東京都は10月4日、多摩市と共催して「東京都マンション再生セミナー2014 in多摩ニュータウン」を行った。第一次入居から40年以上が経過し、建物の老朽化や入居者の高齢化など様々な問題を抱えていることから再生・活性化が急務として開催されたもので、マンション管理組合関係者など定員いっぱいの約200人が参加した。
セミナーは3部構成で、第1部では「諏訪2丁目」建て替えマンション「Brillia多摩ニュータウン」の現地見学会、第2部では明治学院大大学院教授・戎正春氏と再開発プランナー・山田尚之氏がそれぞれ講演し、第3部では建て替えと改修について交流会が行なわれた。
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建て替え後の「Brillia多摩ニュータウン」を見学するのは初めてだったが、素晴らしい街に生まれ変わった。記者は一昨年、首都圏のベスト3マンションの一つにこのマンションを選んだが、その選択は間違いでなかったことを実感した。建て替えの経緯などについて説明した諏訪2丁目住宅マンション建替組合理事長・加藤輝雄氏が「気持ちのいい、居心地のいい街になった」と語った言葉そのものだった。
六本木・ミッドタウンに通勤する30歳代の入居者は「杉並の賃貸に住んでいましたが、ここは環境もいいし敷地も広い。駐車料金なども安い。これまでの人生で一番いい買い物をした」と満足そうに話していた。
築40年経過して入居者の平均年齢が65歳、640戸のうち賃貸が約130戸、空き家が30戸にものぼり、バブル期の購入などローンが残っている所有者も相当数いた団地を再生した管理組合活動家やサポートしたコンサルタントの熱意には敬服する。コミュニケーションを密にし、個別の課題にも一つひとつ誠実に対応してきたのが建て替え成功の最大の要因だろう。
第3部で参加者が「マンションでも相続放棄の事例がある」「図面すらないマンションは3割もある」と話したのには衝撃を受けた。山林や田畑、地方の住宅などの相続放棄はこれからも増えると見ているが、都市部のマンションもそうなるのか。第2部でも報告されたように建て替えも改修もできないマンションが増えそうな問題と共に考えないといけない。