RBA OFFICIAL
 
2015/01/13(火) 00:00

マンション広告に絵文字はどうか 「ヤバイo(^-^)o」は効果ないか

投稿者:  牧田司

 たまたま時間があったので、住宅情報誌に掲載されているマンションのキャッチコピーを読んでみた。これがなかなか面白い。次のようなコピーが目に留まった。

 「購入者からも『デザインが素敵!』との声、多数」

 一般の方はこの文言をどう理解されるか分からないが、業界関係者なら「えっ、こんな表現許されるのか」と思うはずだ。

 不動産業界には、業界の自主規制団体「不動産公正取引協議会連合会」(不動産公取協)があり、「不動産の表示に関する公正競争規約(公取規約)」で広告に関する様々な基準・規制を設けている。とくに消費者に誤解されるような、事実と異なる表示には厳しく、同規約18条(特定用語の使用基準)では、「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」「日本一」「日本初」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」などは、根拠が示せるものを除き原則禁止されている。

 ここで一つ断っておきたい。記者などが書く記事にはこの規約はまったく適用されない。当然だ。これは憲法によって表現の自由が保障されているからだ。記者が書く記事に規約が適用されたら、ほとんど「不可」になるはずだ。最近書いた「人気必至」などは誘因行為として公取協から厳重注意を受けるはずだ。

 さて、では冒頭の「デザインが素敵!」という文言はどうか。住宅情報誌は記事の体裁を取ってはいるが、これは「記事広告」でもなくチラシ広告と同じ扱いになる。使用する文言には先の厳しい制約があるが、「素敵」そのものは禁止されていないし、発行する側も十分審査しているはずだから問題はないと判断したのだろう。

 しかし、「素敵」も「最高」も意味はほとんど同じで、記者なども連発する。感嘆符(!)も1つどころかダブル(!!)で使うときもあるし、感嘆疑問符(!?)もよく使う。「素敵」の根拠を示さないのは問題がないとはいえないが、購入者の声などをどんどん使用してもいい。手あかのついた文言より効果があるのではないか。

 それにしてもマンションの広告担当者の仕事も大変だ。使用する文言の制約を受け、かつコピーで物件の特徴を表現しなくてはならない。いくつか紹介しよう。( )内は記者のコメント。

 「堂々完成!」「特別事前案内会」(完成して残っているという意味にもとれるが、「特別」とは何か意味不明)

 「足元に緑を纏う」「静謐を纏う邸宅」「東京・城南に住まう」(よくある広告手法。この業界は「静謐」「纏う」「邸宅」「至福」「住まう」などの言葉が好きなようだ)

 「バス停まで徒歩4分」「『東京』駅20分」(松戸からバス便)「柏駅徒歩10分」(ズバリそのもの)

 「1LDK・ゆとりの44㎡台」(44㎡の1LDKが〝ゆとり〟の広さであるかどうかは異論のあるところ)

 「光と風が満ちる」「中枢を自在に使いこなす」「心に響く私邸の品格に出会える」「明るさ・楽しさ・暮らしやすさが集う街」(豊島園)「本当の豊かさと出会い、美しき家族の時をここに刻んでゆく」(これらも不動産広告ではよく使われる。イメージ戦略も重要だ。豊島園はそんなに住みよい街だったか)

 「最大520万円の価格改定!」「返済不安の方に相談会開催」(これから年度末に向かって値引き物件は増える。価格は市場が決めるもの。「返済不安のある」人に相談会とは意味が分からない。きちんと書くべき)

 広告の表現に四苦八苦するのだったら、いっそのこと絵文字はどうか。記者は絵文字をまったく理解できないが、若い人たちはみんな利用しているではないか。「素敵!」と書く代わりに「ヤバイo(^-^)o」などと書いたら、来場が殺到するのか見向きもされないのか。

 もうずいぶん昔だが、公取協は不動産広告の事例集をまとめたことがある。なかなか面白いものだった。記者が印象に残っているものでは、売れない郊外マンションは「駅まで徒歩15分、格好のジョギングコース」と謳った。貧すれば鈍するの見本のような広告だった。

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン