2年前、「街路樹が泣いている~街路樹と街を考える」記事を8回くらいにわたって書いた。もちろん、その後も外出するたびに街路樹を眺めている。街路樹を取り巻く環境は一向に改善される気配がないばかりか悪化の一途をたどっていると思わざるを得ない。そこで、昨日取材した「越谷レイクタウン」や三郷、新三郷、三郷中央、吉川美南、それとつくばEXの流山おおたかの森で見た街路樹と街の価値について書く。
行政や関係者には耳の痛いことかもしれないが、皆さんが頑張らないと益々ひどくなるし、市民に対する「見える化」「見せる化」を図らないと街のポテンシャルは下がる一方で、激化する都市間競争に勝てないということを知っていただくことが目的であること断っておきたい。
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【写真1】は、ポラスが昨日記者発表会を行った「パレットコート越谷レイクタウンリゾート」のモデルハウスだ。詳細は改めて書くが、全98区画の分譲地で、このうち今回分譲の30区画は「ハワイ」の街並みが開発のコンセプトになっている。
皆さんは左側に写っている「ココスヤシ」の値段はいくらかお分かりか。記者はマンションも分譲戸建てもすぐ価格に換算する。価格がない商品なんてありえないからだ。樹木そのもの価値は分からなくとも樹木・緑が果たしている役割は大きいと思う。そこで参考までに聞いた。同社は1本の値段も教えてくれたのだが、「全体で13本植えるが、書くのなら総額は数百万円にしてほしい」といわれた。マンションの単価予想はあまり外さない記者もこれには驚いた。予想していた値段とケタが違った。
同社はもともと分譲地の緑化・植栽には力を入れている。それだけがもちろん理由ではないが、よく売れているのも事実だ。東武野田線七光台駅前では10年前から1,035戸の分譲を始めたが最近完売したという。年間100戸というのは信じられない販売スピードだ。
つくばEX「六町」駅圏では2年前から214区画を分譲しているが、残りは一ケタという。これまたすごい。この分譲地にはシンボルツリーとして「カツラ」が数えきれないほど植えられている。成木だと高さが20~30m、差しわたし数mになる高木だ。記者は〝こんなに植えて大丈夫か〟と思ったほどだ。六町も含め足立区内で立派な街路樹はほとんど見たことがない。
【写真2】は、「越谷レイクタウン」駅南口の街路樹だ。この木は高さが20mくらいになる「オガタマノキ」だが、駅前は確か「ハナミズキ」だった。見て分かるようにオガタマノキは直径が数センチ、高さが数mくらいの幼木が植えられていた。ハナミズキも女性と腕相撲をしても負ける記者の腕ほどもない貧弱なものだった。ハナミズキは美しい花を咲かせるが、成木でも数mにしかならない落葉樹だ。メインストリートの街路樹として適当かどうか首をかしげざるを得ない。
ついでながら言っておくが、駅北口のいわゆるパワービルダーが分譲した戸建てはコンクリートで覆われているからぺんぺん草も生えない。「地区計画」にはいろいろ細かい規制があるが、緑化については何もないからこのようになる。
【写真3】は、三郷駅北口のロータリーの「ケヤキ」だ。皆さんはこの剪定を美しいと思われるか。確かに形よく剪定されているが、どうしてこれほど剪定しないとダメなのか。ケヤキや「クスノキ」はほっといても美しい樹形を形成する。駅前ロータリーにあるケヤキの落ち葉が乱舞しようが枝が張ろうが文句をいう市民などいないはずだ。
そこで、市のホームページでいろいろ調べてみた。市は2年前に「三郷市景観条例」を施行した。立派なものだ。街路樹の維持管理費は24年度が8,467万円だ。樹木管理維持に要した職員数は「人工」単位として「0.6」とあった。ところが市にはどのような街路樹があり、全体で何本あるのか一切記載がない。担当窓口「みどり公園課」の職員に聞いても「すぐには分からない」と返事が返ってきた。記者も知らなかったのだが、「人工」とは「ニンク」と読むことも知らなかった。本数は調べてもらって高木は約4,500本(越谷市は市域面積が大きいので約7,100本)ということが分かった。
この職員は担当になってまだ2年しか経過していないそうで、同情の余地はあるが、これではやはり情けない。2年前に書いた戸田市の職員と一緒だ。人事をどんどん変えていく行政のシステムに問題があるし、条例そのものも「右に倣え」で魂が込められていないと思う。街路樹に対する思想・理念がなければ、「伐れ」だの「伐るな」などの素人の市民の苦情に右往左往するだけではないか。
最初に戻る。あのケヤキの剪定にどれだけの費用がつぎ込まれているのか。市民はだれも知らないでいいのだろうか。議員も質問などしないのだろうか。市の維持管理事業に対する成果は「安全で快適な街路空間や都市環境が確保できるよう、街路樹や緑道の管理維持を行った」とわずか1行しか掲載されていない。これなら毎年、使いまわしで同じ文言で済む。
【写真4】は、「流山おおたかの森」の駅前だ。先の越谷レイクタウンや三郷駅前とは異なることがよく分かる。越谷レイクタウンとは駅の開業年は3年しか違わない。おおたかの森の街路樹は立派な樹木が植えられている。
いま駅前で三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ流山おおたかの森ザレジデンス」(257戸)が分譲されている。坪単価は190万円だ。分譲開始から3~4か月で120戸が売れている。駅から10分の分譲戸建て「クイーンズフォレスト流山おおたかの森」(95区画)が昨年4月から建物付きで5,000~7,000万円くらいで分譲されているが、これまで58区画が契約済みだ。
駅力が異なるので単純な比較はできないが、「越谷レイクタウン」も「吉川美南」「新三郷」「三郷中央」などの駅近マンションは坪130~150万円だ。戸建てで6,000万円を突破すれば苦戦はまぬかれないはずだ。
記者はこの差は街並みにもあると思う。これは改めて記事にするのだが、「クイーンズフォレスト流山おおたかの森」は、2003年、それまでの「長老政治」を打ち破り市長に就任した井崎義治氏が掲げる「流山グリーンチェーン戦略」に基づいて建設されている分譲地だ。井崎市長とはもう10年くらい前になるか、街づくりについて意気投合したものだ。「柏の葉」という強豪に負けないで頑張っていらっしゃるのが嬉しい。
とりとめのないことを書いてきたが、木だって生き物だ。醜い姿を見せられると自分を映す鏡に思えて気がめいる。国も学者先生も街路樹・緑の価値をもっと市民に分かりやすい指標を用いて定量化してほしい。
街路樹が泣いている(8) 奇形ばかり海浜幕張・電柱そのもの府中街道の街路樹(2012/6/5)