横浜市「既存住宅のエコリノベーション事業」現場見学会
横浜市とナイスは2月1日、「既存住宅のエコリノベーション事業」の最優秀賞に選ばれた2件のうちの一つである分譲マンションの施工現場見学会を行なった。50人を超える見学者が訪れた。
同事業は、既存住宅を建て替えずに環境性能や利便性を高めることで生活様式や家族構成の変化に合わせた民間のリノベーション事業の普及と活性化を狙いとしたもので、公募選定委員会(委員長:岩村和夫東京都市大学教授)の審査を経て戸建てとマンションの2件が「最優秀賞」として選定された。マンションは断熱、日射遮蔽、通風などの工夫に加え、土間空間やHEMSの活用などで高齢者の入居にも対応できるソフトの提案が評価された。
公開されたマンションは、横浜市営地下鉄高島町駅から徒歩1分、横浜市西区に位置する平成13年2月に建設された11階建て「藤和シティホームズ桜木町」の1室。専有面積は約51㎡。設計を担当したのはナイス。
テーマは「『ライフスタイル』はアクティブに!『住まい方スタイル』はパッシブに!」。アクティブデザインでは厳寒に多目的に利用できる5畳大の土間空間を設置し、再流通にも対応できるよう遮音性に工夫を凝らしている。省エネについては高効率給湯器、六面断熱、インナーサッシなどを採用。自然の力を取り込む手法としては、グリーンカーテン、珪藻土、調湿機能付きのナグリ仕上げのスギパネル、フローリングを採用。施工費は約700万円。工事費の3分の1、または最大200万円が補助される。所有者の横浜地所は賃借する予定だという。
見学会に出席した横浜市建築局住宅部住宅計画課長・黒田浩氏は、「横浜市は平成23年に『環境未来都市・横浜』として国から選定され様々なプロジェクトに 取り組んでいるが、家庭部門の温室効果ガスの排出量を減らすのも大きな課題の一つ。今回の事業はエコの機能だけでなく利便性の向上を図るもので、結果を検 証して今後の事業に生かしたい」と語った。
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従前は直床・直天だったのを二重床・二重天井にしたため、天井高は2475ミリから2310ミリ前後になっているが、レベルの高いリノベーションマンションだ。
特筆できるのは開口部のサッシの断熱性を飛躍的に高めたことだ。開口部の断熱性を計るモノサシとして熱還流率(U値、数値が低いほど性能が高い)が採用されているが、既存のアルミサッシ単板ガラスでは6.51のU値しかないものをインナーサッシとウィンドウフィルムを採用することで次世代省エネ基準2.33以下に抑えている。
サッシは共用部分であるため、性能の高いサッシに取り替えるには管理組合の承認が必要だが、今回は専有部分の改修であるたる組合の承認なしで施工できたという。施工を担当したナイス事業開発本部部長・高瀬裕司氏は「インナーサッシを採用するケースは結構ある」と話した。
もう一つは土間空間の提案だ。この種の提案は最近のマンションにも採用されているが、自らの趣味はもちろん、入居者や地域住民との交流を促す仕掛けとして有効だと思う。