RBA OFFICIAL
 
2014/03/21(金) 16:27

「住まい手からみる木造住宅の未来」シンポに420名参加

投稿者:  牧田司

IMG_5227.JPG
、「住まい手からみる木造住宅の未来」シンポジウム(ヤクルトホールで)

髙田・京大大学院教授 「平成の京町家団地」紹介

 日本ぐらし館木の文化研究会(委員長:髙田光雄京都大学大学院教授)とJAHBnet(主宰:宮沢俊哉アキュラホーム社長)は3月18日、「住まい手からみる木造住宅の未来」と題する第3回シンポジウムを行なった。会場にはほぼ満席の約420人が集まった。

 主題解説を行なった髙田教授は、わが国は木の文化国ではあるが、木材自給率は27%にとどまっており、山が荒れ災害の危険が増大しており、木造住宅は6割にのぼっているとはいえ、その多くはプレカットでできており、現状は木の文化の継承・発展にはなっていないと指摘。自然と街と人がつながっている京都の町家の例を紹介しながら、日本の居住文化を住まい手の視点から考えるべきと問題提起したうえ、「住まい手が住まいに働きかける価値とも言うべき『住みごたえ』『住み心地』『住みこなし』が重要」と述べた。

 続いて基調講演を行なった居住環境学が専門の檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授は、社会経済環境の変化によって狭小住宅団地などでは空き家が進み、高齢者向けのサービス付き高齢者住宅のニーズが高まっていること、子育てファミリーは十分な広さの住居を確保できていないことなどから、コレクティブハウスやシェアハウスなどの共助、協同する住まいが注目されると話した。

IMG_5219.JPG
髙田氏

◇      ◆   ◇

 シンポジウムでは髙田氏がコーディネーターを務め、檜谷氏、京都大学大学院教授・鉾井修一氏、同・林康裕氏、京都工芸繊維大学大学院准教授・矢ケ崎善太郎氏、木村工務店 大工棟梁・木村忠紀氏、京都庭園研究所 庭師・比地黒義男氏がそれぞれの立場から「手を入れること」の重要性を語り合った。以下、主な声を紹介する。

鉾井氏 開いたり閉じたりする空間を確保することで暑さや寒さに対応することが重要

林氏 メンテフリーを売りものにする住宅があるが、これは住まい手から働きかける機会を奪うもの。メンテしやすい構造、装置をつくるべき

矢ケ崎氏 世界最古の木造住宅である法隆寺はなんども手入れされてきた。手を入れることで長持ちさせる技を大工は持っていた。庭は贅沢ではなく必要であったから設けた。公私をまぎらす、環境をあやふやにし、グラデーションのように深まっていく機能を備えている

木村氏 いまの消費者は「住みこなす」ということを知らない。私は賢い消費者をつくることが建築を育てると思っています。木造の家は手入れをしっかりすればそんなに潰れません

比地黒氏 庭は心を癒すところ。木を1本植えることが庭づくりの基本。最近の樹木剪定は枝もない丸く刈り込むことしか考えないが、すかし技術などを使えは気持ちいい風を取り込むことができる

檜谷氏 家政学はもともと男性の学問。もっと男性も参加してほしい(これに対して髙田氏は「京の町家の保全は女性が担っている」と苦笑い)

◇      ◆   ◇

 シンポジウムはそれぞれ専門の立場から各氏が話され課題が示された。木造住宅の一層の充実を願う記者にとっては、やや論議が散漫になり深まりに欠けたのが残念だったが、髙田氏が話題提供として「平成の京町家 東山八坂通」を紹介されたのに注目した。

 八坂神社、建仁寺にも近く、八坂通から少し入ったところで、全体敷地面積は約1,100㎡で、建基法86条の一団地認定を受けた区分所有方式の8戸の木造2階建てだ。共用の庭のほか専用の庭もあり、建物は土間、縁側を設け引き戸を多用することで風通しのいい造りとなっており、2戸連棟だが「けらば」(切妻側の意匠)を残すことなどを条件に戸別の建て替えも可能だという。

 首都圏ではほとんど見かけなくなったが、建て方はかつて昭和50~60年代にたくさん供給された「タウンハウス」に似ている。共有の「コモン」スペースを持ち、専用の「庭」もある低層住宅だ。

東山八坂道-002.jpg
「平成の京町家・東山八坂通」(株式会社ゼロ・コーポレーション提供)

 

職人の技は無形の文化財 「日本ぐらし館木の文化研究会」第2回シンポ(2013/4/8)

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン