけた。
乾杯の音頭を取った不動産流通経営協会理事長・竹井英久氏(三井不動産リアルティ社長)は、「買い取り再販事業やローン減税など流通市場の活性化に力強い支援策が講じられた。今年は景気回復が実感できる年にしたい」「高度化、多様化、複雑化しているお客様のニーズに対応する流通システムを構築し、流通市場活性化政策に応え内需拡大につなげよう」と挨拶した。
来賓としてあいさつした太田昭宏国交相は、「今年は心のデフレを打ち破り、景気回復が実感できる年にするとともに、2020年ではなくさらに先の2050年の未来を指向して街づくりを進める。皆さんと一緒になってそのエンジン役を果たしていく」と語った。
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以下、今年の抱負などについて参加者の声を紹介する。(順不同)
三菱地所社長・杉山博孝氏 年末年始の商業施設は大変な賑わいを見せた。今年は一言でいえば「イノベーション」。今までの停滞していた流れを突き破る勢いのある年にする
コスモスイニシア社長・高木嘉幸氏 生活者が経済成長を実感できる年にしなければならないし、持続可能な企業としての足がかりの年にしたい
ナイス社長・平田恒一郎氏 建築費の上昇、職人不足の問題はあるが、わくわくするような活気ある年にしたい
三井不動産顧問・松本光弘氏 失われた20年を取戻し、向こう20年に向けた成長戦略を描くためにも今年はもっとも重要な年になる
野村不動産ホールディングス社長・中井加明三氏 マーケットがよくなるのは間違いない。一方で建築費の上昇をどう抑え、企業努力で吸収するかが大きな課題だが、それを行うのが私に与えられたミッションだと思う
野村不動産ホールディングス副社長・松本聖二氏 ことしもガンガン行きますよ(松本氏が弱音を吐いたのを聞いたことがない)
総合地所専務・長谷川治氏 わが社の持ち味である商品企画力を生かし、大手のすき間を狙っていく
日神不動産会長(全国住宅産業協会理事長)・神山和郎氏 4月以降よくなるとみている。経団連もサラリーマンのベースアップを後押ししているように、所得が上がるとみているからだ。当社? 検討中だ(リーマンショック後、会員会社の破たんが相次ぎ、いつも慎重な構えの神山氏が久々に前向き発言をした)
三井不動産取締役・飯野健司氏 アップワード(upward)、つまり上昇あるのみ
明和地所専務・藤縄利勝氏 前進あるのみ。マンションの売れ行きはいい。建築費の上昇懸念はあるが、ゼネコンと仲良くなるのがヒント
オープンハウス社長・荒井正昭氏 さらに成長する年にする。可能性? もちろん十分ある(東証上場2年目。真価が問われる)
オープンハウス・ディベロップメント社長・福岡良介氏 マンション、戸建てとも量的拡大を目指す。マンションは建築費の上昇で仕入れが難しくなってきたが、1~3月で巻き返す
山万常務・林新二郎氏 オリンピック開催の2020年に向け、日本の街づくりのプロトタイプを世界向け発信していくた第一歩としたい。今年は大学の誘致も実現しそう(ご存じ「ユーカリが丘」で〝奇跡の街〟を造りつつあるデベロッパー)
安田不動産常務・岡光真従氏 賃貸事業では賃料上昇に期待したいが、テナントさんに無理強いするようなことは避けなければならない。建築費は10年タームで考えることも必要
オークラヤ住宅会長・上田順三氏 リーマンショック後、かなりプレイヤーが減少したが戻りつつある。景気上昇の波に乗り裾野を広げたい。長期スパンで体制づくりを進める必要もある
住友林業執行役員・町野良治氏 今年は国産材の活用を図るのが喫緊の課題だし、森林・林業の再生のためにリーダーシップを取る。それが我々の使命だ。中長期的には世界に視野を広げて山林所有を増やし、わが国の山林王になるのが夢(わが国4番目の山持ち企業。トップの王子製紙の760万haに対して同社は約4.2万ha。かなり水をあけられているが目標は大きい)
大京社長・山口陽氏 50周年を迎える今年は感謝の気持ちと誇りを胸に「お客さま第一主義」の精神を再認識し、様々な場面や事業で選び続けていただける「新しい大京グループ」をつくりあげていく
長谷工コーポレーション社長・大栗育夫氏 建築費? 上がますよ。施主さんと造り方などをよく相談して工事費を抑制するよう考えていきたい
長谷工コーポレーション副社長・辻範明氏 第一次取得層向けの低価格マンションの供給が難しくなってきた。地価と建築費が上昇し、売り値も上がってきた。(記者の出身県、三重の三交不動産さんをよろしく)うん、三交さんはずっと以前からのお付き合い(これからデベロッパーの長谷工詣でが激化するはず)