「安全保障住宅」の取り組みは待ったなし-岩村和夫・東京都市大学名誉教授で岩村アトリエ代表取締役は12月3日行われたプレハブ建築協会の「2014環境シンポジウム」で、交通事故死より多い家庭内での事故死や自然災害が日常茶飯に起きている現状を考え、住まいレベルとまちレベルで持続可能な取り組みを急がなければならないと特別講演で話した。シンポには約200名が参加した。
環境共生住宅研究の第一人者として知られる岩村氏は、最近の環境問題への取り組みはCO2削減に集中しており、本来の環境共生住宅はもっと広い視点から考えており、もう一度原点に立ち戻って考えることが必要と問題提起。そのうえで、18世紀の産業革命からドイツでの田園都市の取り組み、米英での宇宙船地球号、ドイツの建築生物学、わが国の環境共生住宅など世界の系譜をたどった。
そして、現在、わが国では住宅内での事故死が多く、自然災害による被害も大きいことから持続可能な「安全保障住宅」の取り組みを急がなければならないとした。
災害を日常的なものとし、住まい・まちにおける人々の生活を持続できる計画を構想する「LCP(Life Continuity Plan)」を構築し、災害時-災害後-平常時の暮らしを循環させなければならないとし、ハウスメーカーならではの取り組みに期待を寄せた。
ハード、ソフト、支援サービスの技術を確立するとともに社内外で連携してモデルプロジェクトを実施すべきと話した。
シンポジウムでは冒頭、藤井康照・同協会住宅部会長(パナホーム社長)が、「災害は日常茶飯に起きている。われわれはエネルギー問題に真剣に取り組み、安心・安全の住まいを提供してきたが、防災も含めてより社会に貢献できる取り組みに磨きを掛けなければならない」と挨拶した。
このほかシンポでは、パナホームの「ゼロエネを超える住まいの開発について」、ミサワホームの「エムスマートシティ熊谷の取り組みについて」、積水ハウスの「『5本の樹』計画と『新・里山、希望の壁』プロジェクト」、積水化学の「スマートハイムFANにおける省エネの住まい方提案」が紹介された。
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岩村氏が提案した「安全保障住宅」はハウスメーカーもデベロッパーも避けられない課題だと思う。住宅を建築するエリアが災害危険地域である場合は、事前に消費者に告知することを不動産業者に義務付ける条例を施行するところもある。今後は加速度的に増えるのではないか。
どこのハウスメーカーかあるいはデベロッパーがいち早く岩村氏が話した「安全保障住宅」を提供するか見守りたい。