第8回キッズデザイン賞優秀賞が決定
キッズデザイン協議会(会長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は8月4日、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つデザインを顕彰する「第8回キッズデザイン賞」の最優秀賞など36点を決定した。
全受賞作品の中からもっとも優れた作品に贈られる「内閣総理大臣賞」にはマツダ「MAZDA TECHNOLOGY FOR KIDS」が選ばれた。車酔いをさせないスムーズな運転の習得を目指すプログラム、子どもによる誤始動を防ぐシステム、子ども歩行者を発見しやすいミラーの開発などが評価された。
8作品の中で住宅関連では、積水ハウス「子どもの生きる力を育むまち、子育て世帯応援タウン~ニッケガーデン花水木~」が経済産業大臣賞に選ばれた。
積水ハウスはこのほか、同社がキッコーマンなどと共同開発した「子どもの生きる力をはぐくむ『弁当の日』応援プロジェクト」が消費者担当大臣賞を、「震災で得た教訓を生かした、子どもと女性にやさしい『おりひめトイレ』」が復興支援デザイン部門賞をそれぞれ受賞した。
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記者発表会の冒頭で挨拶した和田会長は、「昨年から内閣総理大臣賞を新設したこともあり、今回の応募作品は過去最高の408点(第1回は287点)になった。子どもの安心・安全、健やかな成長を願う理念を実現する質の高い製品を開発し、日本にとどまらず世界にアピールしていきたい」と語った。
その通りだと思う。記者は住宅・マンションを取材フィールドにしているので、子どもはもちろん大人にもそしてお年寄りや身障者にも使い勝手がいいユニバーサルデザイン(UD)の視点でいつも考えている。
その意味からすると、確かに積水ハウスは間違いなく業界の最先端を走っている。しかし、デベロッパーを含めた業界のUDの取り組みはまだまだ遅れている。同社の取り組みが突出していること自体が情けない。
戸建てだろうがマンションだろうが住宅には子どもやお年寄りに危険なところがいっぱいある。ダイワサービス会長でマンション管理業協会理事長の山根弘美氏は1歳にもならないお子さんを浴室で溺死させたのを今でも悔やんでいる。小さい子どもの頭部にあるドアノブは凶器にもなる。廊下・階段の幅はメーターモジュールにほとんどなっていない。健常者が車椅子利用を強いられるようになったとき、果たしてどれくらいの住宅が軽微な改良でそのまま使用することができるだろうか。転居、建て替えを余儀なくされる住宅は相当数にのぼるはずだ。白内障や色覚障害者に配慮した住宅なども少ない。
そこで提案だ。キッズデザインとUDを含めた常設の展示場をぜひ都内に設置してほしいということだ。住宅部門でのUD、キッズデザインに関する実物、商品、書籍などを常設・常備し、若い研究者、学生が常時利用・研究できるような施設だ。キッズデザイン賞の審査委員長を務める益田文和・東京造形大学教授も「おっしゃる通り、キッズデザインはUDの視点が必要。常設の展示場は設置したい」と後押しした。
費用は年間どれくらいかかるか分からないが、同社の売上額の100分の1どころか1000分の1くらいで十分だろう。そのような施設を設けたところで社会から称賛されても、株主その他から批判されることは絶対ないはずだ。
和田氏は同社を立派な会社に育てたのだから、これからは会社や業界の利益よりも社会の利益を最優先する社会貢献活動に軸足を移していただきたい。〝5本の樹計画〟〝積水のUD〟が住宅・不動産業界の〝当たり前〟になるような活動だ。