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2014/03/04(火) 12:52

大日本山林会 「これからの『林業政策』を問う」シンポジウム

投稿者:  牧田司

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「これからの『林業政策』を問う-林業基本法制定50年を振り返って-」(港区:石垣記念ホールで)

林家の平均年収は29万円 100haの大規模林家でも36万円

 大日本山林会は3月3日、「これからの『林業政策』を問う-林業基本法制定50年を振り返って-」と題するシンポジウムを行った。約120人が参加した。

 シンポジウムでは、東大大学院教授・永田信氏が基調講演を行ったほか、筑波大教授・志賀和人氏をコーディネーターに林野庁森林整備部長・本郷浩二氏、速水林業代表・速水亨氏、全国森林組合連合会代表理事専務・肘黒直次氏、九州大教授・佐藤宣子氏、筑波大准教授・立花敏氏、森林総合研究所関西支所チーム長・山本伸幸氏がパネリストとなってパネルディスカッションを行った。

◇       ◆     ◇

 「公益社団法人大日本山林会」の存在をある人を介して初めて知った。同会の案内書によると、設立は明治15年(1882年)。初代会頭・伏見宮貞愛親王殿下から現総裁・桂宮宜仁親王殿下に至るまで歴代総裁は皇族ばかりで、創立以来130年、わが国でもっとも長い歴史を持つ森林・林業団体だという。民間森林・林業の振興に寄与するのが目的だ。

 記者は他の取材と重なったため、途中からの参加だったが、会場の石垣記念ホールは満席だった。途中休憩はあったのだろうが、11:00から17:00まで6時間もぶっ続けで森林・林業の過去・現在・未来を関係者が論じ合ったのにびっくりした。

 シンポジウムも、コーディネーターとパネリストが語り合うというより参加者の質問に答える形で進められた。参加者は一家言を持つ人ばかりのようで、阿吽の呼吸という形容がぴったりのシンポジウムだった。

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志賀氏

◇       ◆     ◇

 森林・林業の現実については、これまで論じられているように高度成長期の木材需要が拡大する一方で、エネルギー革命、円高の進行による輸入材の増加と自給率の低下を招き、国産材価格の下落、林業就業者の減少と高齢化、伐採期に育っているのに赤字になるから伐れない、所有の空洞化などの危機的状況が浮き彫りされた。

 いかに深刻か。速水氏の報告から以下に引用しよう。

 「2002年から為替と自給率、木材価格が関係なく動いている」「『円さえ弱くなれば、世界の木材価格はゆっくりだが上昇しているのだから、国産材の下落も止まる』という期待が出来なくなった」

 「林業での生産拡大は今の時代は、思いの外レスポンスが良い。それに対して需要拡大は時間が掛かる。この時間的ギャップが林業経営をほとんど採算の合わない産業に変えた」

 「林家収入の下落は、いかんともしがたい。1990年までは面積が100~500ha層で5,934千円あり、高額ではないが専業でなければ、この収入は魅力的であるが、その後の下がり方はあっという間に100万円を切り、2005年には361千円である。これでは若者の月給である。2008年になると100~500haの林業所得は259千円で500ha以上でも217万1千円である。これらのことは全ての林業問題を包含した結果である」

◇       ◆     ◇

 森林・林業問題は、この前書いた「空き家」問題と根っこは同じだ。間違いなくこの20年間で何かが壊れた。記者が普及することを期待している「CLT」も強度は十分だが、接合部を強化しないと建基法を満たさないようで、実用化するにはまだ3年かかるという。速水氏のいう「時間的ギャップ」は埋まるのだろうか。

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左から本郷氏、速水氏、肘黒氏

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左から佐藤氏、立花氏、山本氏

 

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