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2014/08/02(土) 00:00

野村不動産 稲城の3つの区画整理事業地で千数百戸の戸建て・マンション

投稿者:  牧田司

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「プラウドシーズン栗平」

第一弾 全250区画の「プラウドシーズン栗平」9月分譲

 野村不動産が9月上旬に分譲開始する戸建て「プラウドシーズン栗平」を見学した。開発面積約25haの「稲城上平尾土地区画整理事業」地内に位置する全250区画の大型プロジェクトで、1区画最低面積を130㎡とし、ランドスケープデザインや外構・住戸デザイン、エネファーム全戸導入、ラクモア採用など街づくりにかける意気込みが伝わってくる物件だ。

 物件は、小田急多摩線栗平駅から徒歩9分、または小田急線新百合ヶ丘駅からバス約11分・徒歩1分、稲城市平尾の土地区画整理地内に位置する全250区画。敷地面積は135.00~159.18㎡、建物面積は100.52 ~118.93㎡、価格は未定だが5,000万円台から6,000万円台になる模様。建物は木造(2×4) 2階建て。設計・施工は東急建設、西武建設、細田工務店。

 かつて小田急多摩線の新百合ヶ丘駅徒歩圏では1億円以上、その他の駅圏では7,000~8,000万円の建売住宅が飛ぶように売れていた。さすがに最近の価格はそれほどでもないが、小田急不動産を中心に大手のハウスメーカー、デベロッパーが戸建てや停止条件付き宅地分譲を行なっており、良好な住宅地を形成している。

 区画整理事業方式により開発されたため、ここも良好な街並みを形成している。街全体は起伏に富み、1区画最低面積は130㎡、道路幅員は6m以上。外構には「まちなみツリー」「まちなみ花壇」を配し、各住戸のシンボルツリー、印象的なデザインの門柱、「コーナーウォール」などを設置。建物の外観には軒や窓周りにデザインモールやロートアイアン風のバルコニー手すりを設けている。

 住戸プランでは、全戸にエネファームを採用。同社の戸建てでは初めて「ラクモア」を導入。モデルハウスは吹き抜けリビング付きで主寝室にDENを設置し、浴室は1620サイズ、引き戸は全てソフトクローズ、2階のバルコニーは回遊できる広さなのが特徴。

  同社の戸建て住宅向けコミュニティ支援・生活サポートサービス「SMART&GROWING」を採用するほか、交流拠点となる「クラブハウス」も設置する。

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◇   ◆   ◇

 栗平駅は何度も建売住宅やマンションの取材で訪れている。今回の物件は、小田急不動産との競合もあるし、戸数が多く、はるひ野、京王線若葉台などでの供給も少なくないので高値追求はできないだろうと思った。7,000万円を超えることはないと予想したがその通りだ。アッパーで6,500万円ではないか。

 街並みの美しさや設備仕様の高さをアピールできれば十分勝負できると読んだ。同社は、大手町へ乗り換えなしで通勤できること、隣接の区画整理が進めば若葉台へのアクセスが飛躍的によくなる利便性もアピールしていくようだ。

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コーナーウォール

◇     ◆   ◇

 同社は昭和45年に約1,680区画の町田市・玉川住宅地(成瀬土地区画整理事業)に参画以降、「鶴川緑山住宅地」(約1,200区画)、「千都の杜」(約730区画)、「八千代緑ヶ丘」(約1,000区画)など40年間で合計25件(うち事業完了済20件、現在施行中5件)の土地区画整理事業に継続的に携わってきた。

 今回見学した「プラウドシーズン栗平」は施行中の「稲城上平尾土地区画整理事業」(施行面積25ha)地内のプロジェクトだが、同社はこのほかにも稲城市の2つの土地区画整理事業にかかわっている。「南山東部土地区画整理事業」(施行面積87.5ha)と「稲城小田良土地区画整理事業」(施行面積29ha)だ。3プロジェクトの合計施行面積は約142haだ。同社がどれだけの区画を取得・分譲するかは現段階で不明だが、マンションを含め千数百戸にのぼりそうだ。

 さらに同社は区画整理事業方式による戸建て分譲として今年に入って「プラウドシーズン船橋小室」(施行面積13.2ha、312区画)の分譲を開始した。「三芳町富士塚土地区画整理事業」(施行面積14.6ha)でも事業参画する。

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◇     ◆   ◇

 土地区画整理事業は「都市計画の母」と呼ばれてきた。記者も昭和50年代からそう呼んできた。地権者が権利に応じて土地を提供し(減歩)、その土地を道路や公園などの公共用地に当て、一部を売却して事業資金とする(保留地減歩)手法が、宅地不足を解消する合理的で公平な制度として定着し認識されてきたからだ。

 ところが、区画整理事業は地価の上昇を前提にした事業であるため、バブル崩壊後は様相が一変した。義業の長期化による金利負担増、減歩率の上昇、保留地の売却が進まないなどの理由から破たんするところが相次いだ。記者は減歩率が97%、つまりほとんど何も残らなかった広島県福山市郊外の「佐賀田土地区画整理事業(あしな台)」(19.5ha、342区画)の悲劇的な事例を取材している。

 昨年、三井不動産レジデンシャルが同社としてはバブル崩壊後で初めて茨城県守谷市の「松並土地区画整理事業」(施行面積41.7ha)に参画して話題になったが、それほど区画整理事業は厳しい環境下にある証左だ。

 その意味で、野村不動産の区画整理事業への参画は驚嘆に値する。稲城市での3つのプロジェクトは区画整理の復権・再生につながるかもしれない。それにしても、昭和45年に市街化区域に編入されてから区画整理事業が検討されてきた「南山東部」はそれから44年。当時生まれた子どもは44歳だし、母はすっかりおばあちゃんになっているはずだ。減歩率は68%で事業費は402億円。この間の推進派と反対派の賛否両論の時間とエネルギーを金額に換算したらいったいいくらになるのか。

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「みんなの書斎」(キッチンサイドに設置されており、料理に関することや子どもの勉強にも使える。キッチンやニッチなどにはマグネットが使えるホーローが多用されているのも特徴)

「区画整理の限界を超える」か スマートシティ「ビスタシティ守谷」(2013/2/22)

多摩ニュータウン学会 稲城市の南山東部区画整理・里山を学ぶ(2012/3/26)

 

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