「グレイプスガーデン西新井大師」
日比谷花壇と東京建物不動産販売は9月9日、足立区西新井に完成したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グレイプスガーデン西新井大師」の記者内覧会を行なった。日比谷花壇が事業主・一部サービス提供事業者となり、東建不販が企業不動産(CRE)戦略支援として貸主・管理運営事業者、やさしい手がサービス提供事業者として参画する3社コラボレーションプロジェクト。
物件は、東武大師線大師前駅から徒歩8分、足立区西新井6丁目に位置する7階建て全62戸。専用面積は19.08~30.66㎡、月額賃料は62,000円~140,000円、管理費は11,000円~15,000円、基本サービス料は35,640円。10月1日から開業する。
日比谷花壇が物流センター-駐車場として使用していた土地に建設したもので、同社としては初めてのサ高住。1階の庭園と6階屋上庭園に年間を通じて100種以上の草花を配し、大学などと共同開発した「フラワーアクティビティプログラム」、植物との関わりや園芸作業を通じて体や精神機能の維持・回復を目指す「園芸療法」、「看取り」や「日比谷花壇のお葬式」も提供する。
内覧会に出席した同社宮島浩彰社長は、「サ高住は『花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する』企業理念にマッチした投資で、当社の高齢者向けサービスを直接提供するとともに、東京建物不動産販売さんの企画・コンサルティング、やさしい手さん、医療連携する社団あすは会さんなどのサービス・ホスピタリティを結集したプロジェクト」と話した。
また、東建不販・種橋牧夫社長は、「企業不動産(CRE)戦略として賃貸マンションなども検討したが、当社のサ高住と日比谷花壇さんの『ガーデン』を融合した提案を行なった。当社のサ高住としては4棟目の完成物件となるが、2016年までに11棟を予定している」と語った。
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記者がこれまで取材してきたサ高住や民間の有料老人ホームは「自立」型のものが多かった。今回、日比谷花壇が「看取り」や「葬式」サービスを行い、医療連携する医療法人社団あすは会・髙本雄幸理事長が「医療難民をなくすためにも要介護度が高い方もどんどん受け入れていただきたい」と話したのにはやや驚いた。
確かに「入院医療」から「在宅医療」「地域包括ケアシステム」へわが国の社会保障・医療制度が急展開すると聞いたのはもう20年以上も昔だ。特養は入りたくても入れず、病院は長期入院患者を受け入れなくなった。
サ高住入居者の居住年数がどれくらいかよく分からないが、おそらく7~8年くらいだろう。東建不販が2009年に完成させた「グレイプス浅草」(98戸)ではこの5年間で30~40人が退去したという。退去理由は様々だろうが、死亡、長期入院、重度の要介護者がほとんどのはずだ。
この傾向を今回の物件に当てはめ、「エンディング」サービスが行なわれると年間に数件にのぼる。住棟内で頻繁に「看取り」「葬式」が行なわれたら、入居者はどう感じるのか髙本氏に質問した。髙本は「見ず知らずの人なら違和感があるかもしれないが、人間関係が築かれ時間が経過すれば、居室内での『看取り』は自然な形になる。サ高住がパンク状態になっている病院に代わる第二のベッドの受け皿になる」と話した。
特養との垣根も取り払われ、サ高住が終の棲家になるということか。