ポラスグループが8月5日、「第1回POLUS-ポラス-学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を行ない、応募458作品の中で最終審査に残った入選5作品のうち、入居者と街の人々がコミュニケーションできるシェアハウスを提案した東京芸大大学院・杉山由香氏と東京電機大大学院・藤井健太氏の「じじばばシェアハウス」を最優秀賞に選んだ。
コンペは創業45周年を記念したもので、木造による1棟~最大10棟の「自立型の共生を表現した住宅」が応募条件で、応募作品は458件。入賞5作品について各入賞者のプレゼン、質疑応答などが関係者や報道陣に公開された。
審査委員長の青木淳建築計画事務所・青木淳氏は、「社会的なテーマであり、それを木造で建築するという具体的な面もあり、アイデアを盛り込むという全領域をカバーしたコンペ。5作品ともそれぞれ方向が異なりバランスがよかった。これからの木造住宅の環境づくりのきっかけになる」と講評した。
主催者のポラスグループ・中内晃次郎代表は、「木造住宅にかかわる就業者は少なくないのに、学生さんの関心はRCやS造に向きがちなので、45周年を機会にこのようなコンペを行なった。予想をはるかに越える応募があったことに感謝したい。作品のレベルも高く、夢のある提案をたくさん行なっていただいた。作品の実用化を検討しており、現在2つの作品で具体化を進めている」と挨拶した。
受賞した杉山氏は「私なりのメッセージを伝えられて非常に嬉しい。これからも考えを深めブラッシュアップしていきたい」と、藤井氏は「質疑応答に上手に答えられない点もあったが、さらに精進していく」とそれぞれ喜びを語った。
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住宅に関するコンペはたくさん行なわれているが、プレゼン、質疑応答、審査投票が公開されるのはほとんど前例がないはずだ。記者もワクワクしながら一部始終を見守った。
5作品の中で一番いいと思ったのは、25票満点(審査員5人で一人5票)のうち8票を獲得した最優秀賞に次ぐ6票を得た芝浦工大大学院・吉澤芙美香氏と同・青柳野衣氏の「屋根裏の知恵」だった。
古書店が古書の交換会を行なって循環させているのにヒントを得て、有効に使われていない戸建ての屋根裏をつなぎあわせ、住民同士が自由に出入りできるようにすれば街の図書館になるという提案だった。戸建ての居住部分と屋根裏の間には多目的に利用できる緩衝スペースを設けることも盛り込まれていた。
これには驚いた。権利関係や容積率、高さ制限などの問題があると思ったが、「屋根裏」はヨーロッパの小説にはしばしば登場するし、本来、絶対的所有権を主張する戸建てに共同利用できる空間を提案するという発想がとても面白いと思った。
審査員からは技術的な問題が指摘されたが、「大丈夫だと思います」の「思います」は余分だった。「大丈夫です」と答えていたら最優秀賞に輝いたのではないか。
他では、森林・林業の再生をテーマにした東京電機大大学院・坂本裕太氏の「式年遷住」もよかったが、テーマの割りには提案が平凡だったのが残念だった。街全体を活性化させるようなダイナミックなアイデアを盛り込んでほしかった。それでも、他の審査委員が1作品に2票というのが最多だったのに対し、3票を投じた青木審査委員長が懇親会で「君のが一番よかった」と坂本氏声をかけられたのは、記者も嬉しかった。