「明澄幼稚園」内観
三井ホームは8月21日、2×4工法による千葉県初の林野庁補助事業で、千葉県産材を使用した「学校法人富津学園 明澄幼稚園」の完成見学会を行った。
平成25年度の林野庁の森林整備加速化・林業再生基金事業に採択されたもので、使用した枠組材は、千葉県森林組合の協力による原木搬出や、枠組壁工法の構造用製材のJAS工場による格付け、枠組材やトラスの強度確認試験を経て実現したもの。
室内は、地域材の活用拡大と木材の効果・効用による児童の健康維持増進を考え、天井を勾配天井とし、平屋建てでも最大5mの天井を実現。最適な光環境と温熱環境を確保するため緩衝ゾーンである「ペリメーターゾーン」を設置し、教室の床にはヒノキの縁甲板、壁や天井には杉羽目板を貼っているのが特徴。
建物は平屋建て延べ床面積約738㎡。工期は平成25年11月~26年8月。設計監修は昭和女子大・木村信之教授。設計監理はアトリエソン一級建築士事務所・村越正明氏。施工は三井ホーム。建築費約1億7,400万円のうち半額の約8,600万円が補助されている。従前建物も木造による園舎。
玄関
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木造建築物の素晴らしさはいまさら言うまでもない。写真を見ていただきたい。
記者が驚いたのは、南側の園庭に面して内廊下が設けられ、一部は楽器演奏スペースとなるペリメーターゾーンが設置されていることだった。廊下幅は1間近くあり、総延長は約50m。直接日射が教室内に入り込まない配慮だ。
もう一つ、なるほどと思ったのは、教室の北側にもペリメーターゾーン(ラウンジ)を設け、そこにトイレや職員の作業スペースにしていることだ。北側隣地の冷風を教室内に取り込む仕掛けも施されており、冷暖房施設はないが、極力夏涼しく冬暖かい環境をつくろうとする配慮が感じられた。
教室
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しかし、いかがなものかと思ったこともある。補助を受けるための要件だ。工事費の半額というのは分かるのだが、補助金の交付条件に費用対効果を測る算式があり、その効果が1.0以上確保することを求めている。
詳細は省くが、興味がある方は「森林整備加速化・林業再生基金事業の事業評価実施要領」を読んでいただきたい。全部で26ページもある。費用対効果を測る項目の一つに保護者やその他一般の人が利用する場合の来園に要する時間や滞在時間を賃金換算することが盛り込まれている。
国費を投入するのだから条件を明確にするのは当然だ。しかし、そもそも木造住宅にするのは環境に優しく人に優しいからだ。子どもの情操教育にとってもRCやコンクリート造より望ましいという研究結果もたくさん報告されているではないか。
なのにどうしてわざわざ保護者や来園者の数、その他難しい算式による効果を求める必要があるのか。そこまで細かな計算をするのであれば、環境に優しい人に優しい木造建築物の効果を定量化すべきだろう。そのほうがはるかに説得力があると思うがどうだろう。木造の園舎になったら子どもが風邪をひかなくなった、アトピーがなくなったことなどを数値化したらどうなるのか。計算不能、因果関係が不明とでもいうのか。
平屋建ての木造として認められる延べ床面積700㎡以下という基準も理由がよく分からない。分棟すればそれ以上でもいいのかもしれないが、おかしな規定だ。
教室の北側に設置されているラウンジ(左)と教室内ロッカーの下部に設けられた通気口
幼稚園全景