経済産業省資源エネルギー庁の事業の一環として行われた、大学と企業の連携により“2030年の家”をテーマに先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウス「エネマネハウス2014」の成果報告会が先日行われた。記者は他の取材があり、ほとんど終了の場面しか取材できなかったが、以下、各大学担当者が語った今後の課題などについての声を紹介する。
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慶応大学教授・池田靖史氏 心情的には継続してやってほしい。今年は集合住宅、来年は建売り部門とか。チャンスもっとあっていい
芝浦工業大学教授・秋元孝之氏 みんな面白そうにやっていた。民間とのコンソーシアムは商品化、新しいビジネスモデルの開発につながる
千葉大学教授・川瀬貴晴氏 面白いアイデア提案示せた。継続してほしい。参加大学を増やすためにも資金援助が生まれる仕組みを構築すべき。準備する期間が短すぎる
東京大学准教授・前真之氏 (今回の提案は)パッシブ手法だけで、アクティブ手法を盛り込んでいないのが課題。日射がなくても可能性のあるアクティブを開発したい。ドイツとは違う日本ならではの提案できる
早稲田大学教授・田辺新一氏 20年前にハウスジャパンとして、ヘムス、ヘルシーハウスなどの提案をおこなったことがある。今はそのようなプロジェクトがなくなった。日本の住宅の冬は後進国並み。一気に抜くチャンス。電器部門と住建部門の融合がヒント。ネタはたくさんあるが明かせない(笑)
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「エネマネハウス2014」は関係者ではすごく盛り上がったイベントだったのだろう。成果報告会の会場となった建築会館ホールはほぼ満席の200人以上が集まった。展示会場の「東雲」の臨時駐車場には数千人の参加者があった模様だ。
しかし、参加者のほとんどは関係者だろう。せっかく15年も先の未来住宅を提案するのだから一般の方も参加しやすい環境を整えるべきだったと思う。壊すのももったいない。審査委員の住環境計画研究所会長・中上英俊氏が「国交省ももっと力を入れていい」と総括したように、国交省と経産省が共同で実施してもよかったのではないか。
もう一つは「アジア」のコンセプトがよく分からないことだ。これも中上氏が「漠としすぎ」と語ったように、記者には何のことか分からなかった。アジア向けに住宅を輸出する考えからだろうが、「アジアは一つ」かもしれないが、アジアには寒冷地から赤道直下、砂漠地もある。気候風土、文化も異なる。一括りになどできないはずだ。
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記者が「『Nobi-Nobi HOUSE』は、外観がパープルに近いピンク。地区計画や建築協定がなくても物議を醸す住宅だ。地域との親和性が全く考慮されていない“喧嘩を売る”住宅」と書いた早稲田大学の学生さんの反論も紹介する。
企画した学生さんによると、「コンセプト(コアの設備ゾーンを居住ゾーンが囲み、さらにその外をNobi-Nobiゾーンが取り囲む三重構造)を大事にしたもので、衣服のように脱いだり重ね着したりできるようにした。外壁もファッションとして考え、黄色とかグリーンなどと検討した結果、暖色系のピンクになった」とのことだった。
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記者がいいと思ったCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)を採用した慶大の提案については、記事にもした大日本山林会のシンポ会場で林野庁森林整備部長・本郷浩二氏も速水林業代表・速水亨氏も「CLTは実用化まで3年かかる」と話したので、池田教授に質問をぶつけてみた。
池田教授は、「コンピュータ解析によって検証することはできるが、お金がかかる。ヨーロッパの技術をそのまま導入することはできない。実験も繰り返さないといけないので、一般の方が採用できるようになるまでには2~3年かかるというのは事実」と語った。
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