コスモスイニシアが11月に分譲する「イニシア武蔵新城ハウス」を見学した。同社の創業40周年を記念するフラッグシッププロジェクトで、その冠にたがわぬ好物件だ。
物件は、JR南武線武蔵新城駅から徒歩8分、川崎市中原区下新城3丁目に位置する5階建て全124戸。専有面積は70.08~85.79㎡、価格は未定だが、坪単価は231万円の予定。竣工予定は平成27年7月下旬。設計・監理はコスモスイニシア一級建築士事務所/コスモスデザイン。施工はライト工業。
テーマは「やさしいシカク」-パンフレットなどには、その意味として「住む人にとってやさしい住まいって、どんなカタチ? それは空間から柱や梁の凸凹をなくした、フラットで、伸びやかな自由空間」とある。
この言葉通り、リビング、居室、コーナー、天井、壁などの面に一切柱型や梁型が出ていない。カーテンボックスも埋め込み型にしてすっきりさせ、廊下と居室ドアの引き戸の高さも2400ミリにし、収納なども天井まですっきり収まるように工夫している。
特徴はこれだけではない。玄関は全て横入り型とし、下足入れ下部には業界初と思われる内倒し窓を設置。専有面積は70㎡台が中心だが、居室はほぼ正方形の5畳大とし、それぞれがフレキシブルに使えたり、シェアしたり可変性を持たせたりして住まい方の提案を行っている。外廊下側の窓は壁面より1mセットバックさせ、その上部は花台、下部は室外機置場としている。外廊下とバルコニーの床は新製品という木目調シート張り。
二重床二重天井で、フローリングの遮音性能はLL-40。床は有償だがチェリー、メイプル、オークに変更も可能。キッチンカウンターは最近珍しいステンレス製。食洗機も標準装備で、水栓はグローエ。カラーリングは白が基調。
建物のエントランス左官職人・久住有生氏による「土の壁」を採用。壁は左官コテ仕上げも多用している。
◇ ◆ ◇
今回の物件が創業40周年の記念マンションだということはモデルルームを見学するまで知らなかったが、同社野球部の選手から「ぜひ武蔵新城をみてほしい」と言われていた物件だ。
同社の40年のマンションの歴史で、真っ先に思い出すのは「コスモ蕨」だ。昭和60年に完成した12階建て150戸のマンションで、当時の社名はリクルートコスモス。最大の特徴は住戸プランが7900×7650=60㎡、つまりほとんど正方形の間取りで、南面に3室を確保し、廊下スペースをほとんどなくすことで60㎡でありながら居住性を高めていたことにある。
記者はこれに驚愕した。高層マンションにこのような商品企画を持ち込んだのは同社が初めてだった。リクルート系のデベロッパーとして末恐ろしさを感じた。
あれから30年余。同社には紆余曲折があったので、当時の社員が残っているかどうかわからないが、記者はあのキュービックプランと今回の「シカク」が1本の線としてつながった。面白いことに、今回のマンションの5畳大の居室もほとんど四角だ。「シカク」とは「四角」ではないか、それとも「死角」、つまり盲点となっていたものをあぶりだすという狙いか。
先につらつらと書いたように商品企画が秀逸だ。下足入れの窓は換気と脱臭に効果があるはずだ。ステンレスのキッチンカウンターは美しい。洗面所のデザインもいい。とにかく美しいマンションだ。
おまけに坪単価について。販売事務所で真っ先に環境開発やらリクルートの上場の話しやらをした後、いつものように単刀直入に「坪単価230万円でどうですか」と聞いた。答えは「231万円」だった。読者のみなさんは嘘だろうと思うかもしれないが、聞いたとき広報担当者と販売担当の3人の方がいた。まさかズバリ的中するとは思わなかったが、これが記者の相場観だ。
それからプランを見たのだが、単価と商品企画を総合的に評価すれば、これは間違いなく売れる。駅の反対側には野村不動産の「プラウド」もある。こちらは見ることができなかったので何とも言えないが、コスモスイニシアが勝っても驚かない。
川崎市には注文をつけたい。ここの用途地域は第一種中高層住居専用地域(建蔽率60%、容積率200%)だが、高さ規制も15mと定められている。公開空地を確保することなどを条件に高さ規制を緩和すれば、もっと素晴らしいプランのマンションになるし、街づくりにも貢献する。高さ規制の是非をもういちど官民が考えるべきだ。