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2014/11/29(土) 00:00

重要事項説明(重説)のIT化はハードルが高い実感 国交省が第5回「検討会」

投稿者:  牧田司

 国土交通省は11月28日、第5回「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」(座長:中川雅之・日本大学経済学部教授)を行なった。国交省から重要事項説明(重説)に必要な要素や社会実験の進め方、最終取りまとめ骨子案などについて示され、各委員が論議した。第6回目の会合が年末に行われ、最終取りまとめ骨子案がまとめられる予定だ。

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 初めて「検討会」を傍聴した。今年末までに最終取りまとめ案が決まると報道されており、いかなる内容になるかを確認するためだった。

 個人的には重説のIT活用は大賛成だ。マンションなどの売買契約で行なわれる重説は84項目もある。賃貸は10数項目のようだが、数の問題ではない。宅建主任者が一つひとつを読み上げ、説明するのだが、最初から最後まで忠実に行なえば、2~3時間くらいかかるのではないか。書面の送付やメールのやり取りなどで済ませてもよい事項も少なくないと思う。外国人のマンション購入も増加している。法人や遠距離契約者への重説のIT化は避けられないと思っている。

 また、不動産のプロ(主任者)が物件の瑕疵などを隠すはずがないと記者は思っている。トラブルを未然に防止するためにも資質向上を目指した「宅建取引士」への「格上げ」であるはずだし、コンプライアンスの徹底を各社は進めているはずだ。(もちろん例外はあり、これが問題なのだが)

 消費者もまた高い買い物をするのだから、事前に十分調査、チェックすべきだ。トラブルになったとき、「知らなかった」では済まされない。契約書が全てだ。重説の「その他」もしっかり理解することが必要だ。

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 「検討会」委員も重説のIT化に不動産業界はもちろん全員がもろ手を挙げて賛成するのではないかと思っていたが、そうではなかった。

 「様々な制約をつけるべきでない」と全面的なIT化を推進すべきと主張したのは関聡司委員(新経済連盟)だった。関委員は「○×の意味が分からない」-つまり重説で求めている本人確認や説明が理解されているかどうかの双方向のやり取りについて国交省が提示した「テレビ電話」は○(可能)であり、「電話・メール」を×(不可)とする資料に異議を唱えた。このほか「(社会実験を経て本格運用することについて)ITで重説をどう実現するか期待したい」(熊谷則一委員=弁護士)「社会実験に向け登録する方向で検討を進めている」(加藤代理委員=全日本不動産協会)など肯定的な意見があった。

 しかし、その逆に「IT化には反対してきた。賃貸のトラブル処理は大変(IT化でトラブルは防止できない)」(小林勇委員=全国宅地建物取引業協会連合会)とする声や、「事前の説明はITでもできるかもしれないが、契約は対面でないと難しいし、重説もテレビ会議でないと難しい」(本橋武彰委員=不動産流通経営協会)「賃貸契約は2年で解除となるが、トラブルはその後に発生する。社会実験を2年とするのは短すぎるのではないか」(土田あつ子委員=日本消費者生活アドバイザーコンサルタント協会)などの慎重論もあった。

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 「検討会」は、宅建業法の趣旨が「購入者等が十分理解して契約を締結する機会を与えるため、専門的な知識、経験、調査能力を持つ宅地建物取引業者に説明義務を課している」ことであり、重要事項の書面による交付・説明を取引主任者が取引主任者証を提示し、直接契約者本人に伝達・理解を得ることを定めた業法35条の法体系を崩さないことが前提となって論議されている。

 そもそも重説は電子メールなどの電磁的方法で交付することを認めていない。また業法でいう「説明」とは、「説明の相手方が判断又は意思決定できる状態にまで理解せしめることであって、相手方に一定の事実を知らしめる告知とは異なる」(逐条解説)としている。

 このことを前提にするのであれば、IT化はきわめてハードルが高いといわざるを得ない。「IT化」の言葉だけが先行しているように思えてならない。悪意の業者・消費者を排除し、トラブルを未然に防止するためにも社会実験を通じて十分検証することが必要だろう。

 ついでながら外国人に対する重説について一言。日本語を解さない外国人については相手が理解できるよう英語なり中国語なりその他の外国語に訳したものを交付し、場合によっては通訳も必要になるはずだ。ここで疑問に思うのは、通訳を通じて行なう場合だ。重説は本人に対して行なうのだから代理は想定していない。通訳の能力もさることながら、主任者は通訳が的確に訳しているかどうかを確認できないと説明したことにはならず、理解されたかどうかも分からないのではないか。その外国語に精通していないと主任者は務まらないということだ。

 業界では「外国人の入居が増えたらトラブルが激増するのではないか」という声が多い。これからそのようなマンションが続々竣工する。マンション管理組合が右往左往する事態だけは避けて欲しい。

 

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