市街化区域に編入されてから44年、開発をめぐって賛成、反対の論議が繰り返されてきた稲城市の「南山東部土地区画整理事業」地内のマンションがいよいよ分譲開始される。9月24日、最先端の都市生活のトレンドを話し合う「GOOD DISTANCE東京メディアセッション」で野村不動産の担当者などが参加して同区画整理地内の「スカイテラス南山」の新しい街づくりが提案された。
「南山東部土地区画整理事業」は、京王相模原線の稲城駅と京王よみうりランド駅のほぼ中間にあり、稲城市の南東部に位置する丘陵地。開発面積は約87ha。平成18年に組合の設立が認可された。総事業費は408億円。組合員は260人。減歩率は68%。宅地は約2,500区画の予定。「スカイテラス南山」は区画整理事業の愛称。野村不動産は参加組合員としてマンション・戸建て約1,000戸を分譲する。
同セッションには、野村不動産・東伸明氏、稲城市役所都市建設部市街地整備課長・吉岡博文氏、一般社団エリアマネジメント里山・宇野健一氏、首都大学東京都市環境学部准教授・川原晋氏、ファッションディレクター・千場義雄氏などが参加。
東氏は、開発まで複雑な経緯をたどってきたことから「周回遅れのトップランナーとして、また、社会の基盤になる街づくりを行うソーシャルデベロッパーとして市民活動を支援するクラブハウスの設置や、新しい形の自治を形成することを提案していく」と語った。
宇野氏は、「ボランティア・スピリットだけでは限界がある」とし、エリアマネジメント手法をつかって緑化事業、地権者の土地活用支援、木質バイオマスの採用、コミュニティ支援活動などを行い事業として街の価値を高める活動を行っていくと話した。
吉岡氏は、稲城市が「主婦が幸せに暮らせる街ランキング」(学研パブリッシング発行の雑誌「aene」)で全国2位になったことを報告。市民参加型のいい先例となるよう街づくりを支援していくと語った。
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この区画整理事業については、これまで数回取り上げてきたのでそちらの記事を参照していただきたい。マンション「プラウドシティ南山」は京王相模原線稲城駅から徒歩6分の全412戸。80㎡台が中心で、価格は未定だが坪単価は180万円前後に落ち着く模様だ。9月28日には街づくりを紹介するイベントでモデルルームも公開されるので見学してレポートしたい。
どうでもいいことかもしれないし、稲城市にケチをつける気は毛頭ないが、稲城市が「主婦が幸せに暮らせる街ランキング」で全国2位になったことについて一言言いたい。稲城市が全国2位なら、どうして隣接するわが街・多摩市はそれを上回らないのか。全国上位50にも入っていない。
ランキングは、「主婦の幸せ度を『HQ(=Happy Quality)』と名付けて数値化。そして『暮らし』『家族』『お金』『食費・健康』『モノ・趣味』の5つの指標に関する幸せ度を全国の市ごとに偏差値化し、『主婦が幸せに暮らせる街』を導き出したという」(同誌)が、そんなものが数値化できるはずはない。「偏差値教育」に毒された人のやることだ。
もう一つ。同セッションは二部構成で、一部で行われた「ファッションと住まいからみたライフスタイルの変化と最新のライフスタイル」がいま一つよく分からなかった。
それぞれ1920年代から現代までの変遷をたどり、2020年の未来を予測するものだが、文化やファッションが住まいにどのような影響を及ぼし、また逆に住まいや住宅設備機器は文化やファッションをどう変えたかの関係性があまり語られなかった。
そこで提案された「都市と距離感を保ったイマドキな家族」像も紹介されたのだが、夫は気持ちの良いLA風のTシャツに高級腕時計、スウェット腰巻き、腰ではくタイプのデニム、PRADAのスリップオープンスニーカー、妻はラルフローレンのシャツ、カルティエのサントス、エルメスのバーキン、ユニクロのjeans、todsの靴という姿だ。
記者はブランドにまったく興味がないが、エルメスのバーキンは100万円以上、カルティエのサントスも数十万円から数百万円するという。一般サラリーマンが購入できる住宅は4,000~5,000万円が限度だ。
まさか「南山」のマンションはそのような家族がメインターゲットではないだろうが、ひょっとするとそのような層も取り込もうという狙いはあるかもしれない。