積水ハウスは5月1日、東日本大震災の教訓を生かし、女性や子どもも快適に利用できる仮設トイレ「おりひめトイレ」を仙台市と共同開発したと発表した。
防犯ベルやベビーチェア、荷物置き場を設置したほか、ドアを開けたときトイレの中が丸見えにならないような角度にしているのが特徴。開発に当たっては、同社の女性社員や仙台市の女性デザイナーも参加した。広さは約1.85㎡、重さは約500㎏で、トラックに積載して運べるという。
東日本大震災では、仮設トイレの利用を我慢したために健康被害が生じたことが報告されている。同社が社員やNPOと連携して独自に行ったアンケート調査では、仮設トイレは「汚い」「暗い」「怖い」「使いにくい」などの不満が多く寄せられたという。
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さすが「なでしこ銘柄」に選定された会社だ。ニュースリリースに添付されている平面図はとても仮設トイレとは思えぬ〝豪華〟なものだ。ドアにはコートフックがあり、防犯ベルがあり、便器は洋式トイレで流水擬音装置付き。
よくぞやったと拍手喝采を送りたい。というのも、記者も3.11のあと液状化被害を受けた千葉市美浜区を取材したとき、仮設トイレを利用はしなかったが体験しているからだ。
公園に数個が並んで設置されていたが、見るからに急ごしらえの仮設トイレ然としており、これでは若い女性などは利用しづらいだろうと思った。トイレの中をのぞいてさらにびっくりした。
便器は和式で、床面より膝頭くらいの高さに設置されていた。50cmくらいか。ステップがあればともかく、これでは小さい子どもやお年寄りは手すりがないと這い上がれないと思った。汚いのはもちろんだ。用を足す考えは吹っ飛んだ。新浦安では、若い女性などは寒い中、10分も20分もかけて駅まで歩いたという話を聞いた。
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立派なトイレはもちろんいいのだが、トイレを我慢した結果、亡くなった人がいたと聞いて悲しくなった。生きるか死ぬかのときにトイレを我慢するなんて信じられない。我慢せずに人前だろうとなんだろうと堂々と用を足す勇気も必要だ。
記者の小さいころ、男は当然、女性、といってもおばあちゃんたちだが堂々と立ちションをする姿はごくありふれた光景、日常茶飯だった。
宮尾登美子さんは小説「櫂」でその様子を克明に描いている。朝日に小水が湯気を立て、キラキラと黄金色に光り、小さな弧を描いて大地を潤し、しぶきが着物の裾にかかる光景は美しいではないか。宮尾さんもきっと立ちションをしたのだろうと想像すると愉快だ。
最近はないが、昔、郊外の新興団地を取材したときなどは喫茶店などまったくないから、藪の中で用を足したのは一度や二度ではない。