RBA OFFICIAL
 
2014/03/01(土) 17:28

国土交通省 個人住宅の流通促進にガイドライン示す

投稿者:  牧田司

IMG_4921.JPG
「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」

 国土交通省は2月28日、第5回目の「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を開き、「報告書(案)」を取りまとめた。

 「検討会」は、全国の空き家が約760万戸(平成20年)に及び、そのうち個人住宅が約270万戸を占め、防犯・防災・衛生・景観など環境面でも地域の大きな問題となっていることから、質の高い既存の住宅ストックを活用した賃貸流通や住み替えの促進を図るため、所有者、利用者、関係事業者、行政などの当事者に向けて、先進的な取り組み事業や契約の枠組み(ガイドライン)を整備する方策を検討するもの。

 「報告書(案)」では、一定水準の賃料を得られる都市型と、賃料水準の低い所有者が修繕などの負担を追わずに、貸主が自費で模様替えなどができるDIY型の3パターンが示された。

 また、当然のことながら、「単に住宅の視点のみならず、子育てや雇用、福祉等の公共サービスを含め、総合的な地域経営の観点から、地域の活性化に取り組むことが求められる」ともしている。

◇       ◆     ◇

 住宅数が世帯数を上回ったと発表されたのは昭和48年だ。その後、空き家は一貫して増え続け、平成10年には10%を超えた。記者は賃貸経営は疎いが、空き家率が10%を超え、その後も増え続けるとすればやがて経営は成り立たなくなり破たんするのは目に見えている。平成20年の賃貸住宅の空き家率は18.8%というから危機的な状況にあるのだろう。

◇       ◆     ◇

 「検討会」では、不動産業界の代表側から「物件が出てこない」という声が聞かれた。記者はわが耳を疑った。全国に760万戸も空き家があるのに、どうして民間の不動産業者に物件が出てこない=流通しないのか。そんなはずはない。

 「物件が出てこない」のではなく、不動産業者に空き家を流通させる能力、ノウハウがないのだと思う。外国人居住を増やそうというのが国策である現在、いまだに戦前の商行為「礼金」を、「KARAOKE」「TENPURA」「TSUNAMI」のようにそのまま「REIKIN」として通用するとでも考えているのだろうか。まず、このような「前近代的」な姿勢を改めないと、不動産賃貸業の将来はないのではないか。

◇       ◆     ◇

 記者は一昨年の夏、限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地を取材した。昭和37年から同44年にかけて東京の開発業者によって開発された2団地合計の開発面積が約17万㎡で、総戸数1740戸。1区画あたりの平均面積は約20坪から約27坪というものだった。

 訪れたのは30年ぶりだったが、限界集落になっているという確信があった。最初は実名をあげるつもりで書いたが、直前になって匿名にすることにした。反響が怖かったからだ。

 しかし、この団地の例は極端ではあるが、どこの郊外団地でもやがて直面する問題だろうと考えている。空き家問題というよりは、もっと深刻なコミュニティ・街の崩壊の問題だろうと思う。

 そうした難問に「検討会」はどのような解決策を打ち出すのだろうと期待していたのだが、「検討会」の主旨はそうではなかった。冒頭の通り、空き家の賃貸借契約のガイドラインを示すことに主眼が置かれていた。

 国交省住宅局住宅総合整備課長・里見晋氏が「空き家対策については法制化が検討されており、市町村計画で調査を進めているところもあるが、この検討会は定住促進のために行っているわけではなく、空き家を活用して流通の仕組みを整備することにある。この問題はゼロサム(ゲーム)と一緒だ。市場性のない劣悪なものはシュリンクしていく。一方で、いいものもある。それを発掘し、資金面などで問題を抱えている子育て世代などを支援することで流通するようにしたい。完成形として世に問いたい」と話した通りだ。

 空き家問題は喫緊の課題だが、小手先の対策では解決はしない。街を再生するビジョンが必要だ。

限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地 人口4割減 55歳以上の人口比率は48.7%(2012/2/27)

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン