住宅分譲、不動産仲介、高齢者向け住宅の3本の事業を柱とするスミカ・味戸吉春氏に話を聞く機会があった。味戸社長はプロ野球の巨人ファンだが、事業については、リーマン・ショックを契機に「一歩足打法はやめようと決めた。それまではマンション事業が売り上げの90%を占めていたが、分譲事業は景気の変動に翻弄されるだけ。他の事業を伸ばし安定的に成長できる企業にする」と、興味深い話をした。
まず同社の紹介。会社設立はバブル崩壊直後の平成3年3月。当初は仲介業からスタートしたが、平成10年に戸建てブランド「ソアヴィータ」の分譲を開始し、同12年には自社マンションブランド「カーサフェリス」でマンション事業に参入。同23年には高齢者向け住宅の開発・サブリース・運営を行う「スミカフルール・ケア」を設立。リーマン前は売上100億を超えたが、単体の平成26年3月期の売上高は42億円の予想。
味戸社長は次のように話した。「リーマン・ショック前にはマンション分譲が9割でした。しかし、一本足打法では景気の流れについていけない。他の事業を伸ばして、マンションは体力以上にやらないことを決めました。今は年間2棟まで。戸建ては年間100戸が目標。自前で建設部門を持ち、城南を中心に建築条件付き土地分譲を展開しています。仲介は年間200件。うち3割が紹介、リピーターです。高齢者向けはこれから柱の一つにしたい」
そして強調したのが経営理念についてだ。「社員、お客さま、取引業者、株主、地域の皆さんのために夢と感動を提供したいし、さらに地球環境にも貢献したい。経営理念に沿った事業を展開しているのが私どもの強みです」
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味戸社長は福島県須賀川市出身の52歳。「福島は巨人しか放映されませんからジャイアンツファン」と語った。その味戸社長があえて王貞治氏の「一本足打法はやめた」というのは賢明な選択だ。
記者はリーマン・ショック後にバタバタと中堅デベロッパーが破たんしたのを見てきた。10社や20社では済まないはずだ。多くは供給が止まれば即破たんするマンションデベロッパーだったし、不動産流動化なる〝虚業〟にうつつを抜かした企業だった。単品ビジネスの〝一本足打法〟は血のにじむような努力と並はずれた信念がないと通用しないと思う。
その点、不動産流通業は手堅い事業だと思うし、これからは高齢者向け住宅事業も競争は激しいが有望だと思う。味戸社長がいうように、マンション事業は大手の寡占化が進む一方で、よほど商品企画を練らないと戦っていけない。
同社の戸建て事業については知らないが、「大崎の12棟現場は2週間で土地の段階で完売しました。今秋には完成しますので、ぜひ見ていただきたい。グッドデザイン賞も狙います」と味戸社長が仰った。ぜひ見学してレポートしたい