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2015/01/15(木) 00:00

まだ上昇するマンション単価 先行指標の住宅着工統計が裏付け

投稿者:  牧田司

 首都圏の分譲マンション単価がどんどん上昇している。不動産経済研究所の調査によると、2014年11月の1戸当り価格は5,224万円、1㎡当り単価は73.7万円(坪243万円)となり、2011年比で1戸当り価格は34.0%、1㎡当たり単価は35.7%それぞれ上昇している。

 同研究所の調査は、供給時点での調査であるから遅行指標だ。では、この先々単価はどうなるのか。業界内ではまだまだ単価は上昇するとみられているが、先行指標でもある国土交通省の住宅着工統計の工事予定額の推移を見た。

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 建築基準法15条第1項は、建築主が建築物を建築しようとする場合、建築場所、工事の予定期間、建築物の用途、建築物の使途、構造、床面積の合計、工事費予定額などを都道府県知事に届け出なければならないと定めており、数字は毎月、国土交通省の住宅着工統計で発表されている。別表は、統計数字のうち、鉄筋コンクリート造(RC)の分譲住宅(マンション)の工事予定額の推移を全国と東京都でみたものだ。マンションには鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC)もあるが、今回は除外した。

 工事予定額とは、建物の建築に要する金額のことで、既存建物の除却費、造成費などは含まれず、あくまでも建築主が届け出た金額である。

 したがって、この工事予定額はおおよその目安を示すもので、実際の建築費とは乖離がある。しかし、どれくらいの乖離があるかはゼネコンもデベロッパーも建築原価を公表しないので分からない。当然のことながら、分譲価格には建築費と土地代、デベロッパーの販管費、利益などが上乗せされる。それが分譲坪単価だ。

 とはいえ、件数が多い大都市圏などの工事予定額の推移を見れば先々分譲単価がどうなるかが読める。マンションの分譲が許可されるのは、建基法の建築確認の許可が下りてからだが、一般的には工事着手してから数か月以降と考えてよい。ここ数カ月の工事予定額は間違いなく今後分譲されるマンションの分譲単価に反映される。先行指標として参考になるはずだ。(分譲価格は市場が決めるものであるため、必ずしも原価がそのままオンされるわけでもないが)

 前置きが長くなった。さて、その工事予定額の推移。それほどマンション単価の上昇が顕著でなかった2011年、2012年あたりの1㎡当たり単価は全国平均で18万円(坪59.4万円)、東京都は21万円(坪69.3万円)だった。

 2013年になると全国で19万円(坪62.7万円)、東京都で23万円(坪75.9万円)に上昇。はっきりと上昇傾向が見て取れる。業界内で「工事費が高くなってきた」という声が聞かれたころだ。

 そして翌年の2014年になると、デベロッパーが「工事を発注しようにも高くて発注できない」と悲鳴を上げた。いつもデベロッパーに叩かれてきたゼネコンはうっ憤を晴らすかのように、利益率の高い震災復興や公共事業、ビッグプロジェクトにシフトしたからだ。

 2014年4月以降の表をみれば、デベロッパーの悲鳴が裏付けられる。毎月のように金額が上昇しており、東京都は4月に27万円(89.1万円)を記録。その後は若干下がってはいるが、2011年、2012年比で2~3割上昇している。冒頭に紹介した不動産経済研究所の上昇率のほうが高いのは、売れ行き好調を背景にしたデベロッパーの強気な値付け設定にあると見た。

 注目したいのが、11月の東京都の1戸当たり工事予定額だ。1,377万円÷25万円­­­=55.1㎡、つまり1戸当たり平均の広さは1LDKか2LDKくらいの広さしかないということだ。これはたまたまコンパクトマンションが多かったための要因なのか、それとも〝いつか来た道〟だ。昭和50年代の〝60㎡の3LDK〟に逆戻りするのか。注視する必要がある。

 問題はまだある。この先どうなるかだ。10年間で200兆円とも言われる国土強靱化基本計画、リニアにオリンピックetc.…、ゼネコンが仕事に困ることはまず考えられない。分譲マンションにも単価上げ圧力がかかるのは間違いない。

 しかし、消費者の取得能力にも限界がある。富裕層やアッパーミドル向けはまだ余力があるかもしれないが、第一次取得層はもはや限界を超えている。専有面積圧縮も打開策にならない。都内の分譲単価は軒並み坪200万円以上になる。20坪で4,000万円以上だ。神奈川県、埼玉県、千葉県の遠隔地でも坪150万円以下はあり得ないのではないか。

 20坪で3,000万円以下のマンションが姿を消すのは何とも情けない。もう国にすがるしかない。とはいえ国も病んでいる。国家予算95.9兆円のうち歳出は社会保障費が31.5兆円、国債費が23.5兆円だ。双方で5割を突破する。

 この矛盾を一挙に解決するにはハイパーインフレしかないように思えるのだが、みなさんはどう考えるか。バブルに浮かれた経験がある記者は、二度とあの狂乱とその後の悪夢を見たくない。せめてもの救いはただ同然のローン金利くらいか。

 

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