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2015/03/01(日) 00:00

初の防災訓練に350人 習志野市の「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合

投稿者:  牧田司

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防災訓練

 千葉県習志野市の大規模マンション「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合は3月1日、竣工・入居開始後初めての防災訓練を事業主の三菱地所レジデンスと管理会社の三菱地所コミュニティのサポートを得て行なった。同マンションは三菱地所レジデンスが売主の2013年6月に竣工した総戸数721戸の規模。この日はかなりの雨が降り寒かったが、午前、午後の部をあわせて約160世帯350人が参加した。

 訓練開始は9時30分(午後の部は1時)。「震度6弱の地震が発生しました。ガラスやタイルなどが落下する恐れがあり危険ですので、慌ててマンションの外へ逃げないでください。カフェラウンジに災害本部が設置されました。これより安否確認を実施いたします。各住戸の玄関扉に『安否確認シート』を貼り、自宅で待機してください」のアナウンスが各住戸と敷地内共用部分に流れた。

 管理組合オリジナルの「防災計画書」に基づき、A~D棟それぞれ5名の理事と三菱地所コミュニティの担当者が階別の安否確認シートに確認した後、参加者は1階に集合。市消防署から消火栓の使い方やマンホールトイレの設置方法を学んだほか、「被災生活ワークショップ」、「防災セミナー」などを行なった。

 防災担当の理事、安部修氏(40)は「購入したのは震災後で、耐震性や災害時の対応が問題になっていたとき。理事になって2年目だが、自分たちでつくった防災計画書を実際に動かしてみようと行なった。問題なくこなせた。すごく勉強になった」と話し、同じ防災担当の吉野修史氏(35)は、「わたしも初めてのマンション居住。仕事以外で幅広い年齢層の方々と話す機会が増えておもしろい」と理事会活動について語った。

 訓練に参加した長崎守男氏(67)は、「これまで約35年間、分譲と賃貸を合わせ2,000世帯もある大規模なマンションに済んでおり、理事長も自治会長も経験している。震災で液状化も経験した。管理組合は個人情報の問題もあり災害時には活動に限界がある。自治会では高齢者などがどこに住んでいるのか把握しているので、大きな力になる」と話した。

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消火訓練

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安部氏(左)と吉野氏

◇      ◆   ◇

 先週末、国交省の第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が、マンション標準管理規約のコミュニティ条項を削除する方向を打ち出した直後のマンション防災訓練の取材だったので、とても興味があった。

  ここでは、いったいどこまでが管理組合の活動か自主的な住民の活動かは問わないし、線引きなどできないはずだ。生きるか死ぬかの災害時に法がどうとかなど言っていられない。家族の安否確認ができたら、ほとんど全ての人は隣近所の住民のことを考えるはずだし、近所づきあいがなければ隣のドアを叩くことすらためらうのではないか。

  ところが、「検討会」は任意団体の自治会活動は区分所有法上問題があるとして、明確に区分すべきという方向性を示した。この見解に疑義を挟まざるを得ない。別掲の記事も是非読んでいただきたい。以下に再度問題点を指摘したい。

 「検討会」に聞きたいことがいくつかある。

 まず、どうして2年6カ月間の空白があるのか。国交省の事情か委員の事情か、これははっきりさせなければならない。後回しにしていい課題ではなかったはずだ。

 もう一つ。当初、検討会の委員は6名だった。ところが途中から1人減った。第10回の会合では5人になっているから、補充はされていないはずだ。どうして1人減ったのか、議事録にはその記載はない。

 委員の増減決定は誰の権限でできるのか。欠格条件はあるのかないのか。検討会の規約第3条(委員等の任命)には「検討会の委員は、学識経験のある者のうちから、国土交通大臣が任命する」とあるから権限は国交省にあるようだが、その委員はどうして委員でなくなったのか、委員が一人減ったことは答申に影響を与えたのかどうか聞きたい。

