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2014/12/17(水) 00:00

国交省 住宅団地の再生検討会 「無反応者」を母数に含めない是非

投稿者:  牧田司

 国土交通省は12月17日、「第5回住宅団地の再生のあり方に関する検討会」(座長:浅見泰司・東大大学院工学系研究科教授)を開き、住宅団地再生に係る課題と住宅団地の実態調査計画について話し合った。

 団地住宅再生に係る課題については、①合意形成に係る課題②事業資金の確保に係る課題③建築規制上の課題④その他がまとめられ、住宅団地実態調査については、全国的な住宅団地のマクロデータの収集と、東京都内の約500団地程度の旧耐震及び築30年以上の分譲マンションについて詳細な実態調査を行うとしている。

 次回に予定されている2月の会合を経て、3~4月には一定の方向性を示すことになっている。

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  この「検討会」は初めて傍聴した。個人的には16委員の中で紅一点の櫻井敬子・学習院大教授の話が聞きたかったのだが、欠席されたのが残念だった。論議は、これまでの会合で課題がすべて出尽くしたためかあまり活発に行われなかった。

 注目したのは、マンション建て替えや共用部分の変更など特別決議事項で「無反応者」(成年後見人制度とは別で、総会に出席も委任状提出も議決権行使もしない人と思われる)に対しては議決の母数から外すなどの緩和措置をとっていいのではという提案だ。

 記者も考え方としては基本的には賛成だ。しかし、これは問題も多い。そもそも現行の区分所有法では「無反応者」という概念はない。仮に母数に「無反応者」を除外し建て替えなどの特別決議を行ったら間違いなく法律違反になる。「無反応者」を母数にカウントしたら賛否が逆転する場合などは決議そのものが無効となる可能性もありそうだ。これを解消するには区分所有法を改正しないといけない。

 この問題について、提案された委員にメールで聞いた。早速、その返事をいただいた。この委員の提案は、現行区分所有法の改正が必要な事項として提案したもので、具体的には2/3以上の出席により特別集会が成立し、出席者の3/4で決議するという提案だ。現行3/4を2/3に緩和する法改正でもいいのではないかとしている。「無関心で決議に参加しないことは、権利を放棄することであるという意識を拡げることが好ましく、現在は、無関心者は反対票を投じることと同じになっている」と指摘している。

 (国会では「無反応者」=「棄権」をどう判断しているのだろうと思い、事務局に聞いた。憲法では「両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し…」とある。ところが、衆議院本会議では出欠を取らず、採決方法は①起立②記名③異議なしの3種類がある。記名の場合で賛成の白票と反対の青票のいずれも提出しない、あるいは退席した場合は「投票なし」となる。つまり、出席議員をカウントしていないから、結果的に棄権した議員は母数には含まれないことになる。棄権した議員を「出席議員」に含めるか除外するかは憲法学者間で論争があるそうだ。そもそも国会議員は理由なくして本会議を欠席することは基本的にありえず、賛成でも反対でもないという意思表示はありえないということか。記者はこの前の選挙で投票に行き、投票用紙を受け取ったのち「棄権します」と意思表示したら、用紙は没収された。投票率には反映されるのだろうか)

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 もう一つ、提案したいのはマクロの視点は必要だが、いくらデータを収集しても問題の解決にはつながらない。ミクロからのアプローチが絶対欠かせない。

 調査項目には、デベロッパーの開発姿勢、中古市場での評価、空き家の発生率、高齢者人口比率、世帯年収、行政の街づくり方針なども加え、総合的複合的に考えないと展望は開けないだろう。

 委員から出された「郊外の住宅団地の再生を市場原理のみで対応するのは困難であり、政策的な対応がないと困難である」という意見に賛成だ。追加費用が負担できない高齢者などの区分所有者に対しては国や自治体が権利を買い取り、賃貸化すれば合意形成もやりやすくなると思うがどうだろう。

 

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