国交通省は2月26日、第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)を開き、主な論点とその検討の方向性について話し合った。あと1回くらいの会合を開き、最終的な考えが示される模様だ。
同省から示された案によると、最大の論点である「第三者管理方式」については、「随時必要に応じて、外部の専門家に管理運営の執行権限を与え、区分所有者がそれを監視するという管理方式に移行できるよう、専門家を活用した多様な管理方式の類型を用意していく必要性があるのではないか」とし、「理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型」など3つのパターンを提案している。
専門家については、「専門性のある資格、能力認証を持つ者に幅広く門戸が開かれていることが望ましいのでないか(マンション管理士や理業務主任者に加え、例えば、弁護士、司法書士、建築士、マンション管理会社OB、企業法務担当経験者など)」としている。
また、専門家や理事会の役員についての報酬についても言及しており、「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者であることから、役員がその個人的資質、能力を発揮してマンションの管理に寄与するものであれば、その点を考慮して報酬を支払うことも考えられる」として、役員や専門家に対して正当な報酬を支払ってもいいという方向性を示した。
しかし、その一方で、「役員としての不適格者の排除を確実、迅速に行なうことができるよう…役員の欠格要件の規定を設けることが適切」といった意見もあるとしている。その際の「利益相反取引」の要件などを具体的に示し、外部監査などのチェック機能が必要としている。
もう一つの論点である管理組合と自治会の関係、コミュニティ活動については、「管理費からの支出をめぐる意見の対立・内紛(合意形成阻害)や訴訟等の法的リスクを回避し、適正な管理、自治会活動を図る観点から、マンション管理と自治会活動の関係、特に自治会費の徴収方法の改善策を提示すべきではないか」とし、「標準管理規約第27条(管理費)」及び32条(業務)から、『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』という規定は削除してはどうか」としている。
さらに、「管理費の支出は、区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理という目的の範囲内で認められるという基本的な考えを示すことが適切ではないか」という声も盛り込まれている。
これに関連する声として、「会議での飲食については、議論や決議、ひいては管理の質を向上させるために必要か疑義があるものが多い(飲食が役員への対価、即ち報酬の代わりであるとしているマンションもあるが、今後報酬を払う場合も考えれば、ますます飲食の必要性は無くなってくる)」と、会議や様々なイベントでの飲食についても問題を提起している。
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第9回が行われたのが2012年8月29日だから、2年6カ月ぶりに開かれた。記者はこの日、他の取材があり会合を傍聴できなかった。どうしてこれほどの空白があったのか会合で釈明があったかどうか知らない。会合後の同省の担当者からも明快な答えは得られなかった。
記者の勝手な推測だが、検討会はコミュニティの評価、管理組合と自治会の役割などについて論議が紛糾し収拾がつかない事態となり、みんな頭を冷やそうということになったのではなかったのか。さらに言えば、検討会は空中分解し、そのままうやむやに済まされるのではないかとさえ思っていた。それほど真っ向から委員間の意見が対立していた。
それでも第10回目の会合を開くのは、お互いの主張を認め、この種の会合の答申にありがちな〝玉虫色〟の両論併記のあたりさわりのないものにまとめるためではないかと思った。
ところが、あにはからんや。甘かった。「悪法もまた法なり」だ。示された案は現行の区分所有法を楯にほとんど全てコミュニティを否定する内容となった。
過去にも書いたが、確かに区分所有法とコミュニティはなじまない。法はコミュニティなどまったく想定していない。コミュニティを多とする側は標準管理規約を唯一の拠りどころとしてきたが、やはり無理がある。理論武装が足りない。法の改正を迫るべきだった。
ここを衝かれた。しかし、それにしても法を振りかざす委員は、ようやくコミュニティや「絆」を真剣に考えるようになってきたデベロッパー、管理会社、マンション管理組合に冷水を浴びせかけるようなことをよくもやったものだ。記者はこの日2月26日は「マンションコミュニティが死んだ日」として忘れまい。マンション600万戸の居住者のみなさんも、管理組合とはそのようなものだということをしっかり認識すべきだ。
もう腹立ち紛れだ。案は役員を「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者であることから、役員がその個人的資質、能力を発揮してマンションの管理に寄与するもの」と規定している。それができないから第三者管理方式が提示されたのだ。つまり、自らの財産の管理を行う能力、資格に欠けるマンションが多いというのだ。あろうことか、会議での飲食についても疑義があるとされた。
記者もマンション居住者だし理事の経験もある。組合員も理事も役割は「ひとりがみんなのために、みんなはひとりのために」が基本だ。少ない予算で様々なイベントや会議を行い、その後の発泡酒と乾きものの慰労会に疑義を挟まれたら、それこそ「理事などやってられない」になるのではないか。
「大所高所」…結構な言葉だ。しかし、多くの組合はそれぞれの知見を持ち合い懸命に努力してマンションの価値を維持しようと頑張っている。なんだか600万戸の居住者みんなが大所高所から判断する能力、資質に欠けていると言われているようで無性に腹が立つ。役員の「欠格要件」などを提示されたら、みんな理事になることをしり込みするはずだ。どこから「欠格者」の矢が飛んでくるかわからない。
適格者になれるのは、酒も飲まないタバコも吸わない(最近のマンションは共用部分での喫煙を禁止しているものが多い)ヒットラーのような独裁者しかいないのではないか。
「検討会」はやりたがらない理事を益々難しいものにし、その仕事を専門家に独占させるような管理を目論んでいるのではないか。
議決権割合を土地持分割合ではなく、価値割合つまり眺望、日照、方角などを加味した高額住居居住者の権利を土地持分割合に付加してはどうかという暴論も出るくらいだから、不公平を増大させ、格差社会をより進めようとしているとも受け取れる。
迷走する「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(2012/8/29)