首都大学東京と東京都は3月17日、大都市東京の課題解決に向けた取り組み「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」を行い、同大学都市環境学部特任教授・山本康友氏が「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」について、同大学都市環境学部特任教授・青木茂氏が「リファイニング研究開発プロジェクト研究」について、同大学理事・上野淳氏が「郊外型都市賦活更新プロジェクト研究」についてそれぞれ報告した。
山本氏は、今年1月に竣工した都有施設の事例を紹介。IT技術の採用はもちろん、再生可能エネルギーの導入、地中熱利用ヒートポンプ、木材の利用、壁面緑化など現状で最高水準の省エネと省エネ仕様で整備したと話した。今後、計測データを蓄積して検証するとしている。
青木氏は、これまで手掛けてきたリファイニング建築事例を紹介。リファイニングを行う際は、既存建物が建てられてから現在までの約30年を一区切りに、今後2度の再リファイニングを想定しトータルで120年使用できるよう考えるべきで、構造的には耐震性はもちろんだが、コンクリートや鉄筋の劣化を十分調査すべきと強調した。意匠も外観は30年ごとに見直し、内観は5~10年ごとに手を入れるべきとした。さらに用途についても時代の変化に沿うよう変更を加えることが建築物の長寿命化につながると語った。
今後の課題として、技術の伝承、雇用の促進、耐震診断のデータベース化、現行法との矛盾の解消、教育の重視などをあげた。
上野氏は、多摩ニュータウンの賦活について、「世界的に稀有な事例」である公園・緑地をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークや歩車分離の街づくりをどう継承していくかが鍵だと語った。また、高齢化やバリアの解消などの課題はあるが、多様な主体が主役になる街づくりを行なえば未来都市・多摩ニュータウンには大きな可能性があると力説した。
◇ ◆ ◇
最近は、マンションだけでなく他の分野の取材も増やしているが、それぞれ一つひとつがみんなつながっていることが見えてくる。こんがらかったタコ糸をほぐしたように、知恵の輪を解いたときのように、あるいは「カチリ」と音がして玉手箱の鍵か開いたときの、極上の酒が五臓六腑にしみわたる快感だ。これが取材の楽しさだ。
例えば、今回の取材で言えば青木氏の「30×4=120年ターム」説。これは単に建築だけでなく、サステイナブル社会の構築と結びつく。上野氏が力説した街全体をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークの価値は、もう一度再認識する必要がありそうだ。
山本氏が紹介した「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト」はまだオープンになっていない施設で、都は一般公開も含めて検討するとしている。
◇ ◆ ◇
上野氏が「書いてもいい」と仰ったから書く。昨日記事にもした「サードプレイス」の「福祉亭」は上野氏もよく利用されているようで、「私は福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。どなたでも寺田さん(理事)に言って飲んでもらっても結構」「福祉亭にはお世話になってきたから、(恩返しの意味か)施設のスタッフになるか、調理人として雇ってもらうかしたい」と話した。
上野氏の調理人としての腕前がどんなものかは不明だが、先生の話がただで聞けるとなれば「福祉亭」の価値は倍化する。学生さんなどの若者も大挙して押しかけるのではないか。