ミサワホームが分譲中の「エムスマートシティ熊谷」を見学した。意欲的なスマートシティの提案が評価され、埼玉県住まいづくり協議会が主催する「第二回環境住宅賞 特別賞」を受賞した全73区画の戸建て団地だ。
物件は、JR高崎線籠原駅から徒歩13分、埼玉県熊谷市別府5丁目に位置する全73区画(建築条件付宅地区画数11区画含む)。現在分譲中の建築条件付き宅地分譲の土地面積は169.71~200.52㎡、価格は1,224万~1,640万円。(1区画)。1戸建ての土地面積は178.66~188.84㎡、建物面積は 113.23㎡~119.97㎡、価格は4,490万~4,980万円。構造・工法は木造2階建(木質パネル接着工法)。主な設備は太陽光発電システム、エネファーム、HEMS、電気自動車用充電用コンセントなど。建物の売主・設計・施工はミサワホーム西関東。土地売主はミサワホーム。
今年6月から分譲開始されており、これまで17区画(宅地分譲含む)が契約済み。購入者は熊谷市内と市外が半々。都内の購入者もいるという。
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土地は熊谷市が学校用地として所有していたもので、市のコンペで4社が応札、同社の応札価格は最高値ではなかったが、プランが評価されて落札した。
快適な暮らしを提案した「涼を呼ぶ街づくり」「過去と未来をむすぶ」「ゼロエネルギーで明日をひらく」「人と人を育むコミュニティ」の4つのコンセプトがいい。
まず、「涼をよぶ」「むすぶ」取り組み。夏季は東からの風が多いことから、風の入り口に公園を設置。既存樹のサクラの巨木を配して風を遮断するとともに、公園の緑陰と散水によって冷やされた風が道路に沿って流れ、各戸に7か所程度設置されたミストスプレーでさらに冷やされ、街全体を自然の力で冷やそうという仕組みが施されている。道路の一部には地表温度を5度くらい下げる効果がある反射性の高い素材を採用している。
公園には井戸を掘り、自動的に井戸水を撒き、ベンチの足元には「足水(あしみず)」を設置。ゆるやかな曲線を描くように道路を配し、建物は太陽光発電の効率を最大限上げるため全棟を南向きにしている。
「ひらく」では、太陽光発電システム(3kw)、エネファーム、「enecoco(見える化システム)」LED照明、涼風制御システムなどを導入。涼風制御では、外気温と天井付近の室温の差を検知し、自動的にトップライトを開放して室内の熱気を排出。温度差が少なくなるとトップライドが閉じられエアコンが作動する。外気温が低くなったらエアコンが自動的に停止する。これは同社独自のシステムだ。
このほか省エネでは、暑い外気温を遮断するクールルーバー、ミストスプレー、保水性インターロッキングも採用している。
「はぐくむ」では、セキュリティ機能も備えたコミュニティハウス(集会室)を設け、公園に設置した「まちの気象台」を通じてリアルタイムで温度、湿度、降雨量、風速などが測れるようにし、暮らしに役立てる工夫を行う。
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言うまでもなく、熊谷市は夏の暑さでその名が全国に知られている。夏の暑さ対策は必須だ。同社のシミュレーションでは明らかに街全体の温度は数度低くなっている。
長々とパンフレットの引き写しのような記事を書いたが、特徴を表現しようとするとそうならざるを得ない。スマートシティ、スマートタウンは結構取材してきたが、パッシブデザインとアクティブデザインを巧みに組み合わせているという点では、現段階でこの団地がナンバーワンではないか。夏に取材すればよかったのだろうが、待ちきれずに寒風吹きすさぶ先週の金曜日に取材した。〝冬寒い〟熊谷を初めて体験した。
それにしても現地まで街路樹らしきものが全然ないのはなぜか。理解に苦しむ。