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2014/12/22(月) 00:00

国交省「日本らしく美しい景観づくり懇談会」 卯月委員長も感動

投稿者:  牧田司

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「日本らしく美しい景観づくりに関する懇談会」

「スポーツを使えば景観に貢献できる」トレイルランナー鏑木氏

 国土交通省は12月19日、第5回「日本らしく美しい景観づくりに関する懇談会」(委員長:卯月盛夫早大教授・参加のデザイン研究所所長)を開き、東大大学院教授・出口敦氏、静岡県交通基盤部都市局長・石川亨氏、トレイルランナー・鏑木毅氏が「富士山等の広域的景観資源の保全施策をどう展開すべきか」を中心テーマにプレゼンテーションを行い、各委員が話し合った。

 今回で大きなテーマに沿って話し合うのは最終で、27年度には第一次の取りまとめを行う予定。

◇      ◆     ◇

 この「懇談会」にはずっと注目していた。「日本らしくて美しい景観…」というタイトルがいいではないか。「(日本)らしく」という形容詞型の助動詞と「美しい」という形容詞が「景観」に掛かる。いったい「日本らしい景観」「美しい景観」とはなんぞやという悩ましい問いに「懇談会」はどのような答えを示してくれるのだろうかと考えるとわくわくもする。

 しかし、その一方で、普遍的で絶対的な美などこの世の中に存在しないし、文化や歴史、個人の審美眼によっても「美」は異なってくる。それこそ十人十色、三者三様、百人百様だ。

 わが国の自然を対象にした100選を拾ってみると、「美しい日本のむら景観百選」(農水省)、「日本百名山」(深田久弥の随筆)「日本百名橋」(松村博氏)「日本名水百選」(環境省)「日本の自然100選」(朝日新聞社)「日本街路樹100景」(読売新聞社)「日本の白砂青松100選」(日本の松の緑を守る会)「名木100選」(各都道府県)などほとんど全ての景観がランキングされているが、その基準もいまひとつはっきりしない。記者は生まれ育った田舎の風景・風土が一番美しいと思っている。

 だから、懇談会もこれが〝日本らしくて美しい景観〟といったような包括的な答えは出さないだろうし、目的もまた景観法が施行されて10年を振り返り、課題を明らかにし、将来につなげようということのようだ。

 とはいえ、今回の懇談会は大収穫だった。卯月委員長はプレゼンターの話とプロジェクターに映し出された画像に「感動した」と話したように会は盛り上がり、予定されていた2時間を30分近くオーバーした。先週傍聴した国交省の会合は予定を大幅に余して終了したのと対照的だった。(最後まで傍聴したのは記者一人だったというのは解せない)

 そんなわけで、卯月委員長が感動したトレイルランナー・鏑木毅氏の話を紹介する。

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写真提供・鏑木氏(以下、同じ)

 鏑木氏は46歳。わが国のトッププロのトレイルランナーだ。トレイルランニングとは舗装路以外の山野を走る競技。鏑木氏は、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランの周り168㎞、累積標高差9,600mを制限時間46時間以内で走破する大会で2009年には22時間で走破し、わが国最高位の3位に入賞している。つい先日も、香港の大会で100㎞の山道を走ってきたという。

 鏑木氏は次のように語った。

 「トレイルランニングは欧米がさかんだが、わが国でも3~5年前から盛り上がってきた。ランナー人口は15万人くらい。私は普及させるためにいろいろ活動している。富士山の大会では約2,300人の参加者のうち約450人が外国人。かなり高い比率だ。

 〝マウントフジ〟は日本語の固有名詞でもっともよく知られている言葉ではないか。外国人ランナーは一様に日本の山を褒める。わが国は世界で3番目の森林率の高い国。都心から1、2時間くらいでアクセスできる。多様性と繊細性では世界一。〝山を走るなんて〟とネガティブに考える人もいるかもしれないが、苦しい壁を乗り越える感動はスポーツでしか体験できない。3日間走り続けた人を迎えるときは、自分も涙を誘われる。感動の中にエネルギーがある。

 その一方で、ごみの量には驚かされる。ボランティアでゴミ拾いも行うが、ひどさに涙が出る。林道などは行政で整備されているのに利用しないから荒廃も進んでいる。

 富士山の大会では11市町村を走るので、それぞれの地域の食品・食材などを活用したイベントもできる。スポーツを使えばいろいろな展開ができる。大きな流れの渦を作りたい。文化を育てる社会的意義も大きく、景観づくりにも役立てることができるはず」

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 懇談会での各委員の主な意見を紹介する。(順不同)

 池邊このみ委員(千葉大大学院教授) 利害関係がからんでくると合意形成が難しい。森林・林業や農業が景観を支えているが、現在の補助金制度は景観の視点が欠落している。この点からもお金が入る制度を考えていい

 小浦久子委員(大阪大大学院准教授) 景観計画をどうして作ったかの意味をきちんと伝えないといけない。富士山のように目標がある程度共有されていれば引っ張っていけるが、景観計画の内容や計画に示す基準の意味をつたえる必要がある

 西山徳明委員(北海道大教授) 「富士山の姿(景観)をまもる」という目標は明快で共有しやすいが、どこまでが視対象(見る対象)としての「富士山」なのかを明確にすべき。「富士山」の姿のなかに反射するメガソーラーは作るべきではないが、その外側は事情が違う

 山畑信博委員(東北芸術工科大教授) 静岡県はメガソーラー規制の面積要件を1,000㎡以上にしているが、その根拠が希薄

 卯月盛夫委員長 景観計画は運用段階で「どうして」という説明ができないと利害関係の調整が難しくなる。メガソーラーは何が問題なのかをもっと明確にするべき。エネルギーと公共公益の調整も難しい問題がある。富士と一緒にみんなきれいにしようというのは、景観はお金を生むかもしれないヒントになる。農業と林業の疲弊は景観を保てなくなることにつながる。イベントを活用してもっと利用・活用する必要がある。景観は歴史とつながっているという新しい視点が必要(全体のまとめとして)

 

 

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