 さらにもう一つ。10回目の会合では「第三者管理方式」という文言は出ていない。最初の会合で「第三者管理という言葉は、管理組合と管理会社と結びつくイメージが強い。名称を変えたほうがいい」という意見が出されたが、この声の影響はあるのかどうか。

 さて、これからが本題。最終的な答申がどうなるか分からないが、少なくとも標準管理規約から「コミュニティ条項」は削除される方向が示され、第三者管理方式に大きく道を開くことになるのは確実のようだ。

 旗幟を鮮明にしておく。記者は管理組合の財産管理とコミュニティは車の両輪と考えている。いずれかが機能しないと健全なマンション管理運営はできないと思っている。機能不全を起こしているマンションに対しては、救いの手を差し伸べるべきだが、他方で、コミュニティ活動を萎縮させるような今回の案には承服しかねる。

 そこで、考えたい。第三者管理方式を導入することでだれが得をするのか損をするのか、コミュニティ活動をけん制することがどのような影響を及ぼすかについてだ。思いつくままに書く。

 手間も暇もかかるのにお金にならないコミュニティ形成に専門家は関わろうとはしないしできない。専門家に出来るのは法の定めに従い粛々と事務的にことを進めることだ。

 報酬がどうなるか分からないが、常識的には月額5万円から10万円くらいではないか。これなら10件くらい受託できれば専門家としてのプライドを満たし生活もできてゆくだろう。

 そうなれば、〝俺がやりたい〟と組合員である入居者が管理者として名乗りでるかもしれないが、仮にその人が専門家の資格を持っていても、「利益相反」「欠格要因」に該当する可能性が大きい。よってそれは不可だろう。

 管理会社はどうか。これも「利益相反」が大きな壁になりそうだ。検討会委員の中には、管理会社をプリンターとトナーの関係と同じ(つまり、プリンターのリース料を安くして、トナーなどの維持管理費で儲けるというたとえ)と語ったほどだ。検討会は管理会社が管理人になることに足かせをはめるだろうし、管理会社も受けたがらない。痛くない腹を探られるのが怖いからだ。

 となると、第三者管理方式の採用で儲けるのは自ずと限られてくる。問題は、管理組合が報酬を払えるかどうかだ。富裕層向けや投資向けにはピッタリかもしれない。自分が理事になることもないし、財産をきちんと管理してくれればそれ相応の報酬を支払うことに何のためらいもないはずだ。

 検討会の委員の方へ。今回、コミュニティ条項を削除する方向を打ち出したことの意味を皆さんはよく考えたのか。

 分からないでもない。記者は組合員として理事として20数年間マンション管理に関わってきたが、いつも考えるのは「これは本来の法に基づく活動かどうか」「コミュニティ活動は法の趣旨に逸脱した活動だ。もし事故が起きたら誰が責任を取るのか」-これは多くの居住者が考えていることだ。この悩ましい問題に皆さんは正面から受け止めず、結局〝悪法も法なり〟と法を最優先した。しかし、皆さんの役割はあれやこれや評論することではないはずだ。財産管理とコミュニティをどう両立させるか、その隘路を解き明かし、解決策を提示することにあるのではなかったか。

 今からでも遅くない。考え直していただきたい。生きるか死ぬかの緊急時、専門家はほとんど役に立たないと断言できる。この日、三菱地所レジデンスからは約35人、三菱地所コミュニティからは約25人、合計約60人が応援のために駆けつけた。どこのデベロッパーも管理会社もコミュニティこそが非常時に大きな力を発揮することが分かっているからこそ必死で取り組んでいる。

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安否確認シール(左)と全世帯に配布されている防災リュックとその中身

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「被災生活ワークショップ」(トイレの問題は軽視できないこと、個人情報保護が非常時には師匠になることなどが話しあわれた)

標準規約からマンションコミュニティ条項が消える?第10回「管理ルール検討会」(2015/2/27)

 

 

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