東急不動産は3月7日、国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択された「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」第一号マンション「ブランズシティ品川勝島」のモデルルームを3月下旬にオープンすると発表した。同日、記者発表会を行った。
物件は、京浜急行本線鮫洲駅から徒歩11分、品川区勝島一丁目に位置する18階建て前356戸(分譲は335戸)。専有面積は71.01~90.23㎡、予定価格は4,400万円台~6,900万円台(最多価格帯5,200万円台)、坪単価は230万円。設計は日建ハウジングシステム。施工は大豊建設。竣工予定は2015年7月下旬。
世界初のマンション向けエネファームを導入するほか、エネルギー、モビリティ、勝島の森、パッシブデザイン、防災、コミュニティの6つを“シェア”することで、省エネ・省CO2の暮らしを実現する「BRANZ SHARE DESIGN」をコンセプトとして採用しているのが特徴。東京都の「マンション環境性能評価」では満点の星15個に1つ欠ける14個を獲得している。
発表会に臨んだ同社広報・CSR推進部長・熊沢基好氏は、「昨年からリブランディングに取り組んでおり、当社のマンションブランド〝ブランズ〟の認知度は高まってきた。今回の物件は、住環境を創造し、トータルで生活をシェアする提案を盛り込んだフラッグシップ物件として位置づけている。CSR活動としても先進的な取り組みができた」と挨拶した。
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単価については、先ごろ行なわれた同社ループの記者懇親会で、担当役員の大滝岩男常務に「230万円ぐらいでしょ」と話したら常務は「いい線だね」と答えた。東京競馬場へは歩いて行ける。競馬場は嫌悪施設では全然ない。厩舎の匂いは風向きもあるだろうが、ここまでくれば匂わないのではないか。
省CO2の取り組みでは、居住者の使用エネルギーやライフスタイルなどの情報を東急住生活研究所と東京都市大学が産学共同で分析・検証し、今後の商品企画などに生かしていく。また、省CO2行動を促進するため東急ストアの買い物優待を行なうほか、国が運営する排出権取引スキーム「J-クレジット」に登録・売却することで年間100万円の収入を見込む。
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意欲的な取り組みは理解できるが、記者は「世界初のマンション向けエネファームを全戸に導入」と前面に謳っているのはいかがなものかと正直思う。
今回のエネファームは東京ガスとパナソニックが共同開発したものだが、他のガス会社やメーカーも戸建て向けに取り組んでいる。「世界初」というのはあくまでも「マンション向け」であり、総合地所も同じタイプのものを採用するので。正確には「同時世界初」ではないか。また、この種の機器は日進月歩のはずで、同業他社がもっと優れたものを開発すれば「世界初」の価値は薄れていく。1基200万円とコストもかかるし、約2㎡のスペースを小さくするのも課題だ。
「世界初」を強調すればするほど、他の取り組みの良さ、訴求力が薄れてくるような気がしてならない。
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もう一つ。細かなことだが、モデルルーム提案について。いまマンション業界は、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産の4強がトップ争いを演じている。
記者は判官贔屓だから、この4強のうちどこが抜け出すか脱落するかを注目している。各社とも必至だろう。競えあえばあうほど商品企画はよくなるだろうから、ユーザーにとっては歓迎すべきことだ。一方で、2番手グループの同社や東京建物、大京、新日鉄興和不動産、NTT都市開発などには頑張ってほしい。戸数では勝てなくていい。供給量など何の価値もない。それよりも商品企画であり、それぞれ特徴を打ち出すべきだ。
なぜ、今回のモデルルームの提案を持ち出したかというと、造花の壁掛けが設置されていたのだが、どうして本物の観葉植物にしなかったかだ。同社はどこよりも早く壁面緑化提案(本郷、川口など)を行なっている。同社の本社の玄関や受付などには同社とグループ会社の石勝エクステリアが共同開発した素晴らしい壁面緑化のアートが掲げられている。前日(6日)の三井不動産レジデンシャルの「武蔵小杉」の各エレベータホールには「ミドリエ」が掛かっていた。ユーザーはこうした何でもないようなことに感動するのだ。
さらに言えば環境・ユニバーサルデザインの取り組みだ。記者は、同社こそがもっとも早く環境共生やユニバーサルデザインに取り組んできたデベロッパーだと思う。パッシブの取り組みでも他を圧していた。熊沢氏も言った。「当社にはそのDNAが受け継がれている」と。「世界初のエネファーム」より、こちらのほうがはるかに価値がある。ランドスケープデザインは石勝ではないのか。リリースには載っていないが、建物の設計は日建ハウジングシステムだ。