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2015/01/28(水) 00:00

戸建て、マンションの居住形態が意識を左右するか 三井ホームが調査報告会

投稿者:  牧田司

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「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」

 三井ホームの企業内研究所「住まいと暮らし研究所」は1月28日、日本女子大家政学部居住学科定行研究室教授・定行まり子氏、三井不動産レジデンシャル、三井不動産リフォームと共同で研究を行ってきた「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」を開催した。

 三井不動産グループの住宅を購入した人を対象にしたアンケートでは、「住まい」への愛着について戸建て居住者は「住空間」に、集合住宅居住者は「生活の利便性」に愛着を感じ、今後の住まいの選択意識については、戸建て居住者は多様な選択肢を持ち、集合住宅居住者は住み替え後も集合住宅を希望する傾向が強く、終の棲家のイメージでは、注文住宅、建売住宅、集合住宅居住者とも約42~48%が「夫婦二人」と答えた。

 〝夢は庭付き一戸建て〟という住宅双六については、「いまだ残っているともいえるが、意識は薄れている」としている。

 報告書は、「戸建て住宅派」「集合住宅派」ともに多様なニーズに応え、時を経ても資産価値が維持される住まいづくりと、環境づくりに業界全体で取り組む必要があるとまとめている。

 報告会で挨拶した定行氏は、「わたしどもの大学もそうですが、三井さんグループの個々のデータをつなぎあわさればビッグデータになり、いい指導ができ、政策決定がスムーズに行える。これから人口減少、空き家の増加など多くの課題を抱えているが、生きるすべである生活の基盤の住まいづくりに研究成果を生かし、次につなげていきたい」と語った。

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 なかなか興味深い報告会だった。終の棲家のイメージが「夫婦二人」というのは納得もしたが、「考え中、思いつかない」「のんびり、ゆっくり」がそれぞれ15~26%あり、「子の世話になる」は回答があったのかなかったのか、少なくとも報告はされなかったのには考えさせられた。報告を行った同社商品開発部長・吉澤敏幸氏か「これは私の考えだが、商品企画でいつも思うことだが、みんな将来のことをあまり考えない。せいぜい5年先くらい」と語ったのが印象的だった。時代は変わったということか。

 報告に対する疑問もあった。今後の住まいの選択意識についてだ。報告では、戸建て居住者は「リフォーム」(23.5%)「住み替え」(21.0%)「予定なし」(22.9%)「今は思いつかない」(27.2%)「建て替え」(5.4%)など選択肢が広く、集合住宅居住者は「住み替え」が圧倒的に多く52.0%に達し、住み替える居住形態も「分譲マンション」が81.4%と突出して高いとしている。

 つまり、居住形態によって夢が異なってくるとしているのだが、記者は居住形態ではなく、将来の住まいに夢が描けるのか描けないのか、経済・資産状況によって選択肢はおのずと限られてくる現実の反映だろうと考える。

 住宅双六も同様だ。われわれ日本人には「庭付き戸建て」の夢は心の隅にあるはずだが、少なくとも首都圏の利便性の高い地域に戸建てを取得できる層は数%しなないのではないか。都内23区ではマンションすら買えない時代になってきた。

 もう一つ。面白いと思ったのは、アンケート回答者1,474の戸建てと集合住宅(マンションが圧倒的に多いはず)の比率だ。半々であることが報告された。

 対象者は三井ホームと三井不動産レジデンシャルの顧客だが、三井ホームの顧客は約20万件であるのに対し、三井不動産レジデンシャルサービスが管理するマンションは約23万戸だ。分譲戸建ては数万戸あるはずで、マンション・分譲戸建て合計で30万戸を突破するのは間違いない(アンケート対象は首都圏で、すべてに用紙を送付したわけではないだろうが)。

 注文と分譲の比率は2:3だから、アンケートの分母もその通りになるはずなのにそうなっていない。これは記者の推測だが、注文は、建てる側にしてみれば「希望通り」の家を建て、メーカーも「建ててからお付き合いが始まる」という意識が強く、これが顧客満足につながり、回答数に反映されたのではないかと。一方の分譲は、いまは各社とも顧客とのつながりを重視しているが、これまでは「事業離れ」(死語になっていないはず)という言葉に象徴されるように、購入者とのつながりを遮断するところも少なくない(三井がそうだと言っているわけではないが)。その結果が、アンケートの数字に表れたのではないか。

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定行氏(左)と吉澤氏

 記者はこのような会見などはいつも後方の席に座る。ところが、今日の報告会は最前列しか空いておらずやむをえず定行氏と吉澤氏と向き合う形になった。吉澤氏とはこれまでもお会いしているのだが、定行氏とはどこかでお会いしたような声を聞いたような既視感にとらわれた。

 なぜだろうとずっと考え、社にもどって確認した。既視感ではなく、一度お会いしていた。つまり記者が耄碌したということだ。2011年10月に行われた「多摩ニュータウン大規模団地問題検討委員会」の会合で定行氏は感動的な講義・講演を行っている。その時の記事を紹介する。

 「『極めて意義深い』(上野委員長)『感銘を受けた。目がうろこ』(白岩委員)『他の地域との連携、広いエリアとしての多摩ニュータウンの価値を考えさせてくれた』(炭谷委員)『八王子にも500人の待機児童がいる。参考にさせていただきたい』(岡部委員)『地に足がついたプレゼン』(西浦委員)など、各委員から大喝采を浴びた」

 この大喝采を浴びた人こそ定行氏だったのだ。各委員はそんじょそこらの人ではない。一癖も二癖もありそうな経験豊富な大学の先生方ばかりだ。その時、記者はこう書いた。「もちろん記者も感動したのだが(というより記者席と各委員の席はかなり離れており、さらに記者の目が悪くなり、耳が遠くなったのか、マイクがよく聞こえず、プロジェクターもよく見えず、報告の半分は聞き取れなかったのだが)」と。

 そんなわけで、定行氏の講義は他の先生方の心を打ったのだろうが、記者はほとんど聞き取れなかったので記事には書けなかった。

やりがいのある宿題と感動的な報告 第3回多摩NT検討委(2011/10/24)

 

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