不動産流通研究所の「R.E.port」が圧勝-今年の住宅・不動産市場がどうなるか、業界各社はどう動くかを探る意味で年初に業界紙各社が報じる「年頭所感」は大きなヒントを与えてくれるが、今年も不動産流通研究所の不動産ニュースサイト「R.E.port」が過不足なく伝え、他者を圧倒した。
「R.E.port」が紹介した年頭所感は5日と6日で太田国交相の1573字(400字の原稿用紙で4枚)を筆頭に42団体・会社に及んだ。ハスウメーカーはやや少なく、デベロッパーは大手が中心でややもの足りないが、不動産流通業界の団体・会社はほぼ完璧に網羅しているのではないか。
所感の中身も具体的で、各社のつばぜりあいが手に取るように伝わってくる。いくつかを紹介しよう。
東急リバブル・中島美博社長のそれは檄文だ。「不動産流通業界は今後も大きく変化していくだろう。その中で当社の取り組みとしては、新規出店を積極的に行うとともに、インナーブランディングである『スピード』『専門性』『サービス』の強化を徹底することで、他社以上の変化と成長を実現していきたい」「今のような変化の激しい時代には、常に新しいことに取り組み、イノベーションしていくことが成長の絶対条件である」と呼びかけている。
三井不動産リアルティを激しく追う住友不動産販売・田中俊和社長も「既存の直営店舗網を拡充し、当社の強みである『地域密着』を深めつつ…今年は更に発展させていきます。全役職員は『住友ブランド』にふさわしい社員としての行動を日々徹底するよう、心がけてほしい」と更なる飛躍を期した。
東京建物不動産販売・種橋牧夫社長は「顧客基盤と独自性のある機能をさらに拡充し、差別化戦略を追求する」など三本の矢を掲げ、全社一丸となるよう檄を飛ばした。
不動産流通業界のトップをひた走る三井不動産リアルティ・竹井英久社長は余裕があるのかないのか分からないが、「行く先に『生い茂っている』不動産流通の旧習や古い常識を打破し、“新しい不動産流通の創出”、“新しい会社への改革”を力強く推し進めてまいる所存です」と、意識改革・人材育成に意欲を見せた。
ここまで紹介したら、2013年から新ブランド「野村の仲介+(プラス)」を掲げ、〝ただ住まいを探すだけなら、不動産仲介なんていらない。〟などと同業他社に挑戦状を突きつけている野村不動産アーバンネットの宮島青史社長の所感がありそうなものだがそれがない。「R.E.port」は頼んだのか頼まなかったのか、野村不動産アーバンネットが拒んだのかどうか、それは謎だ。
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「R.E.port」がここまで紹介しているのに、同業他社はまったく掲載なし。週刊紙だから読者には年初に新年号が届いてはいるのだろうが、不動産は生き物。じっくり読ませる記事ももちろん必要だが、その時々の空気を伝えないといけない。ネットは最大の武器の一つだ。コピー&ペーストで済む年頭所感をいくら掲載してもコストはかからないし、一般の読者(ユーザー)をつなぐ大きな役割を担っているはずだ。
しかし、かくいう記者も紹介できたのは10社のみ。完敗だ。それでも、法人税率の引き下げや岩盤規制の突破に言及した三井不動産・菰田社長、大都市の国際的競争力を高めるのは地方創生にとっても有効と話す不動産協会・木村理事長、女性活躍(ダイバーシティ)をさらに推進するとした積水ハウス・阿部社長と野村不動産ホールディングス・中井社長など、それぞれが考えていることが少し分かった。
法人税率の引き下げで恩恵を受けるのは誰か、都市と地方の共生は可能か、女性活躍でリードするのはどこか。それぞれが今年の大きな取材テーマになりそうだ。明日は不動産協会の新年賀詞交歓会だ。菰田社長には、法人税はマンション価格に転嫁されているのか、引き下げで価格は下げられるのか是非聞いてみたい